蘭馬鹿日誌迷作選

2/16/2007

 何度も読み返している部分を集大成 インデックスに戻る 

 

2007年

2月13日「蘇る蘭」 

 

2006年

12月15日「すごいで」

10月14日「美しい蘭の国」

 

2005年

1月24日 「譲渡

2004年

11月2日 「蘭は見ていた

7月20日 ご蘭行

7月13日 どうころんでも園芸

7月8日   月下美人パスタ

7月4日   公演原稿

6月25日 植え替え審査委員会

2月14日 蘭法医

2月11日 水遣りロボット

1月6日  燃料電池温室

2003年

11月10日 さぶー

11月5日 女王様作戦

 

2006年

12月15日(金)すごいで

仕事漬けでランのらの字も見られないのよねー。

こういうときに何を考えるか。落ちのきまらなかった漫才ネタでもひねろう。

 

 こんばんは、らんらんでーす。

 何や変な名前の漫才コンビですが、よろしゅうたのんます。

 わてこないだ蘭用のコンポスト買いましてん。

 いきなり蘭ネタかい。ようぽんぽんでるなあ。たまには売れそうなネタないんかい。

 そんなんプロに任しといたらええがな

 まあそやけど、そんでコンポストってどんなポスト

 ポストいうたかて郵便受けちゃいまんがな。コンポスト言うたら蘭の植えるのに詰め込む材料ですがな。

 ああ、うちは牛乳パックをほぐしたやつつこうてんねん。

 ええ、なんかむちゃなもんつこうてません。それで咲きますか?

 さあ、花みたことないし。

 よう蘭やってるいえますなあ。うちのコンポストは最近開発されたやつでっせ。

 またはやりものに飛びついて。奥さんだまされたらあきまへんよぉ。そんでそれがどないしてん。

 だれが奥さんやねん。なんか相当はやっとるのは確かやな。これで植えると花がバンバン出るいうし。

 そぉんなやつおるかい。コンポスト変えたくらいで花が咲くようになるか?。下手なやつはヘタや。

 むちゃくちゃいうなあ。きいて驚け、今度のコンポストは名前からしてすごいで。

 なんやねん。

 せかやら「すごいで」

 なんがすごいん

 「す・ご・い・で」いうてんやがな。蘭の花がすごい出るちゅうから「すごいで」

 もうええわ

 こら、いきなり終わるな。

おやじだじゃれでたらいいたあなるがな。

せやけど今度のはちゃうど。今まで根がすごいでるちゅうコンポストはあったけど、やっぱ蘭は鉢の上のモンがものいうさかいな。根っこみせてくれっちゅうて見られるもんちゃうし。

そらそやなあ。でも名前までぱくらんでもええやろうに。まあ先代もセンスないけどこっちもわややな。こんなん買うやつおるんか。おお、ここにおった。

 ほっとけ!。

 そんでどこがええのん?

根もすごいでるんやけど、茎が半端やないなあ。バルブも葉もものすごく大きくなって。絶対に鉢が立たんようになる。

 鉢が倒れて何がうれしいんや。

小さい鉢にでかい蘭だしてでかい花咲かせるのがまた醍醐味やないの。

 まああんたの趣味やからとやかくいわんけど。

 あんたも蘭が趣味でしょうが。

牛乳パックほぐしたやつに突き刺しといて茶色になってゆくのをみるんが趣味よ。

 やめーちゅうに。せめてミズゴケに植えて。

 ミズゴケ高いがな。そんじゃその「すごいで」わしにも分けて。

はん、やっとまともなラン栽培にめざめたんか。ほな1kgほど分けたげましょ。

    1週間後 *

植え替えた?

ああ、すごい効いた。

効いた?なんに

水虫に。靴の中に入れといたら通気性がええんかしら水虫が治った。

おっさんあほか。

ええがな、すごいで、水虫がなおったんやで。それにこの板なあ。すごいで固めてつくったんやけど。

うわ、へご板のかわりになるなあ。ええもんつくったなあ。

鼻緒つけて下駄にしてんねん。最高の通気性。究極の水虫治療。これぞ完璧な水虫撃退法。100年に1つの発明。

もう水虫はええから蘭はどないしてん。

牛乳パックほぐしたのとまぜてなぁ

まぜるなっ、ほんまに、もう牛乳パックのことはわすれて!

根ばっかり出て根だけになってしもうてん。

もうええわ。

 

10月14日(土)美しい蘭の国

昨日もよせばいいのに銀杏を20個程度食べて本日は銀杏中毒なのか顔が痛い。

「うがー、かおがあぁぁぁ」

「どないしてん」

「銀杏にかぶれてはれてしもうてん」

「あ、おまえかお変ってるわ」

「ほっとけ」

「すこし男前になったんちゃう?なんかヨン様そっくりみたいやど」

「うそつけ」

「ほんまや、かがみ見てみ」

「あ、ほんまや」

「その顔で写真をとってホームページに貼り付ける」

「うわ、なにすんねん。わしのページに」

「自己紹介のページも作る」

「え、出身地ピョンヤン?うそを書くな。なんでピョンヤンやねん」

「人民軍の高級将校だったが、将軍様は水虫を患っていたという国家機密を知ってしまい、脱北を計るも、38度線で銃撃戦となり、海に逃れる。リャオトン半島に流れ着き、堪能な日本語を生かして残留孤児と偽って日本に。兵庫県在住」

「なに韓流ドラマ仕立てででたらめかいとんの?いきなり兵庫県在住は変でしょうが。うわ、そんなもんアップロードすな」

「おお、いきなりアクセス数が急上昇や。さすが奥様のメールネットワークはごついなあ」

「ん?メールきとるぞ。NHK趣味の園芸でT山先生とイケメン対決もとい共演依頼。なんじゃこりゃ」

「人は見た目が9割とかいうなあ」

「そないいうて当日に腫れがひいたらどないすんねん」

「腫れが引いて元の顔になるのがあなたの悩みなんですね?」

「悩みいうて・・・」

「あなたの美は約束されました!」

「はあ?!」

「シリコンいれましょう。こちらシリコン注入にかけてはアメリカ一、シリコンバレーから来たゲイツ先生です」

「あのなー。なに?、シリコンってPentium4やんけ」

「もしもkojimaにインテルが入っていたら。おお、パフィオに花芽が!、カトレアにつぼみが!」

「もおええわ」

 

9月26日(

「美しい国」とはまた結構なお話であった。本を買って読んでみよう。おっさんになると就任挨拶などもまじめに聞くようになったなあ。日本は「美しい国」である。より美しくするために種々さまざまに働いてゆきたいものである。その自己活動のひとつとして蘭があると思う。日本は世界中の蘭が大切に育てられている世界一の蘭大国かもしれない。暖かい、湿り気のある幅広い気候があるためたくさんの種類の蘭が育てられている。街に蘭があふれ、珍しい蘭もあちこちで見ることが出来る。蘭をあつかう人々を思っても不愉快な思いをしたことがない。蘭と人との「美しい国」は確かに存在している。

 

「最近事件がおおいですねぇ。蘭は高価であるものもあるからいろいろお金の絡んだ悲惨な事件が起こりそうなのだけど、実のところ聞いたことがないねぇ。」

「美しい国ちゅうても世相はわるいねえ。でも蘭関係者はみんなええ人がおおいから世相がこんなにわるくてもひどい事件はないねえ」

 

「温室が襲われ、時価数百万円の蘭がごっそり強奪された」

「そんなにせんって」

「ブームになっている蘭を買った小学生から高校生が蘭をカツアゲして取り上げた」

「ゲームソフトちゃうど」

「食玩「デンドロチョコ」についてくるデンドロビウム苗を全種類(1984種+シークレットあり)集めようとして自己破産」

「あははは。あほや」

「食玩「カトレアチョコ」売価298円についてくるカトレア苗70種を90% 集めるために必要な金額を計算せよ」

「結構難問。解くな。答えしらんぞ」

「ああ、またフォーベシーがでた。ワルシェビッチーが欲しい」

「続きかい」

「蘭ゲームカード、蘭キング、全27000種を集めようとしてやっぱり自己破産」

「やめろって。種類おおすぎ」

「カトレア トリアネイ ビューティーパワー100、フレグランス50、バルブ繁殖力90、どやどや」

「うーん、バルボフィラム・ロビー、面白さ100、香り20ではちょっと勝負がむずかしい。なにやらすねん」

 

「ネットとカードでバンバン原種集めしたるねん」

「金あんの?預金残高は?」

「株の売り買いで稼ぐ。買った株の値段分融資があるのでその金を元手に株を買う」

「ああ、原油が一挙に1バレル80ドルに。これでは温室の燃料が」

「ああ、株の大暴落や」

 

「蘭のトレイが倒れたのに気を取られわき見運転で事故」

「やりそうで怖い。最近そういうの多いですから気をつけてください」

 

「蘭を枯らしたことを苦にして中央線東小金井駅にて飛び込み」

「うわ、いけませんねえ。株わけしたるから待て」

 

「温室の相続をめぐって兄弟骨肉の争い」

「わきゃないわなあ。世話が大変で押し付け合いはあるか。あんたが水やりしなさいよとか」

「××蘭園に強盗が押し入り、パフィオを盗んでくるまで逃走」

「ないやろ。値段わからんし」

「蘭をめぐって口論となり、かっとなって素焼鉢で頭を殴って殺害」

「ないねえ。シンビの鉢のほうがきくんちゃう」

「空港で大量の密輸××大量に摘発」

「よく保護動物とか見つかってますけど、蘭は案外聞かないねえ」

「暴力団の資金源」

「バニラはとれても麻薬にはならん。やくざ屋さんが温室でええ花さいてまっせっていうのはいいかも」

 

「心無い育て主が離した××が野生化し生態系が混乱」

「これもない」

「逃げ出した××に噛まれ重症」

「噛まないって」

「勝手に家に上がりこんでたんすに巻きついて咲いていた」

「おもろいなあ」

「地元の蘭友会により駆除作戦」

「いのししちゃうでしょう。猟友会じゃあるまいし。草刈すんの?」

 

「近所のおじいちゃんが、蘭にストーカーすんねん」

「ええなあ、このふ入りの葉っぱ、ちゅうて散歩がてらかならず言うてきはるんですな」

「こういうのは増えたらあげるですむんですけど、どこぞの娘さんとかは増えたりしませんわなあ」

「増えたら気持ち悪いでしょうが」

 

