咲いてもらうための植え替え

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蘭栽培の重要なスタート地点が「植え替え」である。ここをうまく乗り切ることが、その後の蘭の生育に大きく関わってくる。

手に入れた株のほとんどが、次回開花させるための育成に向いていないことが多い。ランの生命力に期待して、または、業者の植え付けを信用して手を出しにくいものである。けれどよく観察しているとランは次第に弱ってゆく。鉢を振ってみると株全体がぐらぐらするような場合は根がずいぶんやられているか雑な植え付けをしてあるのだ。そう言う場合はらを据えて植え替えを行ってみると、「あちゃあ、根がないねえ。みずでべちょべちょしてるねえ」「苔がくさって粘土みたいになってやがる」ということがある。こういう場合は時期を選んでおれないこともある。

また、育てているうちに鉢からあふれてしまう場合や、2年ほど経って用土が腐ったり根腐れなどで元気がなくなってきた場合、植え替えを行う必要がある。各種の蘭についての植え替えの各論は「育てている蘭」において述べた。ここでは、道具や一般的かつ具体的処置の方法について述べる。

@  素焼鉢とミズゴケパターン:デンドロビウム、胡蝶蘭、オンシジウム、カトレア、等多くの洋ラン。

A  プラポットとバークパターン:シンビジウム、デンドロビウムの市販品

B  その他の植え方、バスケット、ヘゴ板つけ、コルクつけ、東洋蘭的植え付け

 

→植え替えの実際

寄せ植えの植え替え

定番カトレアの植え替え

 

総論

ラン植え付けの基本は、通気性が保たれ、水が滞留せず、株に比べて根を狭く、というところではないだろうか。多くの蘭の根は着生種で、根が樹木や岩にしがみつき、それゆえ露出することが多く、空気を好む。また、水がたまることは、根から出される老廃物のようなものや、余分な肥料分が滞留してしまうことにより根の機能が損なわれる。ミクロに見れば、根も細胞の集まりであり呼吸をする。水に限らず窒素、リン、カリウムを含むイオン類を選択的かつ能動的に取り込んでいる。もし、水が滞留すればその中の酸素濃度は下がり二酸化炭素濃度が増すだろうし、必要なものを取り込み老廃物を捨てたのこり汁は残飯や糞尿に漬かっているようなもので、浸透圧(水だけを通す膜の内外の物質が水を吸い取ろうとする圧力の差)のバランスが壊れるなどして機能不全を起こし、根の細胞が痛めつけられるのである。

以上のことから、蘭の植え込みには、水遣りで内部の老廃物を溶かして排出しやすくするという点に留意し、属や種により乾き加減を調節ないし判別できるようにしたい。

 

用具(七つ道具

素焼鉢

 粘土を型に入れて形を作り、800度程度の比較的低い温度で焼いた陶器の鉢である。多孔質で、水でぬらすとたちまち吸い込み、ぬれている間は水の蒸発が盛んなためひんやりとしている。内部にぬれたミズゴケがあれば毛管力により水を吸出し、表面から蒸発させてしまうという作用がある。ミズゴケとよく接触させる硬い植え方をすれば乾きが速くなり、逆にゆるく植えればミズゴケとの接触面積が減って、素焼面に吸い出される水の量も減って乾きがおそくなる。

よく駄温鉢と間違える人がいる。駄温鉢は赤茶色をしており、持ち手部分にうわぐすりがかかっていてつるつるしている。素焼鉢は全体にうす茶色でざらざらしている。蘭には2から5号の鉢をもっぱら使う。2.5から3.5号は大きさも値段(45円から70円)も手ごろで多くの蘭の大きさにもあうため最もよく用いる。蘭に対して、「小さい、かわいそう」というぐらいの小さい鉢を使う。植え替えのときに「こんなに根があるのにとても入らない、どうしよう、えいぐいぐい押し込んでしまえ、ああしまった根が折れる音がする、どうしよう」。かわいそう、とくじけてはいけない(根は折らないに越したことは無いが)。「それでも押し込んでまあなんとかおさまった、やれやれ」、ぐらいの鉢を買う。なぜかといえば、着生蘭は木や岩の上で生育するため大規模に根を繰り出してたっぷり養分をすってどんどん大きくなる通常見かける植物よりもゆっくりと大きくなり(カトレアがバルブを1本出す間に、かぼちゃは広い面積を覆う葉と花と実をつけている)、ほとんど無い養分やたまに降る雨を相手にしているため根が少なくてすむのだ。また、蘭は習性として鉢の中いっぱいに広がってはみ出すぐらいになってはじめて落ち着いて芽出し花出しに精を出すため、大きな鉢に植えると根づくりにかかりきりになり、株が貧弱になるらしい。

