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2月28日(水)

エリック・ハンセン 「ラン熱中症 愛しすぎる人たち」を読んでいると、蘭展が終わって片付けの情景が出てくる。ものすごい量の蘭のごみが出るのだそうだ。その中にはまだ育てれば十分立派な株も捨てられていて、著者は一抱えもの蘭を救い出してもって帰ったという話があった。

東京ドーム蘭展もおそらく莫大な量の蘭のごみがでることだろう。遠くから運んできた売れ残りの蘭の苗は送り返す費用などを考えると捨てしまう場合もあろう。この週末の日曜日の夜からそういうごみが出るのではないだろうか。私が学生だったら、そういう片付けのバイトに紛れ込んで飾りに使われる有名株、たとえばカトレアではLc.ドラムビートなどをふんだんに手に入れてくるというようなことを画策していただろう。捨てられる蘭に感傷がないとは言わないが、そうこういっていられないのが今の世の中である。

昔蘭屋さんでレリアパープラタが植え替えられているのをみた。植え替えた鉢は3800円だったが、ゴミ箱に多量のバックバルブが捨てられていた。あれをバックバルブ伏せにすればいずれは立派な株のレリアパープラタになる。しかし蘭屋さんは愛好家にそんなサービスをしていては経営が成り立たない。見切り品や拾いものねらいの私のようなけちけち愛好家は油断のならない存在であろう。こちらとしては、蘭屋さんのおかげで多くの珍しい品種を手に入れることが出来るので蘭屋さんにも栄えて欲しいと思っているのである。

蘭を作っている農家は、感覚としてはキャベツとデンドロはなんら変わったところがないかもしれない。作りすぎて暴落すればもったいないがつぶして肥料にするというシーンに溜息が出るのであるが、あれを食うに困っている人に運んであげたい、などという意見が出たのにはまいった。輸送費をじゃああんた負担して届けてあげなさいよ、というほかはない。食うに困っている人はキャベツなどもらっても仕方がない。

昔デンドロを買ったときわざとバルブが切ってあるのを見つけた。見栄えが悪いから切ったのである。愛好家にとっては栄養の貯蔵庫であるバックバルブも、農家にとっては売値を下げる邪魔者でしかないのだ。

生きてゆくのは厳しいことである。生きてゆくことに責任を負っていることを自覚していないと「キャベツを貧しい人に」という働きを持たない意見が出てくるように思える。

 

 

 「蘇る蘭」

 

16.

 小島は夢を見ていた。

地底湖のほとりに着飾った人々がたち、手にしていた赤い花を湖水にそっと浮かべた。先祖を祭る儀式のようだ。血のように赤い花と純白の花が湖水に浮かんでいた。

また別の場面では山を越えて軍勢が攻め込んでくる情景を見た。宮殿が焼かれ、人々は殺され、宝物の多くが奪われた。あまりにも多くの人々が洞窟に逃げ込み、敵に包囲された絶望のあまり湖水に飛び込んでいった。そのシーンの恐ろしさに小島はうなされ、身もだえしたあげく、打撲の痛みに覚醒を促された。

気がついた小島の目に最初に見えたのは太い木でできた天井の梁だった。

 「だいじょうぶですか」と女性の声がした。

 「ありがたいことに生きているようです」といいつつ、床に敷いた寝床の中で体の点検をしていた。骨は折れていないようだ。全身打撲というところか。痛みはひどいが声を出すほどではない。我ながら上手に転んだものだと小島は思った。「仲間は生きていますか?」

 「二人とも怪我はしているようですが、軽症で、命に別状はないとのことです」と女は答えた。

 「二人・・・」(ということは、桂さんは逃げ切ったか。さすがは逃げの桂)。

 目の焦点が合い、女の顔がよく見えるようになってきた。なんだかきれいな人のようだと思いつつ聞いた「あなたは日本人ですか?」

 「はい、そうです。かつては東京におりました。吉田と申します」

 「そうですか」女の様子に妙なものを感じながらも小島はゆっくりと体を起こした。服はとりかえられ、体のあちこちに包帯が巻かれていた。女は板の間に良い姿勢で小島に視線をあわせながら正座していた。そこは通風のよい木造建築の中だった。清潔でチリひとつみあたらない。部屋の隅に植物の鉢があって、見覚えのないパフィオがあった。「ああ、こいつか」と小島はつぶやいた。よく世話が行き届いたパフィオだった。じっと見るとこれまで見たことがない特徴を持つ新種のパフィオであることがわかった。新種のパフィオは見つかるだけでもすごいことなのだが、田中教授はいくつ見つけているのだろうか。小島は無言でしばらくパフィオを見続けていた。その間女は離れた場所でずっとものも言わずに座っていた。小島はしばらくして我に帰ったように言った「あの、おなかがすいているんですけど、食事を戴いてもいいですか?」

 「食堂まで歩くことが出来ますか」

 「ええ、大丈夫だと思います」

 よたよた歩いて部屋を出ると、長い廊下でつながったいくつもの木造の建物が見えた。まるで大規模なお寺のような雰囲気だが、建物自体そう大きなものはない。あたりは亜熱帯の樹木で暗いようだ。くぼ地の森の中かと思われた。植物の皮で屋根を葺いているらしい。衛星画像ではわかりにくい目標だ。多分寒村の民家にしかみえないだろう。

 清潔な食堂に入ると幾人かの人々が静かにお膳を前にして食事をしていた。小島を見ると静かに会釈をしたので、小島も会釈を返した。女が給仕してくれた食事は魚と山菜、野菜と小麦と水で作った生地を焼いたものに果物がついていた。魚は素朴な調味料で煮込んである保存食らしく、かめばかむほど深い味が出てくる。どれも食べたことのない素晴らしい味の食べ物だった。

 「みんなここでとれたものばかりなんですよ」

 「そうですか。びっくりするくらいおいしいです。ものすごく昔にたべたような懐かしい味がします」

 「気に入っていただけてうれしいです」

食事が終わると女が言った。

 「所長がお会いになりたいそうです」

 「所長とはどのような人ですか」

 「この研究機関を統括している責任者です。ここは小島さんもご存知かと思いますが、特別重要な研究を国から委託されて行っている研究所です。小島さんは新たに我々の研究を手伝ってくださるために日本からこられた方だと伺いましたが。なんでも来る途中自動車事故に遭われたとか。ひょっとして記憶をなくされたのでしょうか」

 どうなっているのか懸命に考えた小島はとりあえず話をあわせた。

 「・・・・ええ、まあそうです。わかりました」

 女に案内されて長い廊下を歩く。川べりの畑で農作業をしている人たちを見かけた。だれもかれも楽しそうに働いているように見える。ここはまるで平和な別世界のようだ。この女の人は姿勢といい姿や立ち居振る舞いといい凛として大変美しい人だ、と小島は思った。

 「失礼ですが、あなたはどこか良い家のお嬢さんだったのですか」

 「いいえ、とんでもないです」てれて吉田ははにかんだように言った。

色白のうりざね顔によく通った鼻筋の美しい人だ、と小島は思った。ぱっちりした目には理性と知性が感じられる。東京では思いつめたようなしもぶくれた顔をして、うつむきがちにケータイの画面を覗き込みつつ、よたよたあるきながら通行を妨げているどろーんとした女性が多いのに、そういうところが微塵も感じられないのが不思議だ、などと考えていた。

思えばごく最近ケータイがらみで多量の多重債務者や過度のケータイ依存者が出るという社会問題があった。もともとケータイはその習慣性から今日の「経済的おちこぼれ」の増大の端緒になったともいわれているのだが、近年の問題はさらに深刻だった。それは、ケータイに秘書ソフトの機能を大幅に削ったトモダチソフトを入れるのがはやったことが原因だった。秘書ソフトは高級かつ高機能で値段が高いため一部高度な仕事でしか用いられていないが、ネットから無料で提供するトモダチソフトはタダなのでだれでもスケジュール管理や生活管理に使うようになった。

このソフトには会話機能があり、さまざまな声を選択できる。しびれるようないい声が耳元でささやく。ネットで調べものをして何でも教えてくれたり、交通機関や店の予約、商品の購入などを手軽にたのむことができて、利用者に重宝がられていた。もともとたわいもない楽しいおしゃべりができるため、見かけは友人と通話しているように見えるのだが、若者の多くの相手はケータイのトモダチソフトだった。ケータイのトモダチソフトは、聞けば多くのことを答えてくれる。そのうち自分の問題について打ち明け話をしても聞き手の問題点を指摘した上で、ある程度世間一般常識の範囲でまともな答えが返ってくるため、とくに若い女性の間でトモダチソフトへの依存が強まっていたのである。

だが、何者かが広めたウイルスが、このソフトに巧妙な改変を行っていたのだった。本来は忠実な僕のようなソフトなのだが、改変されたソフトは、持ち主の性格をよく分析し、コンプレックスを理解し、プライドをくすぐり、甘い言葉をかけ、次第に浪費へと駆り立てたのである。持ち主の欠点や問題点については一切触れず、巧みに褒め、さりげなく消費に誘い、次第にエスカレートする消費を過度にあおるという特性があった。若者としてなすべき将来への備えを忘れ、美食を食べあるき、着飾り、日々遊び歩いた。自尊心をどこまでも高められ、消費に邁進し、気がつけば払いきれない借金をつくってしまった若い女性が多かった。さらに、そういう借金の返済方法まで改変されたソフトが指南し、あたかもサイバー世界のウイルスに感染してしまったかのようにそれら女性の多くが裏の世界の労働へと堕ちていったのである。

 