「蘭に恋人を取られたと思った女が蘭にガソリンをまいて放火」

「放火したかったんちゃう?」

「わたしと蘭とどっちが大事?」

「うーん」

「なやむなって。火つけたる」

 

「カトレアのバルブがカッターで切りつけられた」

「物騒やなあ。なにすんねん。そういうやつは包丁で手切ったことないやろ。切ったもんは食え。くわしたる」

 

「この株絶対値上がり確実。マスコミでばんばん取り上げられてるし」

「あ、この花芽セロテープでつけてある」

「粉飾花芽」

 

「ひったくりもおおいね。大阪引ったくりナンバーワンシティー」

「わー、ぱちぱちぱち」

「こら、拍手すな」

「まえかごから蘭をひったくったものの花が散らないようにゆっくり走っていたため反撃に転じたおばはんにちゃりんこで後ろから轢かれてしまいよってん」

「あはは、あほやねえ」

 

「かわいかったので連れ出してしまいました」

「勝手にもってったらあかんよ」

「でも枯れてしまったので近くの公園に放置」

「あほかー。ひどいなあ。ほんまにいそうでコワイわ」

 

「蘭を見に温室でくつろいでいたら、足立区を震源とするM7.8の直下型地震がおきておれのところは震度7、家は潰れ、おれはバンダが降ってくるやら、鉢がわーっと降りかかってくるやらで鉢まみれになって床に転がっていたんだけど、打ち身や切り傷ぐらいですんだ。母屋にいたら死んでたろうねえ。逃げたよ。蘭には悪いけど火事が怖い。温室に避難袋備えといて助かった。蘭のおかげで生きてるようなもんだ」

「フィクションです」

 

「ものすごい新型ウイルスがぶわーっと広がって日本中の蘭がぁああ 

「これはコワイな」

 

「クマガイソウ自生地からごっそり」

「これは本当にあって実に腹が立った。やったらあかんよ」

 

「蘭を落とした子供を虐待」

「これマジこわいなあ。ついしばきたくなるけど子供どついたらいかんよ」

「警告3回。どうしてもぶつならおしりを平手で、罪状について説明し、執行」

「○○君あなたは再三の警告にもかかわらず室内でハンドボールをおこない、結果として蘭の鉢に甚大なる被害を負わせしめた。おしりぶちの刑をもって処するほかない」

「手が痛い。ぶつほうが痛くない体罰は体罰とはいわん」

 

神戸市長田区の海釣り公園付近の海岸で熊谷次郎(25歳 武将)容疑者が平敦盛(15歳 公達)を、言葉巧みにそそのかして決闘に持ち込み殺害」

「うわー、未成年になっちゅうことをするんでしょうか。しかも被害者は首を切断されていますね」

「なんだかサカキバラ事件との類似点をかんじませんか。この凄惨な事件はクマガイソウとアツモリソウというなまえに記憶されることになるわけですねえ。これ平家物語?」

「蘭の事件じゃねえじゃねえか。1000年前の話やんか」

 

「ある夜、庭の上空に銀白色の巨大な物体が浮かんでおり、怪しく光る背丈の低い小人が3人」

「おいおい」

「ワレワレハキミタチガバーナード星ト呼ンデイル星カラヤッテキタ」

「うわ、頭の中で声がするぞ。さては宇宙人か?」

「ピンポーン」

「あのなぁ。ハモルな。何の用じゃ。」

「キミノモツ蘭ハタイヘンスバラシイ。ワレワレモ蘭好キナノダ。交配種スキデス。ゼンブクレ」

「えー、マジ?。高かったんだぞ」

「タダトイウワケデハナイ。ナニカホシイモノハナイカ?」

「そお?。へへへ、じゃあ白金ください。10kgぐらい(1g4700円もすんねんで)」

「ソンナ安イ金属デヨケレバココニオイテユコウ。ジャ、蘭ハモラッテユクヨ」

「ヘヘヘ、まいどあり」

「後日、確かに白金ですが、放射能がつよくて売り物になりませんな」

「夜光るんでいやな予感はしましたねえ」

「あぶないからよそのおじちゃんからへんなものもらっちゃだめですよ」

「よそのおじちゃんかい」

 

「架空請求ってのもひどいねえ」

「あんた、蘭みたでしょう。サイトの見物料27000円払ってくださいよぉ」

「無料ってかいてあったじゃないか。花みただけだよ」

「バルブは無料だけど花は有料って書いてあったでしょ。払ってくれないなら法的措置をとりますよ」

「そういう不良サイトはないねえ。気を付けてください」

 

「飲酒運転も最近取締りが厳しくなってますねえ」

「飲酒運転する人あほちゃいますかねえ。のるなっちゅうてんのに」

「検問です。開けてください」

「いやです」

「何でイヤなんですか」

「蘭があるからです」

「飲んでるんでしょ」

「飲んでません。外気で蘭が傷むからです」

「警察だ、開けろ」

「ここは警察じゃないよぉ」

「ああ、てめえそんな懐かしいいちびりかましやがって。やっぱりのんでるな」

「やべ」

 

「強盗こわいですね」

「蘭をだせ、とかいってめだし帽をかぶった男が包丁もって入ってくる」

「そんなやつおるかい」

「おい、てめえかしょーもない蘭ホームページで自慢しやがって。V. Sansai Blue をよこせぇ」

「しょーもないいうといてわしの蘭が欲しいんかい。けったいなやっちゃなあ。2000円そこらの蘭で監獄入れられたらあわんやろうに」

「うるせー、おれはもうどうなってもええんや」

「でも水やりはちゃんとしろよな」

「肥料どうやんの」

「以下仲良く蘭談義、トレイいっぱいのお土産つきでかえってゆくというパターンか」

 

「ほんと犯罪多いねえ。江戸時代とかこんなにいろいろないでしょうに」

「島原の乱から幕末まで200年くらい戦争はなくて、間に忠臣蔵みたいな事件がありましたな」

「皇族の皆様をお招きして盛大に開催された江戸城蘭展で、実行指導役のキラさんが実行委員長のアサノさんとこのデンドロを「肥料がもう少しあればもっと大きくなったんちゃいます」いうたら「お前の栽培技術はそこまでか。この田舎侍」といわれたように感じたアサノさんが逆上して鉢で頭をどついて「殿中でござる」とカジカワさんがとめたとかいうあれ?」

「うそをいうな、うそを」

「将軍様に温室を差し押さえられ、播磨蘭友会まで除籍されてしもうて、永蟄居。城下の家臣が見るに見かねてキラさんとこの温室襲って蘭を強奪したという江戸期最大のテロ事件。なんか平和やねえ」

「う・そ・で・すっ」

 

「最近変な電話よくかかってきますよねえ」

「お宅のご主人ねえ、うちのパフィオの花茎おっちゃたんですよぉ。どうしてくれるんですぅ。FCC株ですよ。蘭展の直前だっていうのに、どうしてくれるんですか」

「な、なんのことでしょうか」

「いま警察の人と代わりますから」

「神奈川県警巡査部長の小林といいます。お宅のご主人が蘭園で高価な植物をだめにしてしまったそうです。器物損壊で逮捕ということですが、持ち主が弁償してくれるならというものでここで待機しているわけです。ご主人にかわります」

「あうううううううううう、すまん、ゆるしてくれ、たのむすぐに50万円振り込んでくれ」

「なんなの、ねえ。パフィオってなに?なんで植物が50万円もすんの?」

「払えないのだったら警察に引き渡しますからね。あとで高い保釈金でも積んでください。あの株は期待していたんだ。よくもやってくれたな。今度こそ賞がとれそうだったのにぃ。」

「あなたー、変な電話かかってんのよ」

「がちゃ、つー、つー」

「もうええわ」

 

 

2005年

1月24日

デンドロ・岩国の画像をトップページに持ってきた。実質これが今年最初の画像である。2005年1月14日開花し、本日大変豪華に咲いたのでトップページの写真を撮り、かねて約束していた人に差し上げた。今年6株目の譲渡である。

これらの譲渡は「飽きたからあげる」というものではなくて、「大変よく咲くようになり、大好きな株だけれど、それだけにランを好きになってくれる人に譲ろう」という趣旨のもとに送り出している。このような株は先方で活き、残った株もより光を得て活きるのである。先方も、私も、送ったランも、残ったランもそれぞれに利得があるように思われる。

「くさいやっちゃなー」

「出たな悪魔。待ってました漫才の時間てか?」

「おれさまはおまえの悪心じゃあ、ちゅうか、なにをかっこうつけとんのやおどれは。ほんまは飽きとるんやろ。ほんまのこというてみさらせ」

「そないなことないで。大枚はたいてこうたランやさかい、大事に育てて大きゅうしたんやで。ええ花さいたら大事にしてもらえるやないか」

「くさい、あんたはくさい。ぷんぷんにおいよるで。なんぞたくらんどるやろ。はけぇこらぁ。」

「品がないなあ。まあ、まんざらたくらんどらんこともないが」

「世界征服やな」

「なんでやねん」

「仁徳のないやつらばっかりの世の中や。世間は徳のある人間に飢えとる。そこへもってきて徹底してええ格好さらしとる人間はなかなかでてこん。ホームページで名前売って政界に出たろう思うとるやろ。腹黒いやっちゃ」

「おもろいことかんがえとるなあ。それええなあ。でもまあほんまのところランをもらってもろうたらスペースが空いてまたランを買えるやないか」

「あほか。買うたランを咲かせて人にやってまたランかうんかい。なにがしたいんじゃおまえは」

「データがほしいんや。育ててみればいろいろわかることがあるやないか」

「データ、でーた、花が出た。おめでたいやっちゃ。でもまあそないなことしとったらかすばっかのこらへんのん?」

「そおなんよぉ。咲かないランが結構あるのよねえ。痛いとこつくじゃない」

「いきなりおねえにならんといて。さむいぼたつさかい」

「咲かないとだせないからそういうところはちょっとつらい。まあ咲かぬなら咲くまでまとう、ちゅうことで」

「咲かんもんくうてしまえ」

「無茶言うな」

「月下美人くうたやないか。バルブ焼きとか、バルブ田楽とか、ぬるぬるしてうまそうやで。くうてしまえば無駄にならん」

「カイガラムシついとったらいややなあ。スプラサイドかけたりしたし。あんたわてが料理したらくうか?」

「いらんわい。まあそれにしてもえらい中毒ですな。ランなんかやるもんやないね。あんたはそういう害毒をまきちらしとるわけやね」

「いうたな。人をコナカイガラムシみたいに。ううう。ここで3句s」

「うわ、でた。でも、なんでやねん」

やせバルブ まけるなkojimaここにあり

贈っても 贈っても増えるラン

咲くランや どぼんとはまる 音がする

「うわ、kojimaあんた最近調子悪いなあ」

「ほっとけ」 

 