鉢の外径は(2から4号の間は)次式で計算できる。

外径(cm) = 2.88×号数 + 0.86

素焼鉢は、意外と扱っている店が少ない。ホームセンターでも置いていないところすらある。おもに園芸店で手に入れる。蘭に詳しい店ほど値段が安い、という傾向がある。

用いる場合、そこ穴のまわりをこんこんたたいて穴を広げておくことも可能であり、通気性がよくなるので乾かさなければならない種には推奨される。底には素焼きのかけらをいれて空気が通りやすくなるようにふさぐ。近年はプラスチック製の防虫網をぺったりと底におしつけ、四角い2cm各の発泡スチロールをごろごろと4かけらほど入れ、底にミズゴケでくるんだ蘭の根を押し込んでいる。著者は、鉢の重心が下にくる(風で転倒しにくくなる)鉢のかけらを用いる方を好んでいる。

初めのころは、よくこかしたり風に吹かれて棚から落ちて割ってしまうため在庫が必要だ。不思議と蘭が傷つくことは少ない。活発な園芸店では苗の運搬に使った植木鉢がすっぽりとはまるケースをただでくれるところがある。これは多くの株の育成には欠かせない資材で、これに入れれば鉢の落下をほとんど防ぐことができる。また、室内で観賞する場合、蘭が高すぎて(それでも根をみて小さい鉢に植えること)倒れやすいときは、鉢を重ねて2重にするとよい。

 

ナイフ

ナイフとフォークのあのナイフである。水苔を用いた鉢の植え替えなどの際、株を鉢から抜き取るときに鉢のへりに突き刺して、鉢の縁に沿って根っこをはずすのに使う。こうしておいて鉢のそこを指で突き上げて何とか株を引っぺがすことが出来る。どうしても抜けない場合は、鉢の上へりを木などでたたく。それでも抜けないときは鉢を割る。

 

剪定ばさみ

株分けの際、匍匐茎を切断するのに用いる。

蘭の多くは草でありながらきわめて強靱であることが多い。通常のはさみを持ち出して切ろうにも切れず手を痛めたりけがをしたりということがあるので、あれば越したことがない。生産者はリン酸塩の水溶液で消毒して使うらしいが、一般家庭ではコンロの火であぶるのが手軽である。

 

水苔

水苔は長く置くともろくなるので、使い切って新鮮なものをもとめる。ホームセンターや園芸店で手に入れることができる。チリ産、ニュージーランド産などを見かける。いろいろ使ってみると品質のばらつきが多い。余計な草や枝が入っていたりする場合もある。値段というよりは、店が品質を確かめて仕入れているかどうかによる部分があると思う。安くても、長く、色が均一、香りがよい、余計なものが入っていない、粉になったものが少ない、という極上品を扱っている(当然蘭に詳しい)店がある。

150g245円というのが最安値で、通常は298円以上だ。感覚的に150gで3号鉢植え替え10回分くらいだろうか。

あらかじめバケツなどに必要と思われる量を出して水につけ、絞ってから使う。

 

わりばし

植え替えなどの際水苔などを鉢に詰め込む場合に用いる。

指ではどうしても根の間にコケを詰め込むのが困難になってくるし、押す面積が広いと力が要る(パスカルの法則だ)ので、先端が四角くてコケのかかりがより割り箸が最適なのだ。

 