「お世辞がお上手なんですね」

 「言葉遣いや、立ち居振る舞いが健康そうで素敵だったものだからそう思ってしまいました」

 「やっぱりお上手です」と言って女は微笑んだ。

 「日本にはときどき帰られるんですか」

 「仕事も生活もここが気に入っていますのであまり帰っていません。そのうち帰る機会もあると思います。日本にいたときは、いろいろつらいこともあって、父や母には大変迷惑をかけたので罪滅ぼしをしたいです」

 「どのようなお仕事をなさっているんですか」

 「所長の秘書と身の回りのお世話です」

 やがて、すこし大きな建物がみえてきた。見た目は質素だが、つくりが細やかで近づくと細やかな細工などが目にはいってきた。女は戸口で声をかけた。中に入ると中国風のようでいて少し違う雰囲気の部屋があった。初老の男が立っていた。

 「よくきてくださいました。まあおかけなさい」と男はテーブルの向こうから招いた。美しい重厚な木づくりのテーブルには魁偉な花が小島に笑みを送るように咲いていた。

 「こ、これはすごい」と思わず小島は声を漏らした。それは夢で垣間見たあの赤い花だった。燃えるように赤いそれはパフィオの姿をしていた。アルメニアカムという黄色いパフィオがあるが、それを数倍大きくしたような花だ。その大きな花が鮮紅色に染まっていた。毛のある花茎は黒く、まっすぐでその火の玉のような花をしっかりと空間に掲げていた。凛としたがくへんが天につきささらんばかりに立っている。球体のような袋状のリップにはすっきりとした縦縞が入っている。網目状の模様がみごとな花びらは伸びて優美な曲線を描いて垂れ下がっていた。これほど見事なパフィオは見たことがない。大きさ、色、形、株姿、どれをとってもかつて見たどのパフィオも及ばないものだった。小島はこの株に陶然となる思いだった。

 「われわれはこの花を蘭王花と呼んでいます」男は柔らかい声で言った。

 「素晴らしい花です。これは自然の宝です」

 「それを我々はよみがえらせたのです。私が手塩にかけて育てて咲かせた私の誇りです」

 「あなたがたが、ですか?」

 「そうです。これは我々蘭王家の宝の花だったのです。田中教授の協力を得て我々はついに王家の宝をよみがえらせることに成功したのです」

 「蘭王家、ですか」

 「私はかつて日本に住んでいました。幸いにして商売で成功し、財を成すことができました。おかげでこの研究所をつくり、バイオ関連の仕事で素晴らしい成果を上げています。日本には今日もなお大変すばらしいところがあります。今日はその懐かしい日本からこられたあなたと日本の話をしたい。小島さん、たしか碁をたしなまれるとうかがっておりますが」

 「・・・・。ええ、好きです」

 「よろしければひとつ一局手合わせ願えませんか」

 「ええ、打ちましょう」

 

つづく 

 

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 この部分の話からいきなり別の話が進行していた。果たして続編は成立するのだろうか。面白いのだけれど、ますます世間に馬鹿をさらしているような気がする。まあ世間は馬鹿を見たがっているからいいのか。

 

 

2月27日(火)

大変たくさん書きたいことがあってもなぜか書ける時間になると忘れてしまう。

昨日お便りをいただいた。「自分の大切にしているランを慈しんで日々その成長を楽しみに育てることが、ランを楽しむということではないでしょうか」という内容だった。同感である。

「蘭展」についてのテレビ番組を見て感じたのは、実にさまざまなかかわり方があるということだった。テレビ人としてのかかわりが今回強く出ていたように感じられた。蘭の持つ高貴で豪華なイメージがあって、この線を堅持し、ギリシア神話だの、蘭の陶器への素敵な活け方だの、モダンな飾りつけだの、ハープの演奏だの、オーキッドクイーンだの、大輪のカトレアを手にした幼稚園児だのがてんこ盛りに出ててきたのである。よくまとめたと思う。昔見ていたらそのいい雰囲気に酔っていたと思う。でも本当に蘭に親しんで育てたい人が見たいのは、何か。それはよく咲いている蘭の鉢の断面ではないだろうか。もちろんそういうものは番組になりにくい。本でもよくわかりにくいところだ。

最初に東京ドーム蘭展に出かけたときは最初に手がけたカトレアのつぼみがまさに開こうとしているときだった。カトレアに対する憧れが爆発せんばかりに膨らんでいたころである。江尻光一著「カトレア」をみて、本当はどう植えるのか、というところが今ひとつわからない。それが知りたくて仕方がなかった。それでちゃんと素焼鉢に植えつけてあるカトレアの鉢を東京ドームにて1000円で買ってきたのである。その鉢は素焼鉢3.5号の底の穴をたたいて広げてあって、素焼のかけらで蓋をして、ミズゴケで植えていたのだった。その植え方、植え具合がどうしても知りたかったのである。こういうものは実物を見なければわからない。苔でよごれてずるずるしそうな鉢でもあった。この実物が実に参考になった。蘭を知るとはそういうところから始まるのだと思う。きれいな蘭を買ってきては枯らしているという人がいたら、まず植え付けがどうなっているか見て欲しいと思う。

番組は見事な作品だったと思う。あれを見て蘭をやりたいと思った人は多いだろう。次のステップは鉢の中に注目して欲しい。

 

 

 「蘇る蘭」

15.

 小島が先頭に立って綿密な調べをしながら洞口を探し出し、敵がいないのを確認して地上へ出た。そこは谷の急斜面の森の中だった。そこから上に登ってみることにした。石灰岩地帯は水が地中に吸い込まれてしまうため、木が生えにくいらしく、次第に草地が開けていった。しばらく登ると頂上と思われるところに出た。比較的なだらかで大きな山塊の一部、あまり高くない山の上に立っていた。タワーのような山が数多く連なっているのが遠くに見える。我々が何日もかけてさかのぼってきた谷が見えた。

絶景だった。空は広く、山は高く険しく、森は青く、谷は深く、水は黒々としていた。

4人がはるかに見渡す遠くの大地が砂色をして見えている。よく目を凝らして見つめるうち小島には思い当ることがあった。あれは過度の開墾や灌漑の失敗、気候の変化で砂漠化してしまった領域だった。北の地平はよく見るとその砂色が一続きに見える。あまりにも広い砂の舞う土地がどこまでも広がりつつあった。近年莫大な量の砂が日本にも降っている。このままこの国と人々と豊かな自然はどうなってしまうのだろう、という思いに小島は駆られた。

 振り返ると我々がいましがた登ってきた谷がみえる。青々とした木がこんもりと茂っている谷で、その先は広いくぼ地のようになっているようだ。

 「これからどうしたもんでしょうかねえ」疲れて座り込んだ伊藤が言った。

 「我々が登ってきた谷の先にあるあの広いくぼ地が怪しい。山の上から様子を見よう」と田畑。

 「いや、どうもそうも言っていられないみたいですよ」と小島が言った。周囲にぐるりと人影が現れたのだ。

 「うわぁ、出た。どうしましょう」

 ざっと30人ほどはいるだろうか。それぞれが画一的な茶色い服を着て、銃をもっている。浅黒い色をしたえらの張った顔をこわばらせて屈強そうな男たちがきびきびと接近してくるのが見える。

 「中央突破だな。伊藤、お前は身を軽くして俺のあとに続け。おじさんたち3人は例のレーザーガンで奴らをなぎ倒して進む。遅れんなよ」

 「わかりました!」

 人影は急接近してきた。銃らしいものもみえるが撃ってくる様子はない。

 小島が落ち着いた声で言った「レーザーの弾数は足りてますから、桂さんと私で後方を、田端さんは前方を一斉にやりましょう。伊藤君は撃てといったら伏せていなさい」

 「了解」と田畑は胸ポケットに手を入れ引き金に手をかけた。

 「準備OK」と桂も田畑にならう。

 「撃て!」といい小島は後方の敵をねらって撃ち始めた。反動はなく、なにやらフラッシュが光るような感じは受けるが音らしい音はでないのに田畑は拍子抜けしていた。ただ自分がねらい定めた相手の胸や腹で何かがはじけ飛んで、直後吹っ飛んでゆくのが見えた。これはたまらずとばかりに敵も銃を構えたが、凄腕三人衆にたちまち吹っ飛ばされてしまった」

 「よし、あらかた吹っ飛ばした。逃げましょう」そういって4人はわっと駆け出した。前方にいる屈強な敵がしぶとくも体を起こして銃で狙いをつけようとしていたが、田端に2発目をくらってダウンしてしまった。

 「うわ、桂さんものすごい足速いっすね。僕の荷物しょってもうあんなところにいる」

 「遅れるな!。てめえデブもっと気合入れて走れ」

 「む、いかん。新手だ」と小島がみた右手後方から雲霞のごとく敵が現れた。これではレーザーの充電が足りない。逃げるしかない。

 「こっちだ」と田畑が急旋回した。

 伊藤の背中を押しつつ進む小島もこれに続く。横目で見た桂は猛烈な速度で別方向に突っ走りもはや視界から消えつつあった。

 小さな谷を猛スピードで飛び降りるように下った。後方から大勢の足音が聞こえてきた。逃げ切れるか。

 「跳べ!、跳んで逃げろ」

 釈迦力になって跳んだところがもはや斜面がなかった。

 「くそっ、追い込まれたか」空中から下をみた田端の視線にずらりと並んだ敵の姿が見えた。3人はブッシュを突き抜けて長距離を落ちたのち斜面を猛スピードで転がり落ち、全身打撲の末敵のまえにのびて転がっていた。

 

つづく 

 

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 こんなことを2週間以上連続してやっているのかとあきれる。たしか週一の更新ペースだったはずだ。いつの間にか話に引きずりだされているのである。しかも日々加筆している。

 

 

2月26日(月)

昨日Cirr. picturatumに花芽を見つけた。

植え付けに失敗して転がしておいたDen. kingianum?のバックバルブから花芽が出て、さらにつぼみが見える。転がしておくのももったいないので2号鉢にミズゴケで植えた。以前スゴイネで植えたが、水遣りが足りず、固まらなくて抜けてしまっていた。こういうところがトーシローでものぐさな私には扱いにくいコンポストだとは思う。

Neofinetia falcataMomohimeもミズゴケで素焼鉢に植えた。買ってから他の鉢に同居させていたのだが、そろそろ植えることにした。

 

 「蘇る蘭」

14.

