蘭のうんちく

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この項ではランにまつわるあれやこれやで、どこにも収まりのつかない四方山話をつづる。

 

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リカステについて

リカステが気になる。花も気になるが、その名前が気になっている。ランの属名を400種ほど集める作業をしてみて、リカステという属名の由来は異色だった。多くの属名は、「花のどこそこの格好がこれこれに似ているから、これこれのギリシア語をあてた」というパターンがほとんどで、せいぜい「ビーナスのなんとか」とかいう名前がつく程度だ。リカステは、ホメロスの叙事詩「イリアス」「オデュッセイア」のどっちかに出てくるトロイの王女の名である。叙事詩がギリシア神話を扱っているため、いろいろな神様がでてくる。しかしトロイはシュリーマンの発掘により今のトルコに実在し、叙事詩の話の多くは事実に基づいていたらしい。そのトロイにお住まいのリカステさんは、プリアモスという王様の娘で、当然きれいなお姉さんだったのだろう。そのお兄ちゃんのパリス王子はギリシアへ出かけてギリシア第一の美女ヘレネを女神から与えられてトロイに連れ帰るちゅうような間男をやらかしてしまった。放蕩息子ですね。ヘレネの奪回を目ざし、彼女の夫メネラオスの兄アガメムノンを総帥としたアキレス、オデュッセウスらの遠征軍が編成されトロイ戦争というえらい戦争になってしまった。トロイ側はヘクトルほかの英雄がこれを迎え撃ち、10年間決着がつかず多くの英雄の血が流されたが、オデュッセウスの案による人間を隠し入れた木馬作戦が効を奏し、トロイは落城、男は殺され女は奴隷にされたという悲惨な結末で、リカステさんも城を枕にご自害なすったんでしょうかねえ。このあたりの話は阿刀田高著「新トロイア物語」にくわしい。この属に命名した人はよくもまあそういう人名をもってきてつけたものだと思う。しかしそういう命名ができるのであれば、多くのランにギリシア神話の女神や女性の名前がつけられていないのが不思議である。

 

蘭の語源など

 Orchid:ギリシャ語にゆらいする、いわゆる「きんたま」。蹴られて「おー、息子が(kid)」と言ったかどうか。丸いバルブが2個並んでいる蘭をみてそういう名前を付けたらしい。また、精力剤や媚薬に蘭が用いられたのもこのエッチな語源に関係があるのだろう。蘭にはセロジネというこれまた医学的な語源を持つ属があり、Orchidと対をなしている。

Cymbidiumは、cymbe(船)とeidos(形)、唇弁が舟形。

Paphiopedilumは、ラテン語のpaphius女神ビーナスに捧げた、pedilumスリッパ。

Cypripediumはビーナスの小さい足。

Phalaenopsisは、ギリシャ語のphalaina「蝶に似た」の意味。有名な品種のamabilisは「愛らしい」の意味。

Oncidiumは、ギリシャ語のoncosこぶ、eidos形、唇弁の基部にこぶ状の突起があることからきているとか。

Vanda、語源はサンスクリット語だそうだが、意味不明とか。「木にまきつく」とかどうとかいう意味らしい。

 その後400属ほど表にして整理していると、属名の多くの語源情報にふれた。どれもギリシア語起源が多く、花の形などを現すギリシア語を組み合わせ、ラテン語のつづりにしたものだった。人口属などは人の名前も多い。

 

首相官邸の蘭

蘭が好きになってテレビ画面の端々に映る蘭にも気を引かれるようになった。ごく最近までは古い首相官邸のいつもの場所で小泉首相の今日の一言があるのだが、その背景には必ず蘭が映っている。

春はシンビジウム、胡蝶蘭、夏はデンファレ、秋はオンシジウム、冬はデンドロビウム、というところであろうか。長く咲いて華やかで高級感が漂うから契約して入れ替えているのであろう。

このほど新しい首相官邸にうつり、総理大臣は記者会見のときに背景に蘭をしょわなくなってしまった。まことに不満であった。蘭業界にとっても危機的状況ではないか。首相官邸にもその旨メールしているのであるが、未だにあの趣味の悪い壁をバックに記者会見をしている。そういう細かい芸というか、演出がなされなくなっているのは側近に余裕がなくなっているからか、と思われた。

首相官邸へのメール(5月27日)「(教育についてまじめな意見を述べた上で)PS.総理は首相官邸での記者団のインタビューに蘭の花をしょっておいででした。新首相官邸では蘭の花が無く、蘭好きの私には殺風景で寂しい思いをしております。国際蘭展にまでおいでになった総理にはぜひとも四季の蘭の花を背景においていただきたいと希望しております。」

 2003年になって花をバックにするようになっている。でも蘭であることがすくなくなったようだ。

 