支柱

ともすれば倒れてしまうようなバルブや花茎などをささえるために添える柱。緑色にビニールコートされた金属の太い針金が用いられる。これにまたビニールコートされた細い針金で優しくバルブ等をゆわえてやる。

 

ラベル

ラベルは通常蘭を買ったときについてくる。ラベルにかかれている名前をネットで検索し、よく調べれば、有名な株なら系統や、ときに値段、そしてなにより大事な育て方などがわかる。その蘭の情報にアクセスするためのアクセスコードが名前として書き込まれている重要なものなのだ。しかし、株分けなどをして新たに同じラベルを書く必要が生じた場合に用意しておくとよい。ホームセンターや園芸店で売っている。

 

 

@素焼鉢とミズゴケパターン:デンドロビウム、胡蝶蘭、オンシジウム、カトレア等多くの洋ラン。

概要

この植え方は、手軽で簡単、低コスト(立派な胡蝶蘭の鉢でも鉢とコケで150円程度)、軽くて、こぼれにくく、かつ管理も容易である。適切に植えれば通気性もよく、鉢の内部の乾き具合が表面を触ることでわかるという利点がある。また、ミズゴケのつめ具合で水もち量を調整できる。通常水が抜けやすく、内部の乾き具合がわかりやすく植えるためにはミズゴケを硬くつめこみ、特に水を内部に持たせたい場合はゆるく植え込む(パフィオぺディラムやリカステなど)。この点は通常の感覚とは逆なので注意を要する。ミズゴケを硬く→カトレア、ファレノプシス、デンドロビウム、デンファレなど、着生蘭はときに根が乾くほうが自然の状態に近いもの。ミズゴケをゆるく→リカステ、パフィオペディラム、ジゴペタラム、マスデバリアなど、湿り気がある場所が好きなもの。

手順

水苔を必要と思われるだけ水につけておき、絞っておく。

素焼きの植木鉢の底の穴を必要に応じて(乾くことを好む種には)金槌でたたいて破壊し、広げておく。

植木鉢の底に防虫ネット、鉢かけ、発泡スチロールなど、好みや必要に応じてほどこしておく。著者は底に重心が近づくので鉢かけのみを好んでいる。ただ、思うに防虫ネットに堅めの水苔をおしつけるほうが、ナメクジや蟻の侵入が防げてよいのかもしれない。

水苔植だった株を引き抜いてきて、根っこから丁寧に水苔をのぞく。(パフィオは根が大層大事なので、ピンセットなどを使って時間をかけ、特に丁寧に扱う)

根の内部に水苔を詰め込み、さらに根を外側から水苔で包んで鉢に押し込む。多くのランは少々窮屈そうに見えるぐらいが適当な鉢を選ぶのがコツだ。

今後芽が出る方向を広く取るようにする。

割り箸をつかって、水苔をさらに押し込む。かため、やわらかめをこのあたりで加減する。

水が短い時間滞留できるスペース「ウォータースペース」を鉢の縁から1ないし1.5cmの深さまでとる。これがないと、施した固形肥料などがころがりおちてしまったり、「鉢底からあふれるくらい」あげなければならない水をあげられなくなる。

必要に応じて、支柱を立てる。

植え替え後は、多くのランの場合、1週間ほど水を与えず日にあてない。

 今後写真を多く掲載してゆくにしても、プロが植えた鉢を手に入れて観察するのがこの手の技術習得には必要かと思う。

 

Aプラポットとバークパターン:シンビジウム、デンドロビウムの市販品

概要

シンビジウムやデンドロビウムを@の水苔・素焼鉢で植えて悪いと言うことはない。ただ、株がかなり大きなものになると水苔では費用がかさむうえ、シンビジウムのように肥料食いでは傷みがはやいので、比較的安価なバークを用いているのだ。バークは木の皮のチップで、大きさ5cmくらいから3mmまでいろいろとある。通常使うのは大きさ1cm前後のものだ。バークに軽石、椰子ガラチップなどを混ぜて使うことがおおく、シンビジウム用土として400円前後で売られている。