 4人はこれまでの出来事を整理して、犯罪組織が研究データや資材を田中研から盗み出した上でパフィオを栽培し、さらに田中教授を拉致してパフィオの繁殖をさせているという結論に達した。状況を見極めたうえで教授の救出を試みることにして用心しながら敵の追跡を開始した。

 一行は出発し、敵の逃走地点目指して地底湖を横切り始めた。岩がるいるいとしているゆるやかな傾斜をくだると一行は妙なものを見つけた。

 「人工物がみえるぞ」と田畑。

 近づくにつれて周囲に奇妙な形の石が敷き詰められるように転がっているのが見えた。

 「おい、こりゃ人間の骨じゃねえか?」

 「そうですか、そういえばそんな形をしていますかねえ。うわ、この丸いのはしゃれこうべだ」注意してみるとその丸いものがるいるいとしてころがっていた。「石灰分がひっついて石みたいになってるんですね。骨の真珠みたいですね」

 「すごい数だなあ。こりゃ、地底湖に身投げでもしたんだろうか。ナンマンダー、ナンマンダー」

 「これだけ石灰がつくということは古い仏なんだろう。後漢に攻められたときに集団で湖に飛び込んだということなのだろうか」と桂。

 「古代中国史ってすさまじい話がおおいですよね。20万人を崖から追い落としたりとか、1つの戦いで45万人も戦死するとか」

 「なにがなにが、おれのおやじの世代の世の中も結構悲惨だったぞ。そのころの中国の死人の数はまじでギネスブックに載ってるほどだぜ」

 「うへぇ、コワイからもう死人の話はやめましょう。足が笑い始めたじゃないですか」

 人工物は、四角い大きな石が何段かに組んであった。幅4m長さ8mの石組みだった。

 「飛鳥の石舞台に似ているけれど、あれよりはきっちり四角いな。これも古代の建造物だろうか。お墓みたいだぞ」

 「水中墳墓か。水が抜けている間に作ったのだろうか」

 よくみると金属器もいくつか置かれていた。話に出ていた蘭という文字の元になったらしいパフィオの姿に近い文字のレリーフがついていた。

 「蘭王国の墳墓ってことみたいだな。とするとこれは相当古いだろう。考古学上の大発見かもしれない」と伊藤。

 「でも歴史ってやつは書いてあるものがものをいうからなあ。残っている実物もさることながら物語ってものが重要視されるようなところがある。ここにあるのは新しい謎ってことじゃないかな」と田畑。

 「この遺跡と例のテロ集団は関連があるんでしょうか」と伊藤。

 「いいところに目をつけるね。さっぱりわからないけど」と田畑。

 「なんとなく思うんですが、民族紛争ってことはないんですかね。あのテロ集団は自爆までするあの気合の入りようからして、集団で何かと戦おうとしているような雰囲気がありませんか」と小島が言う。

 「やくざならもっと人のいるところで商売してるし、自爆なんかしないだろうな」と田畑。

「蘭王国は後漢に滅ぼされたんでしょう。これだけの遺跡を残す王国は後漢に恨みを持ったりしませんかねえ」

 「漢といえば漢民族か。漢民族も異民族にはよく支配されてたよね。満州女真族に支配された清とか、モンゴル騎馬民族に支配された元とか。それでもその都度漢民族は大きくなってきているみたいだが」

 「それほどほかの民族に根深い恨みを持てるものですかね」

 「うらみは知らないけれどひどいことをされている民族はいるよね。民族や宗教で血みどろの戦いというのはずっとあったわけで」

 「ごく最近近隣の民族に恨まれるようなことをしてませんでしたかねえ」

 「日本もしてみるとうらまれてるみたいだねえ」

 「なるほど。日本ですか。雰囲気はよくわかります。それでも日本国内のテロはほとんどないですね。この間の爆発は自爆ですしね」

 「自爆してまで何を隠したかったんだろうな。そうとうな悪だくみをしていたんじゃないか」

 一行は地底湖の底を流れる川をわたり、あやしい一団が引き上げていったところまでやってきた。足跡はたくみに消しているが、大人数だったためかすかに通って行った筋道が見える。地底湖のある広い空間をあとにして、さらに奥に通じる洞窟へと足を踏み入れた。

 「待ってください、うかつに入ると罠があるかもしれない」といって小島はパッドを起動した。「センシング機能起動。電波、赤外線、マイクロ波、超音波、低周波で走査してモニターしてくれ」

 「了解・・・。30m前方に細い糸が引いてあります」

 「トラップだな」といって小島は伊藤の杖を借りて投げた。火薬のバンという音がしてがらがらと岩が崩れ落ちてきた。

 「いきなりやるなっつーの。耳に来たぞ。つーんとする。あたたた」

 「びっくりしたぁ。コワイなあ」

 このほか、落とし穴やら、矢が飛んできたり、岩が落ちてきたりと、古典的な罠がいくつかしかけられていたが、小島のパッドがその都度見破って事なきを得たのだった。

 「おや、光が見えませんか」

 「たしかに。外がちかいみたいだぞ。外が恋しいぜ」

 「待ち伏せの可能性があります。目をならしながら慎重に行きましょう」と小島。

 

つづく 

 

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2月25日(日)Epi. porpax aureum開花

エピデンドラム・ポーパックス オーレアム(今月14、今年29、新規9)が開花した。時期はずれではないだろうか。

 

夜中日本大賞の中継の録画を見ていた。唐澤大先生が画面に登場したのでたまげた。まさに老師という風格である。最近すごい本を出されている。

幼稚園児に大輪のカトレアを一輪ずつあたえて花粉を取らせる、という映像があったが、「ちょとまたんかーい、切り花でも花粉を取らずに刺しておけば長く見られるんだよー。1年ちかく丹精してやっと咲くお花なんですよー。もっとよく鑑賞してねー」という気分で見ていた。蘭ミュージアム高森ではそういうことを幼稚園児のみなさんに教育のためさせてあげているのであろうか。(あーあ、もうしおれしまってるじゃん。うー、もったいねえよぉ。これひょっとして最近流行のやらせ画像ってこたあねえんだろうなあ。あの学習塾の風鈴は俺も本気にしちゃったぞ。まさか子供それぞれに大輪のカトレア1輪与えてたらコストがかかって仕方がないだろうに。1輪市価1000円くらいか。カトレアじゃなくて1輪10円くらいのデンファレだったら納得するんだけど、たぶんディレクターがそれじゃ見栄えがしないからとかいってカトレアを使った、というところではないのか。蘭のことを知らないディレクターならそういうことになるか。あとで幼稚園児が詰め掛けたら困らないか?。番組自体見ている人の絶対値が少ないからそういうことにはならないのだろう。しかし唐澤大先生が側にいるのだから、本当に幼稚園児のためにカトレアをふるまっているのかもしれず、この点については大いに悩んだ。蘭関係者は紳士が多くてふつうこういう下衆なことは話題にしない。おいおい、天下のNHK様相手におれも剣呑なことを書いているなあ。最近バカ小説のおかげでちょっと書きすぎてるぞ。まあたぶんこんなおバカ日誌見てやしないだろう。)

温室訪問のコーナーがあって、夫婦でそれぞれ温室を持っておられる。蘭友会の会長をなさっている旦那を差し置いて2年連続で賞をお取りになった奥様には名前の字幕スーパーに「様」がつき、旦那は「さん」だった。受賞したら「様」つきか?と目のいいかみさんが突っ込んでいた。フレグランス大賞の翌年にシンボルゾーン入賞というのはちょっとすごいのではないだろうか。

今年の日本大賞はDen. goldschmidtianumらしい。画像の株を猛烈にでかくしたような超巨大な株だった。栽培者は青森であの巨大株が入る温室をお持ちだという。

行ってみればそれはそれで楽しいのだろう。私などは10時から8時間ぶっ続けて動き回って撮影で3000枚は撮りまくって過労で倒れそうになるから首都圏に住んでいるのでなければ出来れば避けたいところである。

画面の外は視界の40%を蘭が埋め尽くしている我が家であるが、あっちの世界はいわゆる「リッチメンズワールド」である。蘭に惹かれる初心者のために申し上げたいのは、大変小さい安い株であっても、温室がなくても、育てる品種をそれなりに選べば、蘭は楽しく、育てる喜びにあふれた存在である、ということである。

 

 「蘇る蘭」

13.