蘭の楽しみについて書く

 蘭は花、葉、根それぞれが実に面白い。これらがゆっくりと、しかし驚くほど大きく、思いもかけない変化を見せてくれる。これにバルブという膨らんだ組織をもつ種類が多く、形態は変化に富んでいるうえ、いつまでもつややかな緑が美しい。また、草でありながらいつまでも枯れず、多くは育てている人よりも長生きをするという点に畏敬の念を覚えるのだ。世界中に蘭は最も進化した植物として広がり、基本的な部分で共通性を持ちながらも驚くほど多彩な形質を持つ種類に分かれている。その数およそ2万種。蘭科が擁する属の数は750にもなる。多くの種類が家庭でも栽培可能である。そういう蘭の魅力について述べてみたい。

 

咲いた蘭は街中ならかならずどこか目の端に見えているありふれた存在である。このような蘭の花は格別の花好きでもなければその魅力のとりこになったりはしない。咲いている胡蝶蘭はおおくはのっぺりした白い花、というだけの印象しか以前の私は持っていなかったのである。ところが、これを育ててみるとその変化に目を見張り、咲いた花には強い愛着を覚えるようになるのである。

蘭の花はおしなべて開花している期間が普通の花よりもきわめて長い。日本の庭に咲く花はせいぜい1週間、長くて2週間というものがほとんどだろう。だが、蘭の花は短いカトレアでも3週間、長いもので6週間。胡蝶蘭は3ヶ月にもなるものがある。

胡蝶蘭を咲かせる場合、花の出る茎が10月に現れ、一冬かけてこれが1mも伸びる。単位を間違えているわけではない。1mなのである。その茎の先端付近につぼみが現れるのが2月の末で、じっくりと待たされた挙句、開花直前になぜかいくつかのつぼみがしおれてやきもきさせられるのである。どうしたものか、開花前にはかならずいくつかつぼみが落ちる。開花は4月初旬で、花芽の出現から実に半年も待たされるのである。

花は最初小さく咲き、なんだこんな花か、とがっかりするのだ。しかし、それがだんだんと大きくなり、株の大きさに比べ花の群れのほうが大きく見え、株が鉢ごと倒れそうなほどに華麗に咲き誇るのを見た。5月に満開に達し、6月になってもなお衰える気配もなく、7月まで咲いているだろうという予想がたつほど長く咲く。このころになるとすっかり胡蝶蘭の魅力にまいっている。来年も立派に咲かせたいと肥料などに気を配り、気がつくと鉢が増えているというような具合である。

胡蝶蘭はまた、冬に開花したものをもらって花がしおれた場合、花茎を下から3節ぐらい30cm以上残して、節から1.5cm以上のところをちょん切ってしばらく置くとそこから別の花茎がでて新しいつぼみをつけまたまた花を咲かせるという性質がある。だから割いたものを見て楽しむだけでなく、本当に咲くところを見ることができるのである。これで胡蝶蘭が好きになってしまう人も多いのではないだろうか。

胡蝶蘭のほかにも見事な花をつける蘭は多い。カトレアは一般に難しいと考えられているが、それは大輪のカトレアの話で、株の高さ20cmほどの中くらい以下のカトレアはごく簡単に家庭で咲かせることができる。中には年に3度も咲く種類もある。ある日つぼみが見えたと思ったらほどなく見事な花が咲いた、というようなことがある。冬場、水をやりすぎず、10度以下の低温にあわせなければかれることもなく簡単に咲かせることができる。

きれいな花のほかにも蘭の花は面白い形をしたものが多い。花は一般にわれわれが小学校の理科の時間に習ったものとは形態が大きく異なっている。まず、おしべとめしべがどこにどうあるのかさっぱりわからない。ずいちゅう、という器官にまとめられているのである。また、しんべん、という花びらの一枚がほかの花には見られない特別な形になっている花が多いのである。受粉を助けてくれる虫などに合わせた、特化した形をしているようだ。蘭は自家受粉などは一切せず、かならずほかの株からの花粉で受粉するという性質があるという。また、受粉をすると10ヶ月ほどもかけて大きな実になり、その中にはほこりのような小さな種子がものすごい数入っているそうだ。

われわれがもっともなじみがある蘭の種子は、といっても意識した人はすくないだろうが、高級店のバニラアイスなどに入っている黒い点である。これはバニラという蘭の実を発酵させたもので(バニラビーンズといい、黒いさやインゲンのような格好をしていて、たった一本が見てくれに似合わず600円もする。始めて購入したとき私は、これはマメ科の植物で中には直径4mmほどの豆が入っているのだろうと思っていた。クリームブリュレをかみさんに作ってもらい、なかに黒い点が入っているのを見て、どうやってこんなちいさなみじん切りにしたのだろう、としばらくいぶかしく思っていたのであった)、中の蘭の種子を香り付けに使っているのである。蘭の種子はあのちいさな黒い点ほどに小さなものなのだ。

 

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