バークはあまり多くの水を蓄えることは出来ない。また、通気性はよい。乾くと水をはじいてますます水の吸いが悪くなるという性質がある。シンビジウムなどは水を好むので、あまり乾かさないようにプラスチックのポットをもちいている。シンビジウムのプラスチックのポットは通常よく見かけるもので7号で、値段は400円程度だ。

手順

シンビジウムを例に記述する。

シンビジウムを引っこ抜く。抜けない場合は、鉢を木などでたたく。ナイフでへりにそって隙間をつけてからひっぱったりもする。それでもだめな場合は鉢を割る。

シンビジウムの植え込み材料を丁寧に取りのける。また、古くなって機能していないような、根っこ(すかすかのスポンジみたいな根など)は取り除く。株分けが必要な場合は、ここで分けてしまう。

芽が出る方向を広く開けて鉢にいれ、バークなどの植え込み用土を流し込む。指や割り箸などでつつきこんでやる。鉢の縁から1.5cmほど下まで用土を詰め込む。

多くのランと異なっているのだが、のっけからたっぷりと水を与え、鉢底から出る水の濁りが消えるまで与える。

1週間ほど日陰に置く。肥料は新芽が伸び出したら与える。

 

Bその他の植え方、バスケット、ヘゴ板つけ、コルクつけ、東洋蘭的植え付け

概要

着生種で根腐れしやすい大物などはもうつるしてしまえということで、ラン栽培も空中戦に突入するのであるが、やってみるとなかなかおつである。

バスケット

バンダ、アスコセンダ及びスタンホペアなどのぶら下げランに用いる方法である。バスケットを扱っているのはランの専門店か、特別気合いの入った園芸店である。明幸園が安い。

アスコセンダの下のほう、バスケットに収まっている部分で活動が乏しくなってきたため、そこを切り離してバスケットを取り替えることにした。明幸園で155円の木製バスケットを購入し、園芸用被覆針金をバスケットの底にとりつけ、ぶら下げるようにした。活動していない部分を切り離したアスコセンダの新たに伸び出している根をバスケットに収まるようにいれ、支柱にくくりつけた。しばらく日陰に置いておくものらしい。

 

ヘゴ板つけ

ヘゴ板は亜熱帯、熱帯の大型のシダの網の目のように絡まり合った根の塊を切り出してきたものである。ヘゴ自体が保護植物だそうで、少々気が引けるが、15×20cm厚さ25mmという板が800円程度ではなかっただろうか。

根くされしにくいらしく、自然界の状態に近い栽培が出来るという。根が空気を好むものをよく張り付かせている。カトレア、デンドロビウム、ナゴランほか様々である。

根をきれいに掃除した植物をすこしばかり水苔でくるみ、これをヘゴ板に縛り付ける。頻繁に水をかけて根をからみつかせる。水やりはよく乾くので頻繁に与えるが、忘れさえしなければ数日あけてもランは耐える。

バニラのようなつるものには長いヘゴ棒もあり、これは90cm260円と結構安かった。

 

コルクつけ

ヘゴ板つけに同じあつかいである。雰囲気がよい。

 

東洋ラン

東洋ラン、とは主に石斛、フウラン、春ランのうち、個体が特徴的で命名され名の通った鉢物およびこれらを扱う園芸全体をさした概念をいっているように感じる。生えているものやら、山から採ってきたもの、サギソウやウチョウラン、エビネ、ナゴランほかラン科の山野草を「東洋ラン」と言いにくいように思える。

逆に、洋ラン、というへんなくくりがある。著者の感覚として、石斛をデンドロビウム扱いして素焼鉢に水苔で植えると「洋ラン」扱いになってしまう。思うに「洋ラン」もランを扱う技法や園芸概念を指しているように思われる。

東洋ランの植え方は、腰高の独特な鉢に内部を中空にした水苔を用い、こんもりと盛り上がった苔の頂上にちょこんと石斛やフウランが載っているか、小石などを主体とした専用用土で植えた春ランのように独特なものだ。奥が深いので私なんぞがここで述べられるものではない。

地生種用には4mmほどの小石やら軽石、バークやらの混合物が売られているので利用している。

 