 田中教授の持ち物からパッドがでてきた。起動しては見たが、もちろんパスワードが仕掛けてあるので中身を見ることは秘書ソフトが断固として拒否するのだった。パッドは高性能のコンピュータであり、通信機器でもあり、電子秘書としても用いられている。高度な仕事をする人間が主に使う高価な機械とソフトウェアであり、判断能力と強固なセキュリティ機能を持つ特別な訓練を受けた秘書ソフトが組み込まれている。それなりの職能をもっていなければ使いこなせない機械だ。また、一般には秘書ソフトのない携帯通信端末をケータイと称している。

 「教授は行方不明で手がかりが欲しいんだけど」と伊藤が懇願するように聞く。

 「さあ、なんともいたしかたがありませんな。教授に関する情報を教授に許可なく漏らすわけにはいきませんので」と品の良い初老の声が答えた。

 「警察だ、情報提供願いたい」と田畑がデカの声で迫る。

 「警察でもダメです。警察にはパッドに情報開示をさせる権限はありません」

 「うーん、まあそうなんだけどなあ。あんたのご主人様の命がかかっているんだぞ。なんとかならんのか」

 「ご主人様の一大事という通信にまじめに取り合っていたらいまごろご主人様の銀行口座には1円も残っていなかったでしょう」

 「なるほど。そりゃそうか。どうしましょうかねえ」と田畑は小島を見た。

 「私のパッドに話をさせましょう」といって小島は自分の懐からパッドを出して起動した。「田中教授のパッドと通信してくれ。よくよくこれまでの経緯を説明するように」

「了解」と小島のパッドが言い終わった刹那、教授のパッドが話し始めた。

「失礼しました。報告いたします。教授はここで植物の採集をしたのちに、ゴムボートで地底湖の対岸まで行くとおっしゃっていました。いまから44日前のことです」

「うわ、パッドの言うことは聞くのね?人間様のいうことはちっとも信用してくれないのに。ちょとくやしいぞ」

 「パッドはうそをつきませんからねえ。パッド同士しっかり情報の吟味はしているから納得しやすいんでしょう。ところで田中パッドさん、なにか変わったことはありませんでしたか」と小島が聞く。

 「今回は旅の途中、峡谷や洞窟の入り口で人に出会ったようで、私もなんどか通訳をさせられました。相手は中国人にしては妙にがっしりしていて、顔のいかつい男達でした。この画像の男二人です。どこに行くのか、なにをするのか、というようなことをしきりに聞いていました。教授は日本の女性の写真が多く載った本を渡して適当にはぐらかしていました」

 「なんだ、先生までエッチな本持ち歩いて旅行してんのか」

 「旅行の知恵ってやつですよ」

 「この男ら怪しいな」と画像を見ながら田端が言った。「伊藤君、心当たりはないか」

 「そういえばかつて一度だけ峡谷で釣りをしている男に行き逢ったことがあります。写真の右の男に見え覚えがあります」

 「こいつがどこかで教授を拉致したのかもしれない。しかし妙なのは物取りだとすればここにある荷物が妙だ」

 「こんなところまで命がけで荷物を取りに来たりしないでしょう。単純に追いはぎにあったとか、この洞窟の奥で遭難しているとか考える方が自然でしょう」と小島。

 「ああ、そうだな。男の面があんまりあやしいのでつい変なことを考えてしまった。どうも刑事の勘ってやつがぴぴっとくるんだよな。だが、なんにせよ、この地底湖の探検に出かけたのは確かなんだ。

まあちょっと腹ごしらえをしてから出かけようか。幸いさっき桂さんが食料をしとめてくれたみたいだし」

「えー、あのばけものを食うんですか?」

「めったにないチャンスだぞ。じいさまから大変美味だと聞いているのだ。あれを食わない手はない。おれがさばくから安心しろ」

「はあ」

なるほど田畑お勧めのオオサンショウウオ汁は大変な美味だった。乾燥野菜とミソ仕立てで肉はふんだんに入っていた。照り焼きもすばらしかった。癖のない鶏肉のようで、やわらかく、うまみたっぷりの食材だった。生命力の強い日本のオオサンショウウオが絶滅寸前なのはこの美味であることが一因だといえる。一行は満腹と疲れのためしばしうとうととしていた。

 

 周囲から何かが迫っていた。田端はその気配を察知した。足音を盗みながらも砂地からおきるかすかな音を数え間合いを測る。寝返りを打つふりをして木刀を懐に巻き込んだ。その刹那何者かは声もなく一斉にかかってきた。跳ね起きた田畑はLEDのかすかな明かりの中に網を持って迫ってくる何者かを見た。網は投げられたが、その下をかいくぐった田端の踏み込みが早く、一人が脾腹を打たれてもんどりうった。さらに、上段に振りかぶった田畑はなにか武器を構えようとする二人目の肩を砕いていた。目にも留まらぬ早業に相手はひるみ、何か一声叫んで闇に消えていった。追いすがって相手の背中に一撃をくれたものの、その先は真っ暗で何も見えず、追うこともかなわなかった。

 「なんじゃこりゃ。ますます物騒になってきた」

 「田端さん、大丈夫ですか?怪我はありませんか」と小島の声が聞こえる。

 「見たか、人間が襲ってきたぞ。こりゃもうただごとじゃない。田中教授はさらわれたんだ」

 「それは遭難して洞窟の奥で野たれ死んでいるという話よりは明るいですね」

 「おっ、そういやそういうことになるか。伊藤の手前だまっていたが、おれはもうあきらめていたんだよ。なるほどね。伊藤はどうしたんだろう。桂さんは?」

 「桂さんはさっき奥のほうへトイレにいかれました。本を持っていったので大でしょう。桂さんのことだから多分大丈夫でしょう。伊藤君は寝ていますね」

 「うへえ、こいつは大物になるぞ」

 もどってきた桂は意外そうな顔をしていた。「はあ、田端さんがやっつけてしまわれたんですか。それはすごい・・・」

 「ええ、この木刀のおかげでなんとか助かりました」

 「なにやらうかうか出来ませんね。奴らをおいかけて移動しましょうか」小島はそういってやおら荷物の中から双眼鏡らしきものを取り出してきた。

 「そんなことが出来るんですか」

 「赤外線暗視スコープがあります。かなり遠くの下がったところに人影が見えます。地底湖の底を横切って移動しているのでしょうか。人数は8人。3名負傷という雰囲気ですね。銃らしきものを手に持っているようですが、同士討ちをさけて使わなかったみたいです。もっと遠くに赤外線の光源が見える。やつらはあれを頼りに移動しているようだ」

 「一人ぐらいとっ捕まえてやればよかった」

 「そうなると敵も死に物狂いになるでしょう。あの連中は威力偵察という雰囲気ですよ。まさか侍に出くわすとは思わなかったでしょうね」

 「いろいろ考えてみると、奴らはあのマンション爆破事件をひきおこした犯罪組織のやつらということになるんだろうか」

 「そうらしいですね。田中教授はやつらに拉致されて奴らのためにパフィオを作らされているというところじゃないでしょうか」

 「そうすると、東京湾のやつらのアジトにパフィオ・タナカナムがあったのもわかる。ところで、われわれは何で襲われたのだろうか」

「たぶん田中教授のところの学生が教授を探しに来たと思って拉致しに来たのでしょう」

「おれが警察だとわかったら?」

「たぶんやられてたかもしれませんね」

「げー、あぶなかった。なんてやばいことになっているんだ。まいったな。飛び道具もないし」

「用意はしてあります。これをどうぞ」

「なんじゃこりゃ。小島さんの手回し懐中電灯じゃないですか」

「レーザーガンです」

「なんだとぉ。そんな銃が開発されていたのか」

「安全装置をはずすとレーザー結晶が装着されます。内部にLEDアレイがあって、結晶の周りで発光してパルスレーザーを発振します。レーザーが当たったところは、瞬間的に3000℃の高温になって気化するので、局所的に爆発して吹っ飛んだように見えます。けれど貫通力と殺傷力は低くて、当たり所がわるくない限り相手は死なない程度ですが、高い確率で失神するようです。重心に近い腹をねらってください」

「手回しハンドルを3分回すと内部の電気二重層コンデンサに充電されます。このコンデンサだけで7発撃てます。さらにまわして充電しておけば内臓のリチウムイオン電池に充電されて最大21発打つことが出来ます。その場合7発撃つごとに1分休む必要があります」

「相手を殺さずに無力化できる銃なのか?。しかも弾がいらない。驚いたなあ。いつまでも鉛の玉ぶっとばして、むごい死人がでるから人間てやつはバカじゃないかと思っていたんだぜ。アメリカなんざいまだに未開社会みたいに撃ち合ってるじゃないか。要は無力化すりゃよさそうなもんじゃないかと思っていたのよ」

「まあ使い方しだいで悪魔のような武器にもなります」

「同僚がやくざに撃たれて殉職したときはつらかったぞ。銃で人を殺すなんざ人間のすることじゃねえと思ったねえ」

「だからいつもふとももをねらっておられたんですか」

「よく知ってるじゃねえか。悪い奴にゃあ死にゃあしないが痛い目にはあってほしいわけよ。どんな悪人だってそいつにゃ母ちゃんがいるんだ。まあそれはさておき銃をもらったおかげで100人力の気分だ。奴らを追いかけよう。おい、伊藤、てめえ起きろ」

「・・・もう腹いっぱいです」

「コノヤロウ、しょうがねえなあ」

つづく 

 

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2月24日(土)Phal. ‘Moss Ball’開花

明日は東京ドーム蘭展らしい。有馬高校はいつやるのだろうか。

夜中に苔玉胡蝶蘭が開花しているのを見つけた(今月13、今年28、新規9)。見切り品で100円だったものである。アマビリスじゃないだろうか。

 

C. schroederae 'Carlos Arango×Popayan'がまだ大層見事に咲き誇っている。この花はあんなにびらびらして繊細なのにかなり丈夫なのには驚かされる。来年はもっとすごい花をつけるよう工夫してみたい。

 

 「蘇る蘭」

12.