2004年

11月2日(火)

蘭は見ていた

小島は京浜東北線蕨駅を降りて東に向かった。(川口はなにかと推理小説にでてくる土地柄だなあ、宮部みゆきの「火車」は面白かった)、などと思いつつ改札を通った。事件で呼び出されてこちらにまわるように指示を受けていた。埼玉県警に配属される以前にこの付近に住んでいたことがあるので土地鑑はある。ほどなく住宅街にある古びた平屋にたどり着いた。

関係者の車が見え、無線で報告を入れる同僚の後ろ姿が見える。

「第一発見者は菅谷平三、69歳、隣の住人です。死人は吉田富子、67歳、頭部から軽い出血が見られますが、これは致命傷ではないようです。普段から心臓を患っていたそうで、発作の線が濃厚です」

その菅谷氏と話をしている若い同僚の顔が見えた。玄関をくぐり現場を見る。すると思いかけないものが目に入った。

「フラグミペジウム・コーダツムだ」と思った瞬間洪水のような思念と映像が流れ込んできて小島は思わずたじろいだ。(またか…)

「小島さん、どうしました。顔色が悪いようですが」

「気が小さいもので、ガイシャをみたら驚いてしまって」とうめくようにいいつつ、ほんとうは死人をまだ見ていないことに気がついた。目線を下に落とすと、リビングとおぼしき部屋の絨毯には小柄な婦人が目を見開いた驚愕の表情をはりつかせている顔を天上に向け、転がっていた。

「ガイシャではなくてどうも心臓発作か何かのように見えるね。隣のじいさんが庭から窓越しにみつけたとき額からでている血をみて「人殺しだ!」て通報したらしいけど。鍵はかかってるし、争った形跡もない」

「額の傷はこのパフィオペディラムの鉢が棚から落ちてきて当たって出来たものでしょう」

パフィオペディラム?、ああ、この植物の名前か。変な植物だなあ。蘭とか言うものですか。食虫植物みたいな花だな。いや、人面草か。目があって鼻があって口があって。部屋中こんなやつがいますが」

「好きだったんでしょう。ガイシャが。」

「コロシに見えますか」

「ええ、まだ説明は出来ませんがそのようです」

部署違いの同僚で、ベテラン刑事田端治は小島をいぶかしむように見ていた。小島刑事には変な噂がある。机の上に蘭の鉢を置き、普段は昼行灯のようでいるのだが、恐ろしいばかりの地獄耳で時々困難な事件をあっと驚くようなところから証拠をみつけてきて解決してしまう、というものだった。

小島はまた死人を一瞥した。(かわいそうに。死人はあまり多くを語らない。だが…)。視線を一人暮らしの老人が住む日当たりのよい茶の間にめぐらせてみる。庭に面して棚があり、多くの蘭、大半がパフィオペディラムやフラグミペジウムといった鉢が並んでいた。フラグミペジウム・コータツムが部屋の中央のテーブルの上にあるひときわ大きい鉢に吹き上がるように生え、長い髪を垂らした老婆のような花を多く付けている。その花の視線が小島を注視しているようだ。小島の視線が促されるように床に向かう。薬を入れた袋が落ちていた。

「心臓発作をおこしたらしいガイシャはこの薬を飲んだ…。だが、薬は心臓発作の薬ではなかった…」

このつぶやきに部屋にいた警察関係者は手を止め小島の方に目を向けた。

「なんだって…」田端が近寄り、手袋をした手で薬の袋を持ち上げた。中には包装を切られていない錠剤と、使い切った錠剤の入れ物があった。

「錠剤の入れ物が微妙に違うでしょう」

プラスチックと銀紙で出来たそれを見ていた田端は形こそ似ているが識別番号が書かれていない空の容器をみてうなった。

「小島さん、薬にくわしいんですか?」

「ええ、まあ」

そこへ人がやってくる気配がした。40代の女性と老人、同僚の刑事だった。

「お義母さん!」といって入ってきたが、捜査のじゃまにならないように側には寄らず身を小さくしている。まるで死者を恐れているようだ。

「吉田信子さんです。仏の息子さんの嫁さんで、息子さんはタイへ単身赴任中だそうで、こちらには明日もどるとのことです」と同僚がささやく。

「義母はどうしたんでしょうか」

「まだわかりませんが、どうも心臓発作をおこされたようです」

「そうですか」、と言った吉田信子の表情にかすかな安堵の色がみえたと小島は確信した。ひらりと信子の前に体を滑り込ませると、鋭い目で女の視線をとらえ、よく通る声で言った。

「貴方が殺したんですね」

「え!?」女の表情が険しい驚愕に変る。

「小島…」と田端刑事が止める間もなく小島は畳みかけた。

「貴方は、被害者の服用する心臓発作の際に飲む薬をすり替えた。発作が起きたときそのすり替えられた薬はもちろん効かず、吉田富子さんは亡くなってしまったんです」

「そ、そんなことしていません、何を証拠にそんな」

「いまから一週間前の午後7時ごろ貴方はどこにいましたか」同僚の刑事が顔を見合わせる。信子は目を見開いた。

「貴方は被害者を観劇にやり、ここに合い鍵ではいりこんで薬をビタミン剤にすり替えた。帰りがけあなたは隣の菅谷さんと出会っている。老人はあれは吉田さんの嫁さんでは、と思ったことを記憶しているはずだ。そうでしょう、菅谷さん。吉田さんが劇を見に行った晩、黒い帽子にサングラスをかけたこの人と会いませんでしたか」

「ああ、そういえばこのひとだったような。何しろ暗くてよく分からなかったのだけれど。でもなんでそんなことを…」

「それから貴方は昨夜8時17分頃自宅近くの公衆電話から吉田富子さんに電話をかけていますね。息子さんがタイで事故に遭われて重傷だとかいう内容で」

信子は蒼白である。「なんで私がそんなことをしなくちゃなんないんですか…」と絞り出すように言った。

「言っていいんですか?。いいんですね」小島はおもむろに被害者の亭主を祭った仏壇の引き出しをあけ、茶色の封筒を取り出した。一同なぜそれを小島が迷いもなく取り出してきたのかいぶかる。小島はよどみなく言った。

「これは富子さんが息子さんである隆さんの留守中貴方の素行調査をした興信所の報告書です。富子さんは同居に応じてくれない貴方の瑕瑾を探していた。調査結果はおどろくべきものでした。富子さんはこの報告書の内容を貴方にほのめかした。富子さんは息子さんが悲しむことをおそれ貴方に、貴方の浮気相手伊東和宏氏と別れることを迫った。だが、貴方は富子さんがこの内容を隆さんにしらせて離婚に追い込まれることを恐れ、富子さんを殺害した。違いますか」

信子は観念したようにその場にがっくりと腰を落とし、うずくまり号泣して言った。「ゆるしてください。わたしがやりましたぁ」。テーブルの上や棚の上から蘭が女を取り囲むようにしてひややかな視線を送って見下ろしていた。部屋にいた警察関係者はあまりのことの成り行きに呆然としていた。

 

捜査2課を1課の田端が訪れていた。裏付け捜査の結果を小島に知らせるため、それに腑に落ちない点をただすために。

「吉田信子の供述通り自宅から犯行に使われたビタミン剤がみつかり、ガイシャの胃の内容物と成分と一致したそうだ。かつて見た薬の番号をひかえていたんだな。いまじゃネットで検索すれば薬のことはわかるし、よく似たビタミン剤も簡単に手に入れることが出来た。服用量の2錠だけのこしておけば貧乏性世代の富子は少ないものを飲むから証拠は消える。まさか心臓発作で薬がすり替えられていたと気がつく人間はいないはずだった。あやまってビタミン剤を飲んだのだとしらばっくれればいいものを小島さんに畳みかけられてパニックになり、つい観念して吐いちまったんだな。あの女の自白がなければどうにもならなかった。そういう意味では綱渡りだったね」

「ええ、そうです」小島は冷めたインスタントコーヒーをすすりながら言った。視線は机の上で誇らしげに咲いているカトレアを見ていた。

「息子さんの事故というのは乗っていたタクシーが追突されたくらいでたいしたことはなかったそうだが、この知らせを亭主の会社から受け取ってすぐ近くの公衆電話から電話をしたんだな。これを運良く近所の人が目撃していて、家の近くの公衆電話から電話をかけている信子を不審に思って記憶していたそうだ。大げさに言って姑が死ねばめっけもの、そうならなくても聞き間違えましたととぼければいいと軽く考えてガイシャにウソの電話をしたらしい。ところがこれが大当たりだったんだ。筋書きはりっぱだったが、肝心の本人の腰が据わってなかったな。お嬢様育ちが災いしたんだろ。

信子の浮気相手も共犯と思われたらこまるって震え上がってべらべらしゃべってくれたねえ。信子が日頃から富子の殺害をほのめかす言動があったと証言している。「あのばばあが死んでしまううまい手はないか」ってね。いたずらのつもりでも結果は人殺しになってしまった。殺意も、証拠も、目撃証言もあるので立件できるだろう」と同僚の田端刑事は言った。

「殺された吉田富子は信子に孫が出来ないことや、同居してくれないことがさみしかったんですね」

「かたや信子は遊び好きで、資産家の奥様の生活を手放すのがこわかったんだろう。それにしてもだれか側で見てなけりゃあんな情報はとれないだろう。どうやったんだ?」田端は小島の横顔をのぞき込むように言った。小島は田端を振り返って言った。

「実は以前近所に住んでいたことがあって、吉田富子さんや菅谷さんとは顔見知りだったんですよ。玄関先で咲いていたシンビジウムを眺めていた私に声をかけてくれましてね。私の好きな蘭の話が縁で、育てている蘭を見せてもらったり、育て方を教えてもらったりしてね。その間嫁の悪口とかいろいろきいていたのでピンときたんですよ。」