庭植

日本のランは庭に植えられるものがある。春ラン、寒蘭、えびねなど。庭木にフウランや石斛をくくりつけて増やすことも出来る。山を持っている人なら、環境を見極めてクマガイソウなどを植えている人もいる。もっとも手軽なものはシランである。

 

 

誰も書かなかった図解・植え替えの実際

 

再三の指導、手入れ、支柱による矯正にもかかわらず、わらわら増殖して鉢の外に侵攻を仕掛けたり、傾いてしまったりしたものを「悪の枢軸」のように思って、ほうっておいてもちゃんと咲くものをわざわざ鉢からひっこぬいて、たわけにぶった切るような植え替えをしてしまうのだった。ランの多くは少々窮屈なくらいがちょうどいいので、じっくり査察などをやり、熟慮して短気な植え替えは避けたいものだ。うっかり始めてしまうと泥沼化し、株価が下がってしまう(何の話だ)。

今回の犠牲者はアングロカステである。買って1年で植え替え、2年目の今年も植え替えである。今思えば十分な余裕があって、これからわらわらでてくる花や新芽のためにも十分なスペースがあった5号鉢だった。新バルブの1つが傾いているのが気に入らず、手をつけることになってしまった。この1年で育った花の出るバルブが2つ、そのそれぞれの親になったバルブ、祖母にあたるバルブとより古いバルブ2つ、合計7つがある。買ったときは3つのバルブがあって、今回それらはバックバルブとして取り除き、新バルブとその親の2個ずつ2セット、合計3鉢に分ける計画を立てた。芽吹き前に「水苔の嵐」作戦として取りかかった。

 

植木鉢の底の穴に指を突っ込み内部の鉢かけを押す。結構な力を加えると株全体がばっこりぬけた。この株はまだ素直に出てきた方だが、まれに鉢の壁面と異様に仲良くする根をもつ株もあり、フォークを壁面に突き立ててこそぎ落すように回してやらないととれない場合もある。うぎゃああ、というランの悲鳴が聞えてきそうだ。

この場合は株にあらかじめ水やりして根と植え込みの水苔を柔らかくして置いた。丹念に古くなった水苔をほぐして取り除いてゆく。あまりよい香りはしない。古くなった根をちぎりつつ取り除く。根気の要る作業で背中や肩が鬱血してきそうだ。妙に力も入り、肩こりがひどくなる。この前日ばらしたスタンホペア(購入後初植え替え)などは内部にヤスデ1、ダンゴムシ1、ナメクジ3という抵抗勢力の首魁豪華キャストのご登場だった。たぶん3時間くらいやっていたのではないだろうか。「あんたとろいんちゃう?」と言われそうだが、パーツからパソコンを30分で組み上げてOSのインストールを始める男にとってさえジャングルのようなラン1株は相当な難物なのだ。

作業場は見てのとおり、ダイニングテーブルを使っている。いかんいかんとおもいつつもそこしか適当な場所がない。広告を敷いてやっているが膝の上、床、テーブルに水苔が散乱する。流しにも作業の都合で水苔などがちる。不衛生である。外でやりたいところだが(外でやれ!:かみさん)、寒いのでいやだ(妥協案洗面所:かみさん)。たちまちテーブルは戦場のようになる。こういうでろでろの状況は園芸書には書いていないだろうなあ。30分以上は苔むしりの作業をやっていた。苔をすくなくすると、バルブの間で切断できる場所がみえてくる。バルブの間をひろげて写真にも写っている100円ショップで買ったミニニッパでほふく茎を断ち切る。絡んだ根をほぐしつつ、株と株を切り離した。さらに根の間の苔を掃除して写真のように株分けを完了した。多量に出た水苔廃棄物は庭で堆肥になる。酸性と聞いているがユリの植木鉢に入れて置いても問題はなかったようだ。

植木鉢を用意して底の穴を金槌でたたいて広げておいた。よほどへたをしない限り鉢を割ることはない。バルブの大きさに合わせて、4号、3.5号、3号を用意した。その底の穴を鉢かけなどで簡単なふたをした。