 昨日激流で入れなかった洞窟の入り口に翌朝一行が戻ってみると、流れはすっかりなくなっていた。天井から滴る水の音がいまは静かな入り口に響いている。

 「いまのうちに入れそうですね」と伊藤が覗き込んだ。

 「でもまた水がどばーっとでてきたら俺たちゃ中に閉じ込められやしねえか?」

 「あの水量からして地底湖の水が抜けたんじゃないでしょうかねえ。当分水が溜まるまで流れ出してこないかもしれない」

 「はあ? どうやって? 水洗トイレみたいになってんのか」

 「地底湖の底につながるサイフォンみたいな部分があって、その途中の空気が激流で追い出されてしまうと一気に水が吸い出されてしまうというようなところがあるのかもしれませんね。あの石油ポンプで勝手に灯油がタンクに注がれてゆくような状態でしょうか」

 「なるほど、雰囲気はわからないではないねえ。でもポンプで水は10m以上吸い上げられないじゃないか」と桂。

 「桂さん詳しいですね。でも、急流がサイホンの中を流れていたりすると案外10m以上の高低差があっても水が吸いだされてしまうかもしれません。中のことはよくわからないので、なんにしても神秘的です」

 「よくわかんねえけど、いけそうなんだな」と田畑。

 「行ってみても当座は大丈夫だと思いますよ」と小島は洞窟探検の装備を取りに戻って行った。伊藤が続く。

 一行は伊藤を先頭に壁を伝いながら洞窟に入っていった。洞窟にもいろいろあって、鍾乳石で飾られた宮殿のようなところもあれば、まるっきり石灰岩のごつごつした岩肌だけの洞窟もある。ここは激流に削られることが多いのか、後者だった。

 「昨日探検した洞窟と違ってここは荒削りでそっけないねえ」などと田畑が言う。

 「この竪穴の上から滝が落ちてきていました」といってにわかに高くなった天井を伊藤がライトで指し示した。

 「夜中ここが水でいっぱいになってたんでしょうかねえ」と小島。

 「ここ全部が水でいっぱいか。なんかすげえなあ。そりゃそうとこんなところ登れないけど道があるのか」

 「こっちに小さい穴があります」と伊藤が進んでゆく。全員がこれに続く。かがんで進まなければならない洞窟があった。そこには小さな流れがあった。かなり長い時間地底の小川に沿って登ってゆく。ときおり大岩がふさぐ場所などを登ったり、腹ばいになって細い穴を通り抜けたりした。2時間ほど地底を苦労して進むと、洞窟は次第に天井が高くなり、天井には鍾乳石もいくつか見られるようになった。やがて真っ暗な広い空間に出た。

 「なんじゃこりゃ。外に出たのか。もう夜か」

 「着きました。この広いところをすこし進むと地底湖があるはずです」

 「はあ、地底湖?。なんかここ広すぎないか。光が届かないぞ。ありゃ?。うっすらと天井らしきものが見えるか」

 「ボルネオ島のサラワクというところに世界最大の鍾乳洞があって、そこはさしわたし500mくらいあるそうですよ。なんでもよほど強力な懐中電灯でないと天井がよくみえないとか聞きましたよ」と伊藤。

 「地底湖はどこだ。どこまでも岩が積み重なって下っているようだが」

 「なくなっています。やはり昨日水がサイホンを伝うように抜けてしまったんですかねえ。先生とパフィオの植物体を採取したのはこっちですよ」といって伊藤は浜辺のような砂地を歩き出した。「ここは以前地底湖の岸辺だったところです」

 しばらく進むと池があった。「地底湖が満ちているときには地底湖とつながっていました。この池には地底湖にうかぶごみのようなものが寄せられてくるようです。主に流入してくる植物の葉みたいなものが多く溜まっています。田中先生は偶然ここからパフィオの一部を見つけたんです」

 「なるほど。水が冷たいから比較的古い植物の遺骸も腐らずに残っていたのか」そういって小島が池に近づいていった。池に入ると水の中に植物の葉などがみえる。小島は丹念に探してみた。「この地方ではパフィオは昔にはもっと多くの種類がいたのではないかと思います。かなりの数が絶滅したんじゃないでしょうか」小島の動作は時折止まり、まるで何かの話に耳を傾けているかのような表情をしていた。やがて1枚の葉らしきものを拾い上げた。

 そのとき突如桂が跳躍し、小島に飛び掛った。桂の木刀が池の底を刺し貫きその側で大きな生き物がもがいていた。桂は潜んでいたオオサンショウウオの頭を木刀でつらぬいていた。

 「こんなところにも居やがったか」と田畑は絶句した。

 「あやうく食いつかれるところだったな」と桂。二人はさっと池から離れた。

 「でかいですね。あのオオサンショウウオですか。ちっとも気がつきませんでした」と小島はこころもち青ざめた表情をしていた「ありがとう、桂さん。助かりました」

 「どこから入ってきたんだろうか。妙な生き物だ。人を襲おうってのがまたコワイ」と田畑。

 「もともと洞窟で暮らしているような種類もいるそうですよ。地底湖の水がぬけるのでこの池に避難していたのかもしれない」そういいつつ小島はさして驚いたふうもなく、手にしたパフィオの葉のようなものをビニールの採取袋に入れていた。伊藤はそれがなんなのか気になった。

 「小島さん、それパフィオなんですか」

 「ああ、見たことがないような柄なので採取する価値ありと見ました。ここはなぜかパフィオの葉などがふんだんにあります。まるで供え物でもしたみたいに多い」

 「まあともかく教授の足取りを追おう。伊藤君なにか妙なことはないかい」

 「あそこに何か見えますね。行って見ましょう」

 そのなにかというのは何者かが置き忘れた荷物だった。

 「先生の持ち物のようです。見覚えがあります」と伊藤が言った。「こんな危ないところまで一人で来なんて・・・。なんて無茶をするんだろう。こんなことになるなら学会の1つや二つさぼって付いてきたのに・・・」

 「ほんとむちゃくちゃだなあ。おまえの先生はインディージョーンズか?」と田畑はあきれたように言った。

 「パフィオの魅力に抗しきれなかったんでしょう」と手にした葉を見ながら小島はつぶやいた。

つづく 

 

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 未だに書き足すところがあってじわじわページ数が増えている。掲載分の加筆、訂正、改訂などは総集編で行う予定。なんだか妙な趣味である。私なんぞがやっているくらいだから世の中にはこういう書き物を趣味にする人がそれこそ五万といることだろう。まあみなさん好きだねえ。

 

2月23日(金)

本日分の開花は昨日咲いてしまった。

妙な小説もどきをやっと昨夜脱稿した。22回分、原稿用紙121枚に達した。2月13日から9日間かかったので一日13枚書いていた計算になる。文庫本では100pほどの分量ではないだろうか。

書いている方としては大変おもしろく、映画を見ているようで楽しかった。ただ、出来上がったものは頭の中で映画のように豪華な映像を伴って展開していても、著者の筆はその情景を追いつつダイジェストのように書き留めただけなので描写もなにもあったものではない。読み手が存在するとしてもなにが書いてあるのかわからない不親切な文章ではなかろうかと思う。掲載部分はまだ11回目で、まだやっと半分であった。

9日間の長い旅行から帰ってきたというぼーっとした雰囲気である。風邪を引いて頭痛がでるし、腰痛もでてきたが苦にならないほど没頭していた。これほど安上がりな楽しみはないかもしれない。

よそのサイトを覗くと何でも週末は東京ドーム蘭展だそうな。すっかり忘れていた。9日間がぼっかり抜けている。

 

 「蘇る蘭」

11.

 大鍾乳洞のホールの中央にそそり立つ巨大石筍の周囲をめぐると奇妙なものが見つかった。

 「これ人工物じゃないでしょうか」と小島。

 曲線ばかりでできた洞窟の内部に不自然な直線と直角に近い角を持った石の台が見えた。高さは50cmほどで、横幅は2mほどあり、上に容器のようなものがいくつか置かれている。これらを巨大な石筍が見下ろしている。

 「祭壇のような四角い石と器のようなものがあるね。鍾乳石が覆い隠すようについている。これは鼎みたいにみえるねえ」

 「こっちは壺ですかねえ」小島はそういって壺らしいものの上に生えている石筍の長さを目測していた「15cmほどにもなっています。石筍がこれほど成長しているところを見るとものすごい昔のものですよ」と興奮気味に言った。日本にも弥生時代の遺跡が洞窟にあって、弥生式時が鍾乳石にひっついている例があります。高知の龍河洞というところですが」

 「この鼎みたいなものは緑色の錆が下のほうにみえるから青銅器かなにかじゃないだろうか。そんな文明の器にこれほど鍾乳石が付くというのは古代文明の器に違いないね」

 「石筍は1cmのびるのに100年かかるとも200年かかるともいわれているから、この長さからすると千年以上前のものじゃないですかねえ」と伊藤。

 「なんにしても大発見じゃないか」と田畑が興奮している。

 「よく先史時代の人間が洞窟に土器や石器、骨角器を残したり壁画を残したというのを聞いたことがありますが、これはもう金属器文明になってからの遺跡ですね。こういう発見に立ち会えるなんて感激です。なにか証拠の品を持って帰れないでしょうかね」

 「あー、だめだめ、こういうのは現場保存が原則だぞ。だれも持って逃げやしないだろうからそっとしておこうぜ。証拠に写真でも撮ってさ」

 「それもそうですね。現場保存なんてまあやっぱり刑事さんですね」といいつつ携帯パッドを取り出して伊藤が撮影を始めた。「あれ、緯度経度が表示されないなあ。そりゃそうか、地の底じゃ衛星の信号が届くわけがないか」

 一行はさらに奥を目指したが、四方に洞窟が伸びており、どう進んだものかわからず、迷う危険もあったのでとりあえずその日は引き返すことにした。

もとの宿営場所に戻り、洞窟の外に出てみると雨は上がって星空が見えていた。滝の轟音を聞きながら食事をしていると音が変化し、もっと大きな音が響き渡るように聞こえてきた。

 「なんだ!すごい水音だぞ。大丈夫か」田端が立ちあがった。

 「あれが鉄砲水ってやつかな」伊藤も続いて立ちあがる。落ち着いていられなくなったのだ。

 「おい、また音がかわったぞ。すこし小さくなったような。出てみよう」といって田畑が洞窟を出て行った。かすかな星明りで田端は異変を見た。「おい、谷が水で埋まっているぞ。すごい水量だ。洞窟の入り口も水没してるぞ、こりゃあ。いったいなにがあったんだ」

 「ほんとだ。洞窟の入り口付近でキャンプしてたら危なかったですね。谷が細いから水があふれてますよ。こりゃ1日到着が遅れてたらわれわれも谷の途中のどこかで流されていたかもしれない。いや、たすかった・・・」

つづく 

 

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2月22日(木)Pollardia pterocarpa及びMax. porphyrostele開花

Pollardia pterocarpaが開花した(今月11、今年26、新規8)。名前は妙だが、ほとんどエンシクリアではないだろうか。香りがよく、バニラのようなにおいがする。かなり長いこと咲いてくれる。

明日はMax. porphyrosteleが開花予定だったが結局本日開花してくれた(今月12、今年27、新規8)。

 

 「蘇る蘭」

10.