「なんだそうか。じゃあ事前に菅谷氏から連絡があったんだな。でも電話をかけた時間は?」

「すぐに通話記録を調べて置いたんでね。時間をきっかりいわれると、犯人にはなにもかもお見通しだとおもうわけで、はったりをかけたわけです」

「はったりで押し倒したのか。無茶をするなあ。でもなんで興信所の封筒が、ああ、菅谷氏がしっていたわけか」

「いや、田舎の母が大事なものは仏壇に入れるくせがあったもんでね。私は人の家になにがあるか不思議に分かるんですよ」

「泥棒の才能がある奴がいい刑事になるということか」田端刑事は大声で笑った。小島は苦笑いを返した。笑いながらしかし田端にはなにか釈然としないものが残った。

 

数日後小島は再び川口を訪れた。

「菅谷さん」

「ああ、刑事さん。その節はどうも。ひさしぶりにあったら刑事さんだったんでびっくりしました」

「こちらこそいろいろありがとうございました。よい隣人を亡くされてお気の毒です」

「花の好きな気だてのいい人でしたが、息子さんと離れて暮らすのを寂しがってましたね。あの犯人が潔癖性で、こんな風にこけずるずるの蘭の鉢を家に入れるのがどうにもだめだったそうですよ」

「そうだったんですか…」土の付いたものをさわる機会がないお嬢さん育ちだけれど、ずいぶん遊んできたという吉田信子の顔が浮かぶ。「それで、その蘭は菅谷さんが育てているんですね」

「ええ、息子さんにお願いして形見にいただきました。彼女のおかげで私まではまってしまいましてね」

「フラグミペジウム・コーダタムですね。立派な株だ。ちょっとおしゃべりなのがたまに傷だけど。ああ、このパフィオはいい花ですね」小島は仏の側に転がっていたパフィオペディラムの鉢を手に取った「この子はまだ咲いてるんですか。我々に知らせようとして決死のダイビングだったのかも知れない」

「え?」

「菅谷さん、悩んでないで医者に行った方がいい。いまならまだ間に合う、ってこいつが言っています」、そう言って鉢を驚愕する老人に手渡し小島は去っていった。

つづく

 

 

7月20日(火)「ご蘭行」

「バスを降りて近所の小川のそばに来るとどぼんというかわずの音に毎晩びびっているkojimaです。それではお話させていただきます。

蘭といいますとなにやら心が通うような植物だとおもって育てておられる方もおおいんちゃいますやろうか。じっとみておりますと、なんやしゃべりかけてきそうなやつもおりますなぁ。今夜はそういう蘭に心が通いすぎたご隠居の話をいたしましょう。

どぶ池に忠吉はんちゅううでのえぇ大工はんがすんどりまして、この忠吉はんよめはんにあたまがあがりまへんどした。よめはんの用事で近所のご隠居はんのところをたずねてまいりました。

(扇子で台をたたきながら)ご隠居はん、ご隠居はん、どぶ池の大工の忠吉でおます。朝もはよからえらいすんまへん。

ああ、あいとるさかいに入ってきなはれ。

うわ、なんやようけけったいな草がそこたしじゅうに。

どないしてん

よめはんがこの鉢をよわらせましてん、ご隠居さんが詳しい言うとりまして、みてもらいにきましてん。

ほうほう、どれどれみせてみぃ。・・・ははーん。セッコクやな。肥料のやりすぎで根腐れしてけつかる。

しゃんとしますやろか。

これああんさんのおかあはんの庭木にあったやつをわけたもんやな。

ようわかりますなあ。よめはんからなんぞ話がとおってるんでっか。

まてまて、あんさんのおかあはんもごうやなあ。これ枯らしたら嫁いびりのねたにしたろうおもうててぐすね引いてはるなあ。

なんでそんなことまでわかるんでっか。気味悪いなあ。あのばばあならやりかねんけえど。そういえば嫁はんがご隠居さん蘭のいうことがわかるいうてたけえど、まさかねえ。

そのまさかや。

うそや。そんなやつおらへん。

信用しとらんな、まあむりもない。これを見てみい。

なんとけったいな草や。根っこがぶらーんとして天井からぶらさがっとる。

これはおまえはんがもってきた鉢の仲間で、蘭の一種や。

これが蘭でっか。蘭ちゅうとこれを煎じて飲めば一晩中あちゃらのほうが元気になれるちゅうあれでっか。

あほなことぬかすな。胃の薬がせいぜいじゃ。この蘭はなあ、遠くシャムから来たヒスイ蘭ちゅうて青うてごっつうきれいな花が咲くんや。

シャムちゅうとワシントン条約、もとい公儀のご禁制にふれしまへんの。

ぎく。ま、まあバテレンやないさかいにそのへんはええのや。ええか、この蘭はシャムの王さんのところにあった蘭やで。そこでつるっぱげのええ男の王さんがおってな、そこんとこのガキおしえにえげれすのきれいな姉ちゃんがやってきて、王さんとラブラブになるねん。

何の話や。つるっぱげのええ男の王さん?。らぶらぶやて。ご隠居さん品がないなあ。またそないなみてきたようなウソを。だれに聞きはったんでっか。

蘭がしゃべるのや。

えええ、またまた。ほたらうちとこのこの鉢にあてのへそくりどこに隠しとるかきいてくんなはれ。

おくどはんの灰の下に銭いれたかめがうまってる言うてるでぇ。

げぇっ!

なんや、盗賊が長谷川平蔵におうたような声だしてからに。

ようわかりましたなぁ。きみわるぅ。・・・ほたらついでにききまっけど、嫁はんのへそくりは・・・?

あんさんのかめからちょいちょいつこうてはる。

げぇっ!、あんのあまあ。こんど岡場所のアケミとしっぽりいったろうおもうて貯めた銭を。

そらそうとご隠居はん、なんでそう見てきたようにわかりますのん?

蘭をながねんそだててるとなぁ。なんやこう気持ちが通じるようになってなあ、蘭がみたもんやきいたもんがみえるようになってしもたんや。

そないなこというてほんまは公儀の隠密とちゃいますのん?うちの女狐は尊王派のくのいちちゅうんやあらしまへんやろね。

まあ、なんとでもぬかせ。

そらそうと、そういう便利なご隠居にちょっとおねがいがあるんでっけど。

なんやねん、便利やなんぞ人を便所のたわしみたいにぬかして。

いや、その嫁はんなんですが、なんやこう、浮気でもしとるんやないかおもいましてん。

浮気男でとおってる忠吉はんが、かみさんの浮気の心配かい。勝手ぬかしよんねん。

家に帰ると嫁はんがなんやそわそわして、かすかに男のにおいがしますねん。

そりゃおだやかやないなあ。

ご隠居、えらいにやにやしてはるけどまさかほんまにうちのやつに・・・

岡引の股三やな。

げぇっ!、あんのあまあ。よりにもよってあんなぶ男を。

まあ聞け。あんさんのよめはんなあ。あんさんのかめをどんと股三の前において。

かめを?

これでうちの亭主の浮気の現場をおさえてくんなはれ、ときたもんよ。蘭だけにごラン行がすぎましたな。

おあとがよろしいようで。

 

7月13日(火)「どうころんでも園芸」

「突然ですが『どうころんでも園芸』のお時間がやってまいりました。司会のヨシコでーす」

「え?掲示板の?」

「ちゃいますよぉ。実在の人物・団体とは一切関係ありません」

「まあええですけど『どうころんでも演芸』ですかい。ほなわてはボケでいきまっさ」

「漫才ちゃいます。園芸です。センセ、今日は蘭についておしえてください」

「なんやけったいな。ばくっとしてまあ、蘭やて。ほなノコギリ、角材、おしいれすのこ、木ねじを用意してください」

「なんでいきなり『趣味の日曜大工』になるんですか」

「ちょっと気ぃがはやいんですが、蘭の棚つくりまひょ。これがないと『ちょっとそのきちゃない鉢そんなところにおかんといて、たのむわ』ちゅうてかあちゃんにおこられますなぁ。せっかく咲いた蘭の置き場にこまるんですわ。冬にも50鉢をしっかり日に当てられるようにしたいですなぁ」

「なるほど・・・」

「スチール製の棚はなんや重いし、冷えるし、高い。そんで1つ2000円以下でこしらえた安普請の棚をこさえてみまひょ。」

「寸法はどないしはるんですか」

「角材のまあおっさんの手にちょっとあまるくらいのを4本こうてきますね。そのうち1本を棚を置きたい場所に立てる」

「はあ」

「そんで、まあこんくらいの高さ、というところで線を引いて、あとは4本この線に沿ってのこぎりで切る」

「えらいええかげんですねえ」

「最近のノコギリはようきれますねえ。1000円しませんがええストレス解消になりまっせ。さて、この押入れすのこの幅に角材2本の太さを足したくらいをまた角材あてて計る。これは横木やね。2本切り出します。この厚さ1cmくらい、幅4cmくらいの板棒もその横木と同じ長さ切り出します。あとすのこのたて幅と角材2本の寸法分だけ板棒から10本切り出します。あとは木ねじで組み上げるだけ」

「そんなん聞いてわかります?」

「やってみればでける」

「なるほどえらいはやくできましたが、なんやふにゃふにゃしたつくりですねえ」

「4階建てにしてすのこの幅が冬場まんべんなく日が当たるのに偶然ちょうどよくでけてます。キャスターをつけると軽やかに移動できまっせ」

「なんとええかげんですがちゃんと役にたっとるんですねえ」

7月8日(木)「月下美人パスタ

昨日食した月下美人パスタがえらく効いたのか肩こりやらぐったり感がなくなり、暑さをものともしない爽快な一日であった。さすがは高級食材。でもまあ気のせいだろうなあ。

「アリベデルチー。みなさん今晩は。はいそれでは月下美人パスタの作り方デス。パスタは1.4mmのものが今回はいいですねえ。なべにたっぷり水を張って塩を入れます。海のしょっぱさです。4Lに大さじ5杯という感じでしょうね。火にかけて沸騰するまで待ちましょう。ではフライパンにオリーブオイルを張ります。たっぷり入れてください。オリーブオイルは体にいいんです。「生活習慣病を防ぐ」岩波新書でもオリーブオイルはお勧めでした。20mlは使ってください。にんにく2かけを包丁の腹でぐっと力を入れてつぶしてください。さっとみじん切りにします。月下美人の花は花の根元、葉の付け根付近で切りましょう。昨夜は大変きれいに咲いていました。香りもすばらしかったですね。でも今夜はおかずになります。一人前に贅沢に1つ使いましょう。結構分量がありますね。どこにも売っていないちょっと手に入らないお野菜ですね。切り口がぬめぬめして体によさそうです。これをさっと洗ってさくさくさくと切ります。オクラみたいですよ。オリーブオイルを加熱してにんにくのみじん切りを入れます。焦がしちゃだめ、狐色にしてもだめ。さっと火が通ったころにお花を加えましょう。さっと油に絡める。なんだか全体がねっとりしてきました。今日はぶなシメジをあえて見ましょう。好みでシーチキンやオイルサーディンを入れるのもいいです。おっとおなべが沸騰しています。ここでパスタを入れてさっとかき混ぜておきます。きのこに火が通ったらいったん火を止めてパスタを見ましょう。時々1本ずつぬいてかじってみる。まだシンがあります。このシンがなくなる直前、パスタはアルデンテがいちばんですね。ゆですぎパスタはマっマミヤ!(なんてこった)ですよ。さあゆであがりました。さっとざるにあげて湯を切り、フライパンに入れ、具とオイルを十分に絡めましょう。もう出来上がりです。お皿にもっていただきます。うーん、ヴォーノ。皆さんもおためしあれ。チャオー」