鉢かけの上にふんわりと水苔をかけておく。今回近くの山でみつけた杉皮を切ったものを入れてみた。杉皮には「害虫がいやがる物質や根腐れを防ぐような物質が含まれている」ような気がしてバクチ気分で入れているのである。あくまで気分である。

 

根の中心部に水苔の塊をいれ、根の外側を水苔で包み込み、それを鉢に押し込んだ。さらに周辺から水苔を詰め込む。このとき、次の新芽が出てきそうな領域を広く採るよう戦略的な気分で水苔をつめる。植え替えのもっとも大事な勝負がここでの操作なのだ。鉢の端から15mmほど下に水苔がくるようなウォータースペースが必要だ。これは水をどばっと入れても外に出ないための深さである。これがないと水をやっても鉢の外に出てゆく分が多くて、鉢にあまり入らないし、固形肥料を与えてもなにかの拍子にころりと外に出ていってしまうという面白くないことが起こるのだった。しかし、バルブのツヤがいいねえ。

 

周辺から水苔をつめ、割り箸を使って詰め込む。ランの多くはバルブの根元から芽が出る場合が多いので、芽の出るところが水苔に埋まらないように注意する。詰めながらもバルブの位置や傾きなど微調整する。

アングロカステは、水苔をゆるめに詰める部類なので、あまりたくさんの水苔をつめこまない方がいい。しかしでかいバルブをきりっと立たせるためについ少々固めに詰め込んでしまった。別に悪いことではない。成長期に水やりの回数を多くすればいいのだ。ゆるいと水をたくさん蓄え、固めにきんきんに詰めると水の乾きが早くなる性質がある。内部の水のための空間の大小できまるものらしい。また、水は毛管力で保たれており、苔の表面や底、素焼鉢の表面から蒸発するものも毛管力で内部の水は外へと吸い出され、鉢全体が乾く。苔をよく詰めてあるものは毛管力が働きやすいため乾きやすいのだと理解している。

 

さて、作業が終わってみるとなかなかいい雰囲気の鉢が3つできていた。バックバルブにもいい味がある。これで新芽が出ればもうけものだ。あまり株を増やしたくはないのであるが、このアングロカステはなかなか素晴らしい花がつくので芽が出てくれればと思う。

 

その後2003年5月24日左奥の株は花芽が5つ新芽が2つ出てきた。他二つはもらわれていった。作戦は成功し、今年も素晴らしくもかぐわしいあの花がさいてくれることだろう。 →左の鉢が咲いた

 

つづく

 

寄せ上の植え替え

3株の寄せ植えですね。咲いているときは高かったんでしょうけど、植え替えはこの時期往生しますやん。世話になった人からこんなもんもろうてしもうて往生しますわねえ。そういうときに限ってあれどうなりましてんて後で聞かれるんで二度往生ですねん。

まあそういうわけで植え替えである。まだ記述していなかった「もらって困った寄せ植えの植え替えコーナー(^^;)」である。

花が終わった寄せ植えというのはまずもって株の育成には不向きですな。

上側をたくみに隠してあるミズゴケをどけるところりと取れる3株であることがわかった。状態がよければこのまま素焼鉢に植えてしまう。今回は苗をビニールポットで2年ほど育てたらしい、とコケのにおいをかいで思った。草が生えてきていたり、生きたコケがついていた。ミズゴケの耐用年数2年を過ぎているものと見ていい。

コケを丁寧にはずし、根をむき出しにした。この作業は秋に新芽が出てからのほうがいいのだろうなあ、と思いつつやってしまう。

素焼鉢とミズゴケ、はちかけなどを用意する。素焼鉢の大きさの決め手は、ミズゴケでくるんだ根の部分がすこし窮屈、というくらいの鉢を選ぶ。今回は2.5号鉢と3号鉢を用いた。「穴に防虫網をかけ、鉢かけをかぶせるか、発泡スチロールを入れる」のが一般的だが、今回は趣味で椰子ガラで穴をふさぎ、杉皮をかけておいた。