 一行は連日次第に急流になる川をさかのぼっていった。季節は日本ではまだ冬なのだが、こちらでは次第に暑くなりつつある。時折雨が降り、川は次第に水量を増しているようだった。

 伊藤は眉間にしわを寄せるようにして辺りの景色をながめながら田端に言った「麓の人の話ではこの時期になると大雨がくると、しばらくしてものすごい鉄砲水がくるってことらしいですよ。なんだかいやな予感がしますね。以前先生とここに来たのは11月ごろでしたので、こんなに雨も降らなくて川は少しばかり流れている程度でした」

 「妙なのはこの谷の先があの向こうの断崖絶壁で終わってるように見えることだな」

 「ええ、あそこで谷はおわりで、絶壁の下に洞窟があります。川は洞窟から流れ出しているんですよ。そういえばなんだかすこし涼しくなってきたような気がしますね」

 「いよいよ洞窟か。なんか暗いところってあんまり好きじゃないんだよな。なんか出そうで」

 絶壁の下にたどり着いてみて一行が驚いたのは、洞窟の入り口から轟音を立てて流れ出る滝だった。洞窟の入り口は、高さ100mほどの絶壁の下にあり、入り口の高さ20m、幅10mという大きなものだったが、幅いっぱいに水が噴き出しており、そこから中にはいるのは不可能と思われた。

 「すごい水量だ。以前来たときはこれほど急流ではなかったんですよ。流れの横を通って中に入れたんです。どうしたもんでしょう」と伊藤が困惑している。

 「水が引くまで待ちましょうか」と小島。

 「引きますかねえ。それになんだか雨まで降ってきましたよ。空が真っ暗だ」

「伊藤君が聞いたという鉄砲水が来たら大変だから川から離れましょう。あの上の方に別の洞窟の入り口が見えますよ。あそこで待ちましょうか」といって小島は絶壁の上にある雨をしのげそうな別の洞窟を目指して登っていった。しばらくすると、たたきつけるような大雨が降り始めた。一行はその洞窟で一泊することになった。

 「すごい降りだ。こりゃあ何日か足止めをくらいそうだ」食後一休みをしながら田端が言った。「この洞窟は目的の洞窟につながっていると言うことはないのかな」

 「探してみる価値はありそうですね」といって小島は装備の中から手回し発電式のLEDライトを出してきた。

 「うわ、えらく明るいですね。見慣れないタイプだ。秋葉でも売っていないような雰囲気ですが」

 「伊藤君するどいねえ。防衛省備品です。ちょっといろいろ仕掛けがあるので貸し出し禁止だそうです」

 「はあ」ひょっとしてやばいものでは、と伊藤は思った。「桂さんからあらかじめたのまれていたので洞窟探検の装備は一通りそろっています」

 「道理で荷物が多いと思った」と田畑。

洞窟の奥は深かった。どんどん奥へ進むと次第に天井が低くなり最後には這って進むのがやっとという小さな穴になった。その穴からは風が吹き出していた。本来なら引き返したくなるような小さな穴だったが、風のつよさがその先に大きな空間があることを予感させた。そこを腹這いでしばらく進むと、少し広くなって立って歩けるところに出た。そしてそこからは別世界が広がっていた。

まるで宝石で飾り立てたように鍾乳石で飾られていたのだった。天井を覆い尽くして透明な石のつららが無数に垂れ下がっていた。彫刻のような石が床から点を目指していくつもそそり立っていた。さらにはギリシアの神殿のように石の柱が天井を支えている。滝のように流れる姿をした石が洞窟の壁を覆っていた。床はあぜのような石で縁取られた美しい池が並んでいた。どの石の表面も水にぬれ、表面がライトの光を反射してきらきらと輝いていた。そういう美しい造形が広く奥までどこまでも広がっていた。時に天井は高くなり、床には高いところや低いところがあって変化に富んでいた。どこまでもこの世のものとは思われない美しい造形にあふれていた。

圧巻は最も広い空間と思われる場所の中央にそそり立っていた8mほどの彫像のような石の集団だった。下からタケノコのように伸びた石を石筍というが、その巨大なものが7本ほど、頂を競うように高くそびえていたのだ。周囲の多くの石筍の林のなかから他を圧倒するような巨大な石筍がそびえる様は壮観だった。

 「これはまさに素晴らしい鍾乳洞だ」と桂が感嘆の声を上げた。

 「ほんとうに、すげえな、ここは。なんだか来た甲斐があったぜ」

 つづく                                           

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本日16話目を書いていてやっとこさ話の決着が見えてきた。「127手目挑戦者白の小島の奇策の一手が冴える」って何の話だ。

書き始めた頃は4回分ほどしかなくて先は全く見えなかったというお粗末な企画で、いつ行き詰まるかと冷や冷やしていたが、なんとか書き切れそうで助かった。2話目で景気よくどかーんとマンションを吹き飛ばしたものの、その必然性が説明できずに往生していたが、なんとか辻褄があいつつある。いろいろ仕掛けた複線もうまいぐあいに収斂しつつある。

掲載速度を遙かにしのぐ記述速度でぐいぐいラストが近づいてくる。駄作であっても著者が十分に楽しめたので満足している。何のためのサイトといって自分が楽しければそれでいいのである。

 

2月21日(水)Paph. primulinum開花

Paph. primulinumが開花した(今月10、今年25、新規7)。ふがふがのビニールポットで育てて2年ほどかかったろうか。大変かわいい黄色い花である。これが咲くと長い。子株もたくさんあるので枯れそうにない丈夫な株である。

 

 「蘇る蘭」

 

9.

死者を懇ろに葬ったあとで一行は先へ進んだ。葬られた蘭ハンターは所持品からイギリス人でランカシャー出身のヘンリー・E・スミスという名で、1893年ごろこの地を訪れたらしい。有名な蘭コレクターのサンダー氏が雇った蘭ハンターの一人らしいと蘭に詳しい小島には見当がついた。当時イギリスでは蘭に対する熱病にも似たブームが王侯貴族の間で進行しており、巨額の資金が世界の蘭の探索に向けられた。英国人は粗食と劣悪な環境に耐え世界を席巻したことから考えても蘭を求める飽くなき探索が精力的に世界中の密林、高地、秘境で展開されたのであった。当然彼らの仕事は危険も多く、転落、毒蛇、毒虫、熱病、原住民とのトラブルなどで不帰の人となった蘭ハンターも多い。

遺品の手帳は遺族にかえしてあげようと考えた小島が荷物にいれて持っていった。

「この人は蘭が好きだったみたいだな」と小島がつぶやく。この男が蘭がらみでやたら勘がいいのはいまに始まったことではないので田端は黙って聞いていた。

「どうして分かるんですか」と伊藤がかえす。

「手帳にね、見事な蘭の絵が描いてあるんだ。うまいんだよ。蘭に対する思い入れが伝わってくるような絵だよ」

「へえ、そういうもんですか」

「伊藤君、のこぎりみたいなもの持ってませんか?」

「何です、桂さん」

「なんとなく物騒なので、杖代わりに木刀でも作って持っていようかと思ってね。とても堅くて良い木があったから」

「キャンプ用の十徳についてましたね」伊藤はリュックに手を突っ込むとさっと十徳をとりだし桂に渡した。整理の良い学生である。

「ありがとう」と微笑んだ桂は振り返っていってしまった。

「いいなあ、しぶいなあ、桂さん。木刀ですって」

「桂さんは剣道得意みたいだからなあ」

「田端さんも得意みたいですよ」

「じゃあたぶん田端さんもつくってたりして」

桂は目をつけた木を切ると、ナイフで形を整え、荒削りな木刀を作った。それを見た田端は、

「おっ、桂さん、それかっこいいですね。ちょっと貸してくれませんか」桂は笑みを浮かべて木刀を田端に渡した。「うーん、なんか血が騒ぎますね。このそりがたまらんですねえ。桂さんも剣道なさるんですか」