こうやって食える蘭はないのか、と思う。ぬめぬめ感では蘭もけっこうなものである。しかしバルブは恐れ多くて食べられない。今度たくさん生えているシランの根をくってみたい。

7月4日(日)公演原稿

司会者「それではお時間となりましたので、本日の公演「うまみいっぱいの園芸」をはじめたいと思います。公演者の紹介を申し上げます。kojimaさんです。kojimaさんは園芸研究家、もとい・・・どこにでもおるそこいらのおっさんです。それではkojimaさん、ご公演のほうをよろしくおねがいいたします。

kojima「えー、ただいまご紹介いただきましたどこにでもおるそこいらのおっさんのkojimaでございます。」

司会者「ほんま、しょーもないおっさんですわ」

kojima「じゃがあしいわ、ぼけぇ。・・・失礼いたしました。本日はどうもわたくしのしょーもない話を聴きにお集まりくださりありがとうございました。

うまみいっぱいの園芸、といいましても昆布やしいたけをつくる園芸ではありません。うまみの正体は昆布のグルタミン酸や煮干のイノシン酸、しいたけのグアニル酸などで、これらのうまみ成分をあわせもった野菜を作る話でもありません。ではなにか。

ここにお集まりの皆さんは私同様ある程度園芸の楽しみを知っておられる方々だと私は思っているわけです。園芸は楽しいから皆さんは植物を育てておられるわけです。大輪の花が咲いてかぐわしい香りを胸いっぱいに吸い込む瞬間がありますねえ。小さなかわいい花を家事の合間に目にして安らぐこともあります。ボーっと見ている葉に光が反射してそのつややかさにおどろくことだってあるでしょう。けれど楽しみもあれば重いプランターを持ち上げて腰をいわした方もおられるでしょう。固い地面を耕して手に豆をすることもあります。せっかくできたつぼみを害虫に食べられることもありますね。毎年咲くと言われて楽しみにしていた球根が植木鉢の中でとろけていることだってあります。苦あれば楽あり、それもまた園芸というもではないでしょうか。

しかし今日紹介するのはその楽しみの部分は濃く、おどろきの開花、かぐわしいさまざまな香り、世界中から集められた奇妙な植物コレクション、年中途切れず咲きつづける目くるめくさまざまな花の開花、根や芽のダイナミックな動きとスリリングな展開で飽きさせない、そんなうまみの多い園芸があるんです。それらは皆さんが普段目にしているのですが、これに触っていない人々にはほとんど知られていない園芸なのです。それは何でしょうか・・・。

それは「蘭」です。

おや、「なーんだ」という顔をなさっている方がおられますね。無理もないと思います。蘭はみなさんが考えておられるように少々むずかしい、温室か設備が必要、世話が大変、値段が高い、すぐ枯れる弱い植物、という認識がこれまでもたれてきました。しかしあえて申し上げましょう。それは間違いです。

蘭は難しいでしょうか。私が単身赴任中の夏の間4ヶ月間4つになる息子に世話を頼んでいたカトレアは冬に40日間咲いてくれました。私にとってははじめて咲いてくれたカトレアでした。基本を守れば誰にだってすばらしい花を長期間楽しむことができるのです。

蘭は温室が必要でしょうか。我が家の蘭は冬場一戸建てリビングで、夏は庭でそだって途切れずに花を咲かせてくれています。

蘭の世話は大変でしょうか。雨がよく降った昨年は夏の間水遣りをしたのが3回で、ほとんど1ヶ月以上ほったらかしだったことがあります。冬は乾いたら水をやるので週一回みるだけ、という鉢も多くありました。

蘭は値段が高いでしょうか。高いものもあります。けれど見慣れてくると花の終わったものなどが300円という値段で売られていることもあります。コンテストですばらしい賞をとった蘭が300円で手に入りすばらしい花を一ヶ月間みせてくれることもたびたびです。ほとんどが1000円以下で手に入れることができて何度でも咲いてくれます。

蘭はすぐ枯れる弱い植物と思われている方もおられるでしょう。ほとんどが熱帯の植物です。けれど日本の植物を家の中に入れて育てるとたちまち調子を崩してしまいますが、熱帯の蘭の多くは家の中で半年以上咲いてくれるようなものや、元気に生育するものが多いのです。家の中、職場の机の上で、根を出し、葉を出し、花を咲かせてくれるのです。それをライブで見ることができるのです。先ほども申しましたように、基本を押さえればよく育ってめったに枯れず、長生きの実に強い植物なのです。160年以上生育を続けているカトレアも知られています。

蘭の魅力は何でしょうか。胡蝶蘭を「紙みたいな花」と思っておられる方はいませんか。私もそう思っていました。ホテルのロビーなどで花をそろえて咲いている姿は豪華ですが、どこかよそよそしい雰囲気がありますね。けれどこれが目の前で花茎を出し、つぼみを出して咲いてくれた花は輝くような生命感にあふれています。

蘭のすばらしい点のひとつはそういう素敵な花が長い期間人が暮らしている場所、働いている場所で、手を伸ばせば触れるところ、鼻先というどこまでも人に近い場所でずっと咲いてくれるということなのです。職場のスリムタイプのパソコンの上にデンファレという蘭を育てていたことがあります。その花は78日間咲いていて、大きなオフィスで自分の机がどこか、遠くのほうから私に知らせてくれていました。これで弱るかといえば、翌年はもっと多くの、より大きな花を咲かせてくれました。これは切花や通常の鉢花では困難な芸当です。カトレアは職場で長いこと咲いてくれます。1つの花が57日間咲いてくれました。途中でへたるわけでもなく、最後の日までしっかりしたきれいな花でした。

蘭の開花期間が長く、またつぎつぎと咲いてくれるため一年中切れ目なく蘭の花が咲きつづけてくれ、現在では1052日間連続で咲いてくれています。買ってきた花で間をつないでいるというずるはしていませんよ。また、3日に1鉢の割合で咲いてくれるようになりました。

そんなに蘭が咲くということはたくさんの株を持っているからではないかと思われたことでしょう。現在は240株の蘭を持っています。すごい数かもしれません。1年中蘭が咲き始めたころは100鉢ほど持っていました。100鉢の蘭は屋内でも屋外でも畳一枚分の面積が必要です。考えようによっては少ない面積ではないでしょうか。選び抜いた50鉢があれば、すばらしい花を年中楽しむことができると請合ってもいいですよ。

蘭の素敵な点は花の種類が豊富で、色彩も大きさもさまざまなので好みに合った花がかならず見つかるでしょう。花は、雪のように白いもの、青空のような青い蘭、真っ黒に近いもの、夕日のように赤いものや、実に渋い微妙な色合いをしたものなどさまざまです。

蘭の香りを忘れてはいけません。皆さんはフウランの香りをかいだことがおありでしょうか。私も37歳まで知りませんでした。甘く、おいしそうな、えもいえず素敵な香りがします。この蘭が咲いたとき、日本人でいてこれほどすばらしい日本の蘭の香りをかがないのはもったいないことだと思いました。バニラは蘭だということをご存知でしょうか。そのバニラの香りを蘭の花に感じることがあります。種類によって変化に富み、実にさまざまなすばらしい香りを楽しむことができるのです。私がまだ知らないすばらしい香りがまだまだあるそうです。「サクマ式ドロップの香り」「カシスの香り」「バラの香り」「ココナッツミルクの香り」「化粧品みたいな匂い」。部屋いっぱいに香るものもあります。最近では香りを求めて蘭を買っている人もいるほどです。

ではこれから少しだけお勧めの蘭について紹介してまいりましょう。まず定番から参りましょう。

Den. Hamana Lake 皆さんもよくスーパーなどで見かけるデンドロビウムです。実はきっちり守らなければならない管理の鉄則があるんです。7月で肥料はきっぱりやめる。4月から屋外でよく日光に当てる。冬になったら水を控えて寒い目にあわせる。というところです。最近はそういう鉄則をあまり気にしなくてもよく花がつくこのハマナレイクのようなミニタイプが出回るようになりました。花が終わっていたので300円でした。

Den.’宮島’  この蘭はデンドロビウムの一種で、1つの花が連続で89日間咲いてくれ、株全体でも3ヶ月は咲く大変長く楽しめる蘭です。冬寒がるので室内の暖かいところにおく必要があります。8月に花の終わった3株を500円で買ってすぐに植え替えて育てたところ11月には花が咲いてくれました。育てやすく空振りの少ない素敵な蘭です。

Cym. Line Stone ‘Cute’  定番のシンビジウムです。花が終わると500円で売っていることもあります。この蘭は真冬にごみ捨て場に捨てられていたのを救出して翌年から毎年欠かさず開花してくれるシンビジウムです。もらって花が出なくてもてあまし気味のご家庭が多いようですが、適切な手入れをすれば大変素敵な花を見せてくれます。

Phal. Amanogawa x Grand City ‘Venus’ 胡蝶蘭は高いのですが、このビーナスのように寄せ植えからはずして株1つ400円で売られているような場合もあります。胡蝶蘭は3ヶ月くらい長く楽しめます。花がよくつくという点もいいんですよ。ただ、寒がりだったり、直射日光であっけなく枯れてしまうという生育のポイントに注意する必要があります。