株の根を新しいミズゴケで包んで素焼鉢に押し込む

周辺からミズゴケをつつきこんでゆく。ここで私の圧力センサーつき指のかわりに「割り箸をつかってつつきこむ」のが一般的である。株がぐらぐらせず、逆さにしても落ちない状態が基本である。鉢の減りからコケの表面まで1cm程度段差をつける。水が一時滞留するウオータースペースというもので、これがないと固形肥料などが転がり落ちるなどしてやりにくい。

出来上がったら涼しい日陰に1週間置き、水は与えない。

 

定番・カトレアの植え替え

2005年5月14日にBc. Cliftonii ‘Magnifica’ FCC/RHS ブラソカトレア クリフトニイ ‘マグニフィカ’の植え替えを行った。この株は姿はミディだが、香りの良い140mmほどの大変美しい大輪の花が咲くというまことに結構なカトレアである。写真のように鉢の縁までバルブがきて開花している。鉢の反対側には葉のないバルブが立っている。この花が咲く半月まえに鉢の縁を乗り越えたバルブが開花していた。そのバルブの根がはみ出して鉢の外を這いずり回っているという状況である。購入後1年を経ており、花も終わったのでそろそろ植え替え適期と思えた。

 この鉢は蘭友会の販売品で、その会の重鎮と思しき方の手になる鉢である。これだけ見事な花が咲いたのであるからその植え付けを学んでおくべきだろう。鉢を裏返して孔から指を突っ込んで押すとたやすくはずれた。防虫網、発泡スチロール、鉢かけ、ミズゴケ、と重なっている丁寧な仕事であった。鉢のミズゴケはそろそろ傷んでいるのかと思ったら内部はきれいで、質の良いミズゴケが使ってあったらしく、腐れもいたみもみられなかった。さすがラン会の鉢はちがう、とうなる。

 ミズゴケの上層から少し入ったところに謎の肥料らしいものが入っていた。何度か見かけているのだが、なんだか知らない。

 ばっくバルブというのは株を増やす手段という意味もあるが、株を鉢の中でよい位置に持ってくるためにとっておかなければいけないもの、という風に考えて取った。はさみを使わず、簡単に折り取ることが出来た。このは、FCCを受賞していながら世間ではまるで見ることが出来なくなった珍しい株であり、3.5号鉢で大輪をつける優れた性質を持っている。それゆえ、このバックバルブは、元気に乏しいので望みは薄そうに見えたが、大事にバックバルブ伏せをすることにした。

 鉢にはおなじ3.5号を用いた。防虫網兼鉢かけの通気性を持つと私が勝手に思い込んでいる杉皮板を底に敷く。ミズゴケにはAA+の150g318円明幸園購入のものを用いた(写真で比較してみると値段が高くなるに従って色が白くなる)。バケツに苔をいれ、HB101をたらしこんだ水をジョウロで苔のブロックにかけて苔をほぐした。かなり量があって、しまった全部もどすんじゃなかった、と思った。まあいい。なるほどちょっと高い苔はなにかしらいい。長くて、色がいい。ちょっとリッチになった気がする。しかし指に刺さるとげを持った植物が混ざりこんでいてしたたか指に刺さって往生した。そういう不純物を取り除いておく。

 株の根のまわりからミズゴケをとりのぞいた。今回100円ショップでピンセットを購入しておいたのでそれを使って丁寧にやるつもりだったのだが、どうもしっくりこないのでほとんど指でやってしまった。

 苔を除いたあとはぼっかりと根の間に空間が出来る。この空間に新品のミズゴケを詰める。さらに株が今後伸びて行きそうな部分に苔を多めに当てて根を苔ロールで覆う。これを素焼鉢にはめこみ、根を折らないように苔を詰め込んでゆく。水がたまるだけ鉢のヘリから苔面をさげたところまで押し込んで完了である。これじゃまた鉢にかかるだろう、という植え方だが、バルブが鉢にのし上がった状態で咲く例が多いように思われるためわざとそうしている。出るかでないか、という状態が「やば、咲かなきゃ。でも水はちゃんと吸えるなあ。通気性もいいし」というふうにカトレアが思っているのかもしれない。

 

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