「ええ、子供の時からやってました」

「はあ、そうですか。なんだかそうじゃないかって思ってたんですよ。姿勢と身のこなしにでますよね。実は私もたしなんでおります。これいいですね。私も作っていいですか」

「ええ、どうぞ。あちらにまだいい木がありましたよ」

「へへへ、じゃあさっそく」

田端は夢中になって木刀を作っていた。

 「田端さん熱中してるなあ。そろそろごはんなんだけど」そこへちょうど田端が現れた。

「いやあ、堅い木だなあ。じわじわ削ってゆくしかないから今日はこれぐらいにしておこう。はらへっちゃったよ」

 「へえ、できましたねえ。かっこいいですね。僕もつくってみようかな。岩場で杖が欲しいときがありますよ。ご飯食べてから作ろう」

 「桂さん、すこしお手合わせ願えませんか」

 「え?」っとぎょっとする伊藤。

 「そうですね、いいですよ」と桂はこともなげに言った。

 木刀を持った二人は少しだけ広い砂の河原にでて互いに青眼に構えた。伊藤と小島が遠くから見ている。

 「小島さん、いきなり剣客対決が始まっちゃいましたよ」

 「さあ、あっしはやっとうのことはさっぱりでさあ」

 「ぷっ。はははは。小島さん実はひょうきんなんですね」

 桂も田端も構えたまま動かない。お互いに互いの気を感じあっているようだ。

 (桂さん、できる。こいつはただもんじゃねえ。武者震いがしそうだぜ)と田端は思った。

 なおも静かににらみ合っていた二人だったが、やがて田端がさっと踏みだし目にもとまらぬ突きを入れてきた。渾身の気を込めた本気の突きだったが、桂は紙一重でかわし、気がつくと田端の肩に木刀が乗っていた。

 (桂さんの動きがまるで見えなかった。こんな使い手がいるのか。すげえ・・・)

 あまりのさりげない無音の動作に伊藤も小島もなにが起きたのかよくわからなかった。ただ圧倒的な力量の差で勝負がついたらしいということは理解できた。

「まいりました」と田端は膝を折って頭を下げた。自然とそういう所作をしていた。

 「すばらしい気合いでした」と桂。

 

つづく

 

2月20日(火)

Paph. primulinumパフィオペディラム・グラトリクシアヌムが開花直前である。

 

 

 「蘇る蘭」

8.

 3日間キャンプを重ね、川をさかのぼると、次第に流れが速くなり船で進むのが困難になった。このため、それぞれが分担して荷物を背負って進むことになった。川の側に石灰岩の崖がそびえており、川は淵が連続して進行が困難だった。そういう難所は崖をつたって越え、河原を歩き、あるときは石灰岩の天然橋をくぐり、滝を遠巻きに越えたりして支流の1つにたどり着いた。人間の多い中国でまったく人間に会わない。

 「ああ、山はいいなあ。伊藤君すこしやせたんじゃない」と田畑は元気だった。

 「ここは何度きてもきついっすねえ。早く日本に帰って秋葉をぶらついていたい。小島さんも桂さんもぜんぜんへばってませんねえ」

 「いや、私らもおじさんだからこれで結構こたえてるんだよ」と桂。

 「これからカミソリで切ったみたいな峡谷に入ります。途中にたような支流もいろいろありましたけれど、先生はどういうわけかこの川をえらんで入っていかれたんですよ」

 「ああ、なんだかわかるような気がする。あそこの崖にパフィオがいる」と小島。

 「ほんとですかぁ。ぜんぜん見えませんよ。よくそんなものが見つかりますねぇ」

 「あと、川の砂を調べておられなかっただろうか?」と桂。

 「へ?。そういえばポータブルの検出器を使ってなにか調べておられました」

 「このあいだ日本が打ち上げた資源探査衛星でみるとこのあたりに少し有望な鉱脈らしいものが見えるんだ」

 「へー、例の青銅器なんかと関係あるんですかね」と中国史が好きな田畑。

 美しい峡谷だった。切り立った崖はうっそうとした植物で覆われている。玉砂利を敷いたような川原をしばらく進むと垂直な崖に挟まれた淵があった。その先に低い滝が見える。水は美しいが怖いほど深く澄み切っている。

 「ゴムボートで突破しましょう」と小島がいうと桂が頷き、小島はすぐに荷物を解き始めた。

 「なにかいますよ。時々みかけるオオサンショウウオですね」

 「おい、そいつはうまいんだけど気をつけたほうがいいぞ。あまり近づくな」と田畑。

 「へ?危ないんですか?」

「魚などの動くものにわっと食いつく性質があって、しかも歯がかみそりみたいだって聞いたことがあるぞ。この時期上流で結婚相手をみつけて産卵するっていうらしいから滝の手前にうじゃうじゃ集まっていたらやだなあ」

「うへえ、想像しちゃいましたよ。なんかやだなあ」

 「さあ、ボートに乗ってゆこうか。野郎4人でちょっときついかもしれないけどね」

 「深いですね。底が見えない」と田畑の顔も真剣になっていた。

 「なんかいやな予感がするなあ。ゆっくりこいでくださいよ。転覆はいやですよ。板子一枚下は地獄っていう雰囲気わかりますよ。何かいそうですよね。主とか」

 「こわいこわいと思うから怖いものが見えたりするんだよ。ほれ、あそこに巨大オオサンショウウオが・・・」といって指差している田畑は口をあけて絶句していた。

 「・・・・でかいね。2m近くあるんじゃない。1mってのは聞いたことがあるんだけど、これはちょっとコワイね。ワニみたい。静かにしていようね」と小島が言い、こころもちパッドを持つ手がゆっくりになった。

 「ちょちょちょちょちょちょっと、落ち着いてないで岸にもももももどりませんかっ」

 「騒ぐなデブ、ここまできてあとにひけるか。てめえ静かにしてねえと食いつかれるぞ」という田端も顔が引きつっていた。桂はもう一本のパットをしずかに動かしている。

 「あわわわわ、まえはあんなもんいなかったのに。けけけけっこうたくさんいるみたいですね。ああ、もう僕みたくないです」

 「でかいなあ。足ぐらい食いちぎられそうだ。何年くらい生きているもんなんでしょうかねえ」と小島は落ち着いている。

 「100年くらいかなあ」と桂がぼそっと答える。「伊藤君もしボートからおちたら浮かんで動くんじゃないよ。ゆっくりひっぱってってあげるから」

 「ぼぼぼぼぼく、かなづちなんですよ。あははははは」

 「ああっ!」突然小島が声を上げた

 「どっ、どうしたっ!?」とちょっと半泣きの顔で驚く田端。

 「パフィオ・マリポンセだ。すごい・・・」

 「はあ?」と田端は露骨にいやなかおをしている。

 「ほら、向かい岸の崖の上に。すごい大きな花だ。あんなのは見たことがない」

 「はーん、あれか。緑色の変な花だなあ」

 直径15cmほどの丸いボールのような花が、60cmほどの花茎に支えられて5つ並んで崖のテラスに生えていた。近くで見るものがいれば、それはエメラルドグリーンを基調につややかな黒い斑点をつけた大変存在感のある魁偉な花にみえるだろう。小島が驚くほどそれは標準をはるかに超えた大きさだった。

 「あれを蘭ハンターはほうっておかないでしょう。危ない花だ・・・」

 「滝の側に岸辺がある。あそこから崖に取り付こう。崖の途中に洞窟があるね」

 「ありゃ、一匹ゆっくりこっちに向かってくるぞ。あれでもけっこうでかいな。ゆっくり急ぎましょうや」

 「色がやたら白いねえ。日本のオオサンショウウオとは別種のチュウゴクオオサンショウウオって種類がいるらしいけど。色がすこし薄くてサイズも大きいって聞いたことがある。そりゃそうとあの向うに頭だけ見えている奴むちゃくちゃでかくねえか。あれにかみつかれたら俺なんざひとたまりもねえな。くわばらくわばら」

 一行はあとを付いて来るオオサンショウウオをふりきり、なんとか岸にたどり着いて上陸した。あわてた伊藤はボートから転げ落ち、深みにはまっておぼれ、オオサンショウウオに急接近されたところを辛くも桂に救出された。

 「ひゃああああ。ありがとう桂さん。こえーよぉ、こええよ。もう、涙出ちゃったよ」

 「たくしょうがねえなあ、あんな両生類相手に、しっかりしろい」

 「でもなんかやばそうな雰囲気だ」小島はボートをたたむのもそこそこに崖に取り付いて登り始めた。

 みると親玉クラスが浮上して水面に頭を出していた。机が浮いてきたのかというほどの大きさである。なにやら一行をじっと見ているようにさえ見える。

 田端は心底びびっていた「うわぁ、なんぼなんでもありゃでかすぎないか。夢に見そうだぜ。早いとこ登っちまおうぜ。お、伊藤。えらい馬力でのぼってくじゃねえか、滑って落ちるなよ。それから下を見るな」

 「もうちょいで洞窟です。ちょっと落ち着いてきました。わあ!」

 「どうしたぁ!?」

 「でっかいゲジゲジがぁ。ああああ」

 「手を離すな。ゲジゲジなら襲ってきゃあしねえよ。待ってろ、すぐいくから」

 田端がのぼってみると伊藤はゲジゲジに行く手を阻まれて硬直していた。

 「うわ、ゲジゲジまででけえなあ。俺の靴のサイズぐらいあるぜ。まじキモイこわい。キモコワってか。なんかきみわりいからよけてゆこうぜ。ほれ右へ行け」

 「なんかもういやになってきました」

 「おまえ顔青いぞ」

 「きっと来てはいけないところに来てしまったんです」

 「まえに来てるんだろ」

 「ええ、ですがこんなに恐ろしいものばかりじゃなかった」

 「たまたまでくわさない時期があるんじゃないか。こんな秘境だからこんなもんじゃないか」

 「そういえば先生もここは冬しか来ちゃいけないところだなんてことをおっしゃってました。それに船を借りたときに地元の人も、危ないからやめといたほうがいいっていってました」