Epi.「キャンディベル」 エピデンドラムもよく見かける蘭です。これを蘭だと思っていなかった人も多いのではないでしょうか。500円で咲いているのを買ってきた株はそれから半年も咲いてくれました。丈夫で長持ちです。少々水を多めに育てるようです。 

Onc. ?'Asahi'  オンシジウムという南米の木の上にひっついて生活している蘭です。ホームセンターでみかけた見切り品100円の株を育てています。1年経たずに大変美しい黄色の花をつけてくれました。

これらよく見かける蘭のほかに、蘭の育て方がある程度わかっておられる方はこれから示すような蘭に挑戦してほしいですね。

赤いカトレア 鮮やかな赤色がたまらないカトレアです。300円でした。育てるほどに環境になれて色と姿がよくなりました。つぎつぎ花が出て2ヶ月も咲いてくれました。画像をもういっちょう。カトレアは最近手に入りやすくなりました。

Paph. glaucophyllum  パフィオペディラムと言う蘭で、食虫植物だと思っている人が多いのではないでしょうか。虫は入るには入るのですが、受粉のためにやってくるだけです。園芸店で780円だったこの株は次々花を出して380日も咲いてくれました。これ1株でお部屋の中に一年中花があったわけです。

V. Sansai Blue    バンダといいます。青に大変近い紫色のものがあり、この花も大変美しい姿かたちをしています。年に2回咲いてくれるといううれしい性質があります。

ほかにもまだまだたくさん紹介したい美しい蘭、香りによい蘭、面白い蘭があるんですが、時間が限られておりますのでこのくらいにします。興味のある方は私のホームページをご覧ください。

さて、どうすればこのような蘭を身近におくことができるでしょうか。皆さんが難しいと感じておられる理由の第一は、情報の不足からきていると私は思います。入門書を買うのが早道です。また、私が創っているホームページなどを見ていただき、気に入った蘭をまず見つけるところからはじめていただければと思います。気にいった蘭について整えなければならないおおまかな環境や、特徴を頭に入れます。ほしいと思う蘭それぞれについての対応はいっぺんにやると大変かもしれませんが、大事なものから徐々に解決してゆけばいいと思います。ただ、夏に暑がる蘭は、こちらの気候では少々困難なようなので避けたほうが無難です。それ以外の多くの蘭、胡蝶蘭、カトレア、オンシジウム、シンビジウム、デンドロビウム、エピデンドラムというところは基本となる情報さえ押さえておけばよい花を見ることができます。

手に入れる方法ですが、まともに買うと高いです。ただ、花を見て気にいったものを買うという点ではいい方法です。とにかくやってみたいという人は入門書などの写真をみて株を見分けられるようになると花のない見切り品の蘭を見分けて買うことができるようになります。ホームセンターや園芸店の片隅に花の終わった蘭を安くおいている場合があります。なんとなくこの葉っぱは好き、という株を選んで育ててみてください。

温室なしで蘭を育てるのはさほど難しいことではありません。冬越しのための鉢の暖め方はいろいろあります。夜は発泡スチロールのケースに入れて少しでも暖かいところにおく、といった方法もあります。集合住宅は温度が保ちやすいので、夜はカーテンを引いておくだけで胡蝶蘭、バンダ、カトレア、デンドロビウムなどほか多くの蘭を十分栽培可能です。

蘭をはじめるにあたって障害となるのが植え付けです。買ってきた蘭は花が咲くまで育ててきたわけで、植え付けてから1年以上時間が経っています。植え込みにはミズゴケがよく使われています。このミズゴケはおよそ2年で劣化してしまいます。劣化すると蘭の根が腐りやすくなり、生育に障害が出てしまいます。蘭はミズゴケと素焼鉢で植える場合がおおいということを覚えておいてください。しかし、この植え替えをマスターすれば面白いほど蘭が咲いてくれます。素焼鉢は案外手に入れるのが難しいようですが、鉢底に2.5、3、または3.5と刻印されているものをよく使うので、これらを探して入手してみてください。

蘭のポイントの二点目は遮光ということがあります。わざわざ太陽の光を少なめにしてあてるわけです。これをしないと葉の温度が上がりすぎて葉の組織が破壊され、かなりダメージを受けてしまうということがあります。以前は遮光ネットが高くてレースのカーテンなどを使って失敗していたこともありましたが、最近では100円均一の店でも見かけるようになりました。

水遣りについては、私は水遣りが好きなのでついやりすぎてしまいます。植え込みの表面が乾いたらやる、ということを守れば大体うまくいきますが、これも種類によりますので指導書でポイントを押さえてください。

肥料や、冬越しのテクニックなどこまごましたことはまだ株を手にしていない皆さんには退屈なので割愛します。

最後にまとめとして申し上げます。皆さんのご家庭で、窓辺に幅90cm高さ180cm、奥行き35cm、4段の棚を材木と押入れすのこ4枚、木ねじで簡単に手作りすることができます。窓側と側面にビニールを張ってください。そこにはおよそ50株の蘭を置くことができます。毎日どれかしら芽や花芽、根を出してその活動を楽しむことができます。そして素敵な花、かわいい花、変な花、かぐわしい花を年中絶やさずに愛でることができるのです。ただし、50株は注意深く選んでください。蘭はあまりにも魅力的なのでくれぐれも増やしすぎにご注意ください。

私の雑駁な話でも蘭に興味を持っていただければありがたいです。園芸好きの皆さんが蘭を手にしてうまみの多い園芸をなさっていただければと願っております。以上で私の話は終わりです。」

司会者「みなさん、だまされたらあきまへんでぇ。蘭はコワイんですよ。このおっさんなんか蘭に入れ揚げてもうへろへろですねん。腹も出てるし」

kojima「うまみで、食べ過ぎて生活習慣病的な蘭栽培です。ほっとけ」

 

6月25日(金)「植え替え審査委員会

デンファレ「村上」が開き始めたがまだ色などはわからない。カトレア2株のつぼみはいよいよ開花である。

小島「それでは、6月の植え替え審査委員会を開催いたします。本日の議案は購入したレリオカトレア苗でプラポット植えのもの。同じく購入したブラソレリオカトレアバーク植え。花が終わったばかりのミルトニア。同じく花が終わったばかりのフォーミディブル。ミズゴケに指がずぶずぶはいるパフィオ。台風で庭に転がって犬に草履がわりにかじられていたシンビジウムです。

恒例の委員の先生方をご紹介を申し上げます。農林水産省花局蘭課課長でいらっしゃいます児島委員でございます。広島国際園芸大学付属植物園園長でいらっしゃいます、小嶋委員でございます。最後に英国アバディーン大学理学部生物学科教授でいらっしゃいますKojima委員でございます。

議事進行は独立行政法人新園芸技術総合開発機構蘭開発室小島が勤めさせていただきます。

それでは議案に従いまして購入したレリオカトレアでプラポット植えの植え替えついてご討議お願いいたします。」

小嶋「新芽がないけん待ちじゃないんかのう。出てくりゃあはあ新しい根がでて株全体がしゃんとしてきよるけぇどが新芽がにゃあのに植え替えちゃると根のダメージで株がよわるけんのう」

Kojima「But, It is ちょっとリスキーですねん。Becauseこうてきたばっかの鉢は変な植え方してあるコトアリマス。まあ温度がhighなのでリードでるまでほっといてええんちゃいますか」

児島「店の対応にもよるようです。本当に蘭のことを考えてプラポットでも最適の植え方をしている店はあります。仕入れてきたやつを置いて売っているばあい、あとで株が弱ってほぞをかむようなことがあり、消費者に迷惑がかかります。行政指導の対象です」

小島「まあ、なやましいところだけれど新芽が出てからでも遅くないと。秋でもいいのでしょうか」

小嶋「レリオカトレアは温室がのうても冬場新芽や根がよぉ活動しちょるもんがあるで、ある程度温度が保てりゃあ四季を選ばんと植え替えができるようじゃで新芽が出るまで少し待ちゃりんさいや」

小島「ではバーク植えのBlcはいかがでしょう」

Kojima「コレハ植えた人に『喝―ッ!』デス。ポットがでかくて株がぐらぐらです」

児島「新芽もあるし、むりにバークでなくても2周り小さい素焼鉢にミズゴケで植えればこんな風に支柱をたてなくてもぐらぐらすることはないし、よく育つでしょう」

小島「『喝―ッ!』ですか(^^;)。では2周り小さい素焼鉢にミズゴケで植えということで。それでは花が終わったばかりのミルトニアはいかがでしょうか」

小嶋「植え替えちゅうのは花が終わったけえいうてやるもんとちゃうけんのう。あくまで株の力を引き出すためにやるんか、このまんまじゃあ弱けえ株を弱らさんようにするためにするんよ。戦略と株の健康を考えにゃあいけんのじゃ。よぉ花後植え替えちょる記述をこの日誌でもみかけるけぇどがありゃあホンマは植え替えにゃあいけんもんを花に遠慮しちゃあ植え替えられんかったんで花後あわててやっちょるんやね。ふつう頭の中じゃあ、@鉢の外に出てきちょるけえこのまんまじゃ弱けえ植え替える、A出た新芽を見ながら、このまんまじゃかしいでおおきくなるけえ、これを傾けて植え替えてやれば姿よくすくすく育つ、Bコンポストが古うなって、新芽もあるけん、適期やし植え替える、C適切な植え付けじゃないけん植え替える、ちゅうた必要性や理由があるんじゃ。」

Kojima「ミルトニアを6月に植え替えるとはナニカンガエトンジャホンマニィ。大阪の夏は世界一暑いというじゃアーリマセンカ」

児島「植え替え法令第14条3項ミルトニアの植え替えにも「秋が至当」と記述されています」

小島「では秋ということで。同じく花が終わったばかりのフォーミディブルは」

小嶋「秋やね。いまやるとてきめん弱るけん。どっちもクール系ちゅうことを肝に銘じとかにゃあ」

小島「ではミズゴケに指がずぶずぶはいるパフィオはいかがでしょう」

Kojima「これも『喝―ッ!』じゃ。アホカイ。パフィオのコケ腐らしてどないすんじゃい」

小嶋、児島「喝―ッ!」

児島「近年小石植えの株が増加しており、生産者の統計でも80%が小石になっています。これは原材料の多くを輸入に頼るコケと違い、国内で調達できる、ということは実はまああまり関係なのですが、ようするに生産コスト、作業コストが安いためではないでしょうか。現に小石植えはさほど技術を要しないようです。ただ消費者の視点からは『パフィオの土』と銘打ったものがなく入手に難点があるようです。パフィオはすばらしい植物ですが、そのよさが一般にはまるっきり浸透していません。街頭アンケートの結果を見ても80%の人は食虫植物だと考えているようです」

小島「食われそう、と思って嫌っている人もいるそうですよ」

小嶋「この間小石植えを植え替えとったんじゃけど、ぼっけえ根ぐされしとるもんがあったのう。一見根腐れしにくそうじゃけんどもそれほどパフィオにええともおもえんのよ。ほいじゃけえ毎年植え替えてもミズゴケを使うたほうがええように思うんじゃけえどが、実際のところよぉわからん。むかあし小石の流行があって、ミズゴケになり、最近また小石がはやっちょるねえ」

小島「パフィオについては当機構でもあまり研究開発が進んでいるとはいいがたいのですが、方針としてほぼ毎年植え替えたほうがよいということで。コケが腐っているこの場合は植え替えて涼しいところで管理という方針で進めます。最後になりましたが『台風で庭に転がって犬に草履がわりにかじられていたシンビジウム』はいかがでしょう」

Kojima「Dogはオーキッドかじるのすっきゃでぇ」

児島「蘭の病害虫には実に多くのものが知られているわけですが、案外知られていないのが犬の害です。犬のいる家庭で蘭を育てている愛好家の実に80%が犬にバルブをかじられているわけです。その原因としては草履に似た歯ごたえが好まれているという研究結果があります」

Kojima「ニホンジンなんでも80%やねえ」

児島「ぎく」

小嶋「なんじゃいうても緊急事態じゃけえ植え替えて株を助けるしかないけんのう」

小島「以上で本日の議題はすべて終了いたしました。先生方ありがとうございました」

 

2月14日(土)「蘭法医

思うに大事なランのための病院というものはないのだなあ。担ぎ込めればたすかる蘭もあるだろうに。

「蘭法医の先生、助けてください、うちの蘭が…」

「どうしました。むっ、これはいけない。アシモフ、すぐに手術の用意だ」

「カシコマリマシタ」

「先生、助かりますでしょうか」

「難しいところですね。奥さん、それはそうと真冬に肥料はいけませんよ」

「ど、どうしてそれを」

「ポットに白くこびりついているものがありますね。かなり濃い液肥をもらっている。この蘭は少々寒いところにいて休眠状態のところに肥料をもらって根腐れ状態です」

「寒さにあわせるようなことをきいていたので玄関においていました。お花のあとにお礼の肥料と思ったもので」

「寒さにあわせるのは休眠させて花芽をつける場合です。御礼肥料を与える水仙のような植物もありますが、蘭は全般に花後肥料をするということではなく、新芽がすくすく伸びている間だけ与えます。こうなると植え替えが必要です。アシモフ、君はしびれやすいから下がっていなさい」

「ウッ、ワカリマシタ」

「根腐れになるとバルブや葉にしわがよったり葉が落ちてきたりします。はなはだしい場合はこの株のように全体がぐらぐらしてくるんですよ。おや、このコンポストはなんだ。ひょっとして「花と野菜の土」では?」

「だめなんですか?なんでもよく育つようなことが書いてあったんですが」

「蘭は木に根を張って張り付いているような種類のものが多くて、空気によく触れているんですね。土の中に植えられるととたんに窒息してしまうんですよ。まあかっさばいてみましょう。鉢底から指を突っ込むか、鉢をたたいてやると取れるのですが、こいつはころんとでてくる。ほーら、根っこはまっ茶色のずるずるですねえ。なめくじもいました」

「ひえええええ。た、たすけてくださいっ。こ、これは主人の義母からの頂き物なんです。これを枯らすと「またうちの嫁は料理も下手だし、やりくりも子育てもなっちゃいない。園芸は得意といっていたけれどほんと口ばっかりだわね」なんて親戚一堂の前でいわれてしまいますぅ」

「複雑なご事情がおありのようですね。ともあれ、この根っこはこうちょきちょきちょきと切ってしまう」

「ああ、そんなに根っこがなくても生きてゆけるのですか」

「バルブがまだ生きています。付け根に新芽の出るところがまだ生きている。ここから芽が出れば助かります。ですが花は2年はおあづけですね。植え付けは素焼鉢にミズゴケを固めにうえてください。1週間はうちの温室に入院です。その後は暖かい日当たりのよい場所を用意してください。夜は窓辺から離して、水は乾いたら鉢底からあふれるくらいにたっぷりと与えてください」

「はあ、そうですか。2年…」

「…。まあ気を落とさず。名札を見るにこの品種でしたら同じものがすぐ手に入りますよ」

「なんですって!それを早く言ってください。それください、それ…、ああ、でもだめだわ、あの義母をだませるわけがない」

「わかる人にはわかりますね」

数週間後

「先生、ありがとうございました。義母には「ちょとよわっているけれど、ちゃんと植え替えているじゃない。すぐ枯らすかと思ってたけど見直したわ」なんて言われました」

「そうですか、そりゃよかったですねえ」

 

2月11日(水)「水遣りロボット

近い将来家にサーバントロボットがやってきて蘭に水やりをしてくれるのではないであろうか。ケータイをつかってロボットに指令を送るのであろう。

「アシモフ、庭で雨が降ったのはいつだ」

「ミッカマエノ3ジカラ18ジデス」

「現在の温度と湿度はいくらだ」

293K、53%デス」

「ナンバー145の鉢の質量を計測せよ」

「…283gデス」

「ふむ、軽いな。水やりをたのむぞ。全部の鉢に如雨露で50リットルたのむ」

「カシコマリマシタ」

家に帰ってみると如雨露の水をかぶって庭の隅で動けなくなっていたアシモフが言った。

「シビレマシタ…」

まあ防水くらいにはするとしても仕込みは結構大変だろう。 

 

1月6日(火)「燃料電池温室

温室について思うことがある。あれはあれで灯油代が結構かかるようなことを聞いている。将来は発電所にしてしまってはどうか、と思った。つまり、いまはやりの燃料電池を使えば家のガス代がちょっと増えるだけで温室の燃料代と電気代がただになるという結構な話である。そういう家庭用燃料電池が開発されている。

燃料電池は、燃料の持っている化学エネルギーを電池のしくみで電気に変える技術である。わかりやすく言うと、電池に入っている電気の元を電池に供給してどんどん電気をつくるというしくみである。その電気の元はこの場合水素と空気なのであるが、それは通常の燃料(都市ガスなど)を「改質」といって水素に換える技術で水素を作り出して使う。

燃料電池で電気を作る場合、電気への変換効率は小規模な発電では40%を下回る。残りの60%は熱になる。効率50%の火力発電所ではその熱を捨ててしまうのであるが、家庭用燃料電池ではこれで湯をつくることができ、うまみが大きい。ガス代がちょっとふえて電気代がただになるくらいの効果があるのだ。

出力1kWの燃料電池を考えた場合、1.5kWの熱が出来るわけで、以前計算してみた結果では給湯用には少々熱量が過剰になる。そこで温室にあまった熱を供給すると温室持ちには燃料費を節約できて大層有利ではないかと考えたのであった。

ちなみに燃料電池は来年東京電力から家庭用に販売されるそうであるが、温室も含めた話は聞かない。そこで思うのは、温室と家庭を含めた検討を温室業者が行って新エネルギー産業技術総合開発機構(NEDO)などが行っている燃料電池導入促進についての補助金をゲットして開発・販売を行ってはいかがだろうか。温室効果ガスの抑制、省エネ、普及のしやすさなど燃料電池温室には利点が多いように思われた。

うたい文句は「温室の姿をした家庭の発電所で年中花を咲かせましょう」である。

「今お買いあげいただくとバンダと胡蝶蘭、デンファレをおつけします。この株だけで年間8ヶ月は咲いていますよ」

「うわー、きれいですね。そんなに長く咲くんですか。でも世話が大変じゃないですか」

「心配要りませんよ。この名著「サルでも育てられる蘭」もおつけします。またこの温室さえあれば温度調節は全自動ですし、付属の水やり器は自動設定やケータイからの水やりにも対応しています。備え付けの温水シャワーで水やりもらくらく」

「おしゃれな外装で、床下に発電所とお湯のタンクがあるなんて分かりませんね。それに中がお花で一杯ですね」

「ガス代はどうなるんですか?」

「はい、こちらの6人家族のお宅では月々3千円の負担増になりますが、なんとなんと電気代13000円がただになってしまうんですね」

「まあ、すごい節約になりますね!」

「電気も作っているわけですから、このクールケースもおつけしましょう!暑がる蘭もこれでばっちりです。また、屋根に遮光材代わりに半透明太陽電池を付ければ電気代がますますおやすくなりますね。これもつけちゃう!」

「もういいことづくめの温室ですね」

「裏技として、こちらにあるような使い方も出来るんですね」

「うわ、洗濯物が一杯ですね。」

「乾燥機としても使えるんですね。洗濯機5杯分を天候を選ばず、すっきり素早く乾かせます。衣類の傷みも少ないですよ」(^^;)

「さて、気になるお値段ですが…」

「はい…」

「補助金でおやすくなって150万円、どうです。」

「えー、これだけついて150万円ですか」

「一家に1棟燃料電池太陽電池発電温室冷室給湯乾燥機(わけわからん)。送料・金利手数料はJavaNet***が負担します。お電話、インターネットからの注文もお受けします。どしどしご注文ください」

そういう温室があるのならわしも欲しい。でも値段は当初太陽電池が300万円なりだったことを思うと400万円くらいになってしまうのではないだろうか。しかし補助金で安くなるようなことがあるとはいえ、新しいものに飛びつくのは自重し、技術が枯れた頃に手を出すべきであろう。

 

11月10日(月)「さぶー

兵庫県にお住まいのTさんからのお便りです。

「けちけちの看板は偽りありじゃ。一鉢が安かったとしても、その数や、材料費、手間や時間、交通費など、金額に換算すると、男ってあほじゃないか(笑)、と思う」

このご意見(つっこみ)は(あほとまでは言われていないがついそう翻訳してしまいました(^^;)まったくそうだなと思います。株すべてで10万円、設備に2万円、ガソリン代?、光熱費、費やす時間の労務費などなど。

「あんたあほちゃうん?」

「なんやねん、いきなり失礼なやっちゃ。いまいうたとおりやないか。5年で20万円はいってへんでえ」

「月いくらもろうてんの?」

「いきなりセキララなこときいたらいかんよ、そんなもんこんなとこかけへんがな」

「こづかいやがな」

「さ、3万円や」

「ごっつうもろうてるやんけ。この不景気に。どついたろかほんまに。ええおっさんがまんだ若いくせに毎晩毎晩鉢いじりくさってからに。隠居かい」

「ほっとけ。人の趣味じゃ。これでもバブルの頃はもう3千円ようけもろうとったんじゃ。昔はパソコンきちがいやったからなんぼでも小遣い欲しかったけれどいまじゃ蘭のおかげで余ってしょうがないな。蘭はええでえ。いうとくがな、わては酒もタバコも賭け事もやらんのや」

「けっ、つまらんやつや。おまえみたいなやつが日本の不景気のもとや」

「ほっとけ。ランはやすいでぇ。毎晩発泡酒1缶飲む代わりにその銭で蘭を買うたらわてのランは2年でそろうで」

「せこー。こまかいやっちゃなあ。そんで余った銭でなにしとるん。おっさんすけべそうやからええとこかようとんのとちゃうん。でぇへへへ」

「あほこけぇ。家族サービスやがな」

「でへへ。かあちゃんにサービスしとるんかい」

「しとるがな(笑)。笑うな、ちゃうがな。かみさんのパソコンつくったり、家族と飯食いに行ったり、子供遊びに連れてったりしとるがな。土日は飯までつくっとるでえ」

そぉんなやつおるかい!

「いうたな。おこられるど(笑)。東京ドーム・ラン展に5回以上いけるだけの銭も小遣いでためとるけど、けちやからようでけん」

「けちやなあ」

「けちも趣味じゃ」

「それがホンネやな。けったいな趣味や。でもこれだけは言わしてもらうで」

「な、なんやねん」

「蘭ばっかやって、ちゅーとはんぱで、うだつのあがらんやつや」

「うっ!。うううう、いうたなぁ。そのとおりや…。せやけどここで一首」

「なんでやねん」

「とうちゃんは うだつ上げずに 花芽上げ もっと働け 老後は遠し」

「も、もうええ」

 

11月5日(水)「女王様作戦

はやいもので、ノビル系デンドロの「岩国」(よく見るスノーフレイクらしい)にぼこぼこと花芽がついた。昨年花がきれいでえらく気に入ったデンドロだった。500円で蕾付を買って帰ったときはさえない花だとえらく落胆した覚えがある。放出リストに載っていたこともあった。しかし翌年見違えるようにきれいに咲いたのだった。今年は昨年よりバルブ倍増で更にパワーアップしている。ノビル系デンドロの良さが2000年のDen. White Rabbit以来4年かけてだんだん分かってきたような気がするのであった。思うにデンドロは「ビキニな鉢」に、絶対倒れるような「むきむきのバルブ」を育てて、「北風のムチで」なぶるようにして花芽をつける「女王様作戦」

「おいおい何の話をしているんだ」

「ちなみに、私が普段使っている手は「葵の上」作戦です」

「ちょっとなんですかそれは」

「ラン展なんかで色気むんむんの見本株があるじゃないですか」

「その色気ってなんですか」

「えらく高いですよね。人のものだし。藤壺さんのように人妻みたいなもんで、あれええなあ」

「格調高い古典と下品な話を混ぜなたらあかんて!、よだれをふく!」

「その株の品種名を覚えて置いて、あとで見切り品で探してきて、娘のうちからよく仕込んで咲かせて、いただくと」

「その、いただく、は変!」

「えへへへ、みせてね、おじさんに」

「変態のおっさんじゃないですか。だめでしょそういうことしちゃ。葵の上といえば光源氏でしょうが」

「最近ちょっと後退したおでこが光る源氏」

「もうええわっ!」

 

2001年

5月26日(土)「胡蝶蘭救出作戦」

 時計の針が12時をまわり、同僚と仕事を切り上げて帰る道すがら、例の場所にまたまた出ましたよ胡蝶蘭が。「たすけてえええ」とゴミ袋の中から呼んでいるのが見える。しかもこんどは鉢が二つ!。鉢二つもって終電ぎゅうぎゅう詰めの京浜東北線に乗れるわけがないじゃないか。ぶつぶついいながら通り過ぎる。同僚がみかねて、もどってみたいでしょ、なんていうものだから、きびすを返して20mもどった。しかし、あたりは若者がうようよいてゴミあさりができる状況ではなかった。やむなく悄然と駅に向かうのだった。哀れ胡蝶蘭よ、すまんすまん。(書き忘れていたがたしか4月頃にも胡蝶蘭が捨てられていてこれで3回目のべ4鉢12株になる)

 電車を待つ間も未練たらたら(欲しければ買えばいいので、べつに欲しいわけではない。ああかわいそうという感傷にすぎないのであった)でいたが、突如自転車での救出作戦を思いついた。

 尋常ではない。さんざ働いたあと終電で家に帰り、すぐさま自転車で10kmの道のりを深夜ゴミにまみれた蘭を拾いに行くなどというのは滑稽を通り越してむちゃである。なぜか浮き立つ心の底をのぞいてみると、蘭にかこつけて日頃の鬱屈を自転車をこいではらそうという気分があった。

部屋に帰るなり米をといで炊飯器にかけ風呂を沸かして出かけた。午前1時半だった。自分なりにこのあきれた行動の理由をつけると、それは防災訓練だった。そうそう、防災訓練。

神戸のあの地震の直後を知る私にとって地震に対し無策とも思える東京で、もし仕事中地震にあったらどうやって逃げるか。大規模な火災が起きた場合、荒川に短時間でたどり着き対岸に逃げることが生死を分けるかもしれないと考えていた。避難路は高架道路が縦横にまたぎ、ペンシルビル、壁を接しないばかりの住宅地が延々5kmも広がっている。かねてから避難路を探索しようと考えていたのである。そう、考えていたのである。

 1時45分には戸田橋をわたった。深夜だから道がすいている。ライトの電池が心配だ。案の定おまわりさんに「気をつけて」とやさしく声をかけられた。礼をして通る。おまわりさんと相性のよい私だったが、さすがに無灯火だととがめられるだろう。職務質問をされてまさか蘭を拾いに行きますとも言えない。だが無情にも往路ではやばやと電池が切れてしまった。

 夜の街を自転車は快調に進む。しょっちゅう往復70km走って職場に通っていたこともあったので風を切るこの感じが心地よい。

 たちまちサンシャイン60が近づいてきた。明るい商店街を抜けたり暗いガード下を通ったりして進む。

 目標が見えた。さあミッション開始だ。おや、ゴミ袋が見えないぞ、もしやもうもって行かれてしまったのか、ああなんということだ、ここまではるばる来て。

 だが、近づいてみると見えなかったもっと端の方にその問題のゴミ袋はあった。まだ若者が何人か突っ立っていて客引きをしていたが、かまわず袋から蘭を取り出す。胡蝶蘭はずっぽりと鉢から抜けてしまった。中の水苔がぐっしょり濡れている。どうも前の持ち主は胡蝶蘭が好きなくせに世話の仕方をまったく心得ていないらしい。二つ目の鉢がゴミ袋の底にあって取り出せない。用意して持ってきたゴミ袋にすべてを入れて、その中で袋を破り鉢を取り出した。鉢は重いのでそのままもとのゴミ袋に入れ(なんで分別していないのだろうか)株を数えたり点検することもせず、リュックに詰め込んでその場を離れた。その間3分ほどだったろうか。遠路はるばる来てこんな目にあって救出した胡蝶蘭はそのときの感覚ではかなり弱っていてもうだめである可能性は高い、と感じていた。

 胡蝶蘭につけてある支柱の針金がじゃまだ。リュックからはみ出す。それを曲げてリュックに押し込みしょって自転車にのるとこんどは針金が背中にあたって痛い。これをさらに押し込んで帰路についた。電池が切れたので無灯火を気にしつつ(途中おまわりさんとすれ違って目があったが何もいわれなかった)黙々と帰った。戸田橋をわたったあたりで空がわずかに白んで鳥の声が聞こえてきた。3時半に部屋に戻り、ご飯を食べて風呂に入って寝た。

翌日2時に起きて(毎度週末は寝だめをする)株を点検してみると6株を持って帰り2株は成長点破損などでお亡くなりになっていた。運搬中にだめになったおそれもある。一つは根腐れしていたようだ。2種4株をそだてることになった。一つの種は花がついていて、今咲いているPhal. Mishima Crystalそっくりであった。咲いているPhal. Mishima Crystalはかなり大きな花だが、しおれかけたその花はそれよりも一回り大きいのに驚いた。もう一種にもしおれた花が付いており、やや小振りでリップに赤い色が判別できる花が咲いていたようだ。この種は株が小さく葉っぱも小振りだが緑色がみずみずしい。こちらは切り戻しをして育ててみることにした。つぼみが出るようなら同僚がもらってくれそうだ。

水のやりすぎで痛んだと思える根っこを取り除き、葉っぱをあらった。健全な株が2つ。葉っぱが痛んだ株が二つである。2つは素焼きの4号鉢に植え替えた。だが、一挙に4つも蘭が増えたため在庫の鉢が払底してしまった。やむなく鉢を探して夕方近い近所に自転車で出かける。さすがにけつがいたい。

 川口や浦和(現さいたま市)というところは延々と市街地が続く。家々にはいろいろな鉢植えを楽しんでいるところも多く、街の潤いとなっているように感じられはする。ただ、その日もホームセンターや花屋などを探して市街地を10kmちかく走ったのであるが、むやみと車が多くて疲れ、うんざりした。結局みつからず、以前から見つけていた店に行ったが品揃えが悪いうえ高い。素焼きの鉢のようなものを手に入れるのにこれほど苦労するというのはなんだろうか(ついていないのだろう。最近人生勉強の機会が多いよ、まったく…)。店は多いが、「あかすり」や「電池」を手に入れるにしても目星をつけて最初に入った店にない、というようなことはよくある。関東は不便なところだ、とよく感じる。

あまり意見を書かないことにしているのだが、つい書いてしまう。なぜ関東の人間は券売機や乗り越し精算機、スーパーや飲