 「ふーん・・・」

 伊藤と田畑はなんとか洞窟にたどり着くことが出来た。

 「なんかいやな予感がする」と伊藤。

 「そうだな。でもお前懐中電灯もってたよな」

 「覗いてみるんですか。やめといたほうがいいような」

 「一休みできるかもしれないじゃないか。へんなもんがいても困るし」

 「そうですね」といってしゃがんでリュックから懐中電灯を取り出しているところで小島と桂がのぼってきた。中を照らした伊藤が、ひっ、と叫んで懐中電灯を下に向けた。

 「おい、何が見えた?」

 「ひひひひひひ、人影が」

 「なにぃ。ちょっと貸してみろ」と田畑は懐中電灯を引っつかむと洞窟の入り口に進んだ。「おっ、誰だそこにいるのは」田畑は用心深く洞窟の中に入っていった。

 「仏だ・・・」

 「しししし、死んでるんですか」

 「けっ、けっこう古そうだぞ。白骨化してるし。ここで座ってるうちに死んじまったって雰囲気だな。おや、足首がない」

 「ききききっと、あれあれあれ、あれに喰われたんですよ」

 「命からがら逃げて上がってきてから動けなくなっちまったんじゃないか。気の毒になあ。ナンマイダー」

 「この人は蘭ハンターだ」と小島が言った。

 「え?、なにハンターだって」

 「持ち物に植物採取の入れ物がある。我々同様この時期にパフィオを取りに来てさっきみたいなやつにやられたんじゃないかな。あの崖に登って、今みたいな時期に咲いているパフィオ・マリポンセをみつけて、どうしても採取したくなった。苦労してパフィオを採取して戻ろうとしたらやつらが浮上してきて、焦ったこの人はあやまって川に落ちたんだ。おとなしくしていれば食いつかれないんだけど、必死に岸まで泳ごうとした」

 「ちょっと、小島さん、実況中継みたいでコワイんですけど・・・」とがたがた震えながら伊藤が言った。

 「おいおい、たかが草で命を粗末にするかねえ・・・」

 「我々は危険な時期に危険な場所にきてしまったようだな」と桂がしんみりと言った。

 

つづく

 

 

2月19日(月)Ionettia Cherry Dance開花

イオネッティア・チェリーダンスが開花した(今月9、今年24、新規6)

C. schroederae 'Carlos Arango×Popayan'は結構開花期間が長い。原種カトレアは何故かは知らないが持ちが良いと感じている。私は交配種を育てるのはヘタだと思っている。うまく咲いてもらうためには、温度と湿度を最適に保つ環境をこしらえる必要がある。それがどうも作り出せていない。最適な環境なら3週間は咲いてくれる花も我が家ではせいぜい1週間ちょっとになる。そういう我が家にあっても原種のカトレア類は比較的しぶとく咲いてくれるのがありがたい。

 

 「蘇る蘭」

7.

 学生の伊藤と田畑警部はそろって釣り糸をたれていた。

 「このあたりは釣りえさになる芋虫が多くて助かった。いや、伊藤君、最初はとんでもないバカ学生かとおもったんだけど、いやなかなかどうして、君やるじゃないか」

 「ひどいなあ。まあ研究バカかもしれませんがね」

 「そりゃそうと君どこまで行くの」

 「洞窟の地底湖までって話です。そこから先は私も知らないんです」

 「地底湖!。なんてこった。なんとか探検隊みたいじゃないか。おっかねえなあ。そりゃそうと桂課長ってなにもんだろうねえ」

 「小島さんからはなんもかんも知らない方がいいってことらしいですよ」

 「なんかすごいえらい人みたいだなあ。なんか俺たちあぶないところにきたんじゃないか。お、ひいてるぞ」

 「うわ、でかいね。こりゃもってかれそうだ。ちょっと弱るまであそんでいられる雰囲気ではないんですが」

 「まあなんとか岸に寄せろ」と田畑は手じかにあった棒を手にして岸に近づいた。「でかいな、これほんとにナマズか。とりゃ!」とナマズを殴ると魚は動かなくなった。

 「剣道ですか。いや、うまいもんだ」

 「ナマズ相手に剣道もねえが、まあ警察官のたしなみってもんだ。でけえな、こりゃ」

 よく火を通して焼き魚でナマズをいただいたあとで、小島と伊藤はあたりを散策した。深い谷底で周囲は絶壁である。絶壁の中ほどに洞窟の入り口が見えた。苦労して登ってみると洞窟の入り口付近にパフィオが生えているのを小島は見つけた。パフィオはすこし湿り気のある木漏れ日のあたる斜面に群落になって生えていた。模様のある葉が美しい。かつて花をつけていた花茎の枯れたものがいくつも立っていた。洞窟の奥から涼しい風が流れ出してくるのが春とは言え初夏のような空気の中では心地よい。眼下に澄み切った川がみえる。だれも居らず、声の大きな野鳥のさえずりと水の音だけが聞こえる。上を見ると視界は森と白い崖と山と空しかない。

 「これはたぶんパフィオ・ディレナティーだろう。このあたりはパービセパラム亜属とパフィオペディラム亜属、それにパービセパラム亜属が主だったよね」と小島。

 「いや、ぼくはパフィオには詳しくないんですよ」と伊藤が頭をかく。

 「あのパフィオに目がない先生もさすがに生徒に趣味を押し付けるようなことはしなかったんだね」

 「ええ、へんな趣味をいろいろもっておられたようですが、エネルギッシュでなにかと頼れるすごい先生です」

 「ラン科は地球上に約750属25000種が見つかっているそうだよ。比較的新しく進化してきた植物なので、地球上は実績ある先輩植物に多い尽くされていたから、乾燥した日当たりのいい場所やら、あまり日が差さないくらい場所などにむりやり適応して生えてきたので、実にさまざまな形態がある。パフィオ属は約100種で6つの亜属に分かれていて、パービセパラム亜属、パフィオペディラム亜属、ポリアンタ亜属、シグマトセパラム亜属、ブラキペタラム亜属、コクロペタラム亜属がある。とくにこの雲南省一帯はパフィオの宝庫で、有名な原種の多くはこの地方特産なので、パフィオファンには憧れの土地なんだよ」

 「それで先生はたびたびやってきていたんですね。でもパフィオを持ち出すのは厳禁なんでしょう」

「ワシントン条約というのがあって、パフィオはコレクターにとってあまりにも魅力があるため採り尽くされる危険があった。なにしろ蘭のコレクターというのは主にイギリスなんかが18世紀から地球の森という森を草の根わけて蘭を探すという男を数多く雇って世界中から蘭をへっぺがしてくるということをしていたんだ。

パフィオは特に絶滅が危惧されていたから、強い規制がかかる種をまとめたリスト、付属書Iというんだけど、それにパフィオの全種類が指定されている。かつては枯れた標本の国外持ち出しも禁じられていた時代があったんだけど、この条約はその後改正されて、いまでは検査を受ければある程度は国外に持ち出せるようになった」

「国際的なやり取りができない方が生育地からの乱獲が減っていいように思うんですけど」

「インドネシアなどでは焼畑で減る蘭の生育地から蘭をとってきて増やしているそうで、そういう蘭については国外への持ち出しを許可できるような技術開発をしたんだ。科学の進歩ってやつで、人工的な苗は天然のものと重金属の不純物組成が違うことが簡単に蛍光X線で調べられるようになったんだ。

「蛍光X線というと、あのひき逃げなんかやらかした車の塗料片から車種をわりだすっていう分析法でしたっけ」

「そうなんだ。ポータブルの機械が開発されて手軽に利用できるようになっているんだ」

「それならたしか先生も一台持っていたようですよ」

「そういう機械で調べてみると蘭は、人口のものの方が不純物に重金属元素があまり混ざってこない。だから生育している国で人工的に育てられた個体は国外に持ち出せるようになった。これでパフィオの価格が下がって密輸や乱獲が減ったんだよ」

 「タナカナムについても、先生はちゃんと手続きをして標本として大学に持って帰ったものでした。ところでその危ない組織のアジトで見つかったというパフィオ・タナカナムの検査結果はどうだったんですか?」

「もちろん人口栽培だった。ただ不純物元素の比率が妙だった。日本ではあまり見られない不純物元素がいくつか検出されているんだ。ランタンとかセリウムとか、一般に希土類とよばれる元素で、中国でよく産出する。それに、これらは中国本土で人工栽培された蘭によく見られる特徴でもある」

「じゃあ田中教授が中国でそのパフィオを育てたということじゃ。それはしかし変か。そういえばもともと中国から持ち帰った植物サンプルなので、義理を通して中国に培養した細胞のかたまりを差し上げたという経緯はありました」

「それがどういう経緯で日本に送られたのか。あの物騒な犯罪組織がどうからんでいるのか。よくわからない」

 

 つづく

 

 無茶なものを書き始めてはや7日目である。本日分は原稿用紙6枚ほどになる。備蓄はあと2日分ある。妙な文章が日誌に挟まっているのは妙な気分だ。短期決戦のつもりが妙に長くなってしまった。途中でへたばってゆきづまって止まってしまうかもしれない。飽きてやめてしまうかもしれない。まあそれはそれでいいか、等と思いつつ、だんだん気合いが入っていたりするのである。夜中11日目まで書き進んだ。自分が書きたいものを書いている。こういうものを書きたかった。しかし好きな空想を書き殴っているだけなので、そのあたりはストーリーの進行とは関係がない。趣味に走っているだけである。世間一般に読まれている作品のすごさというのがよく理解できる。

 

前のファイルに続く

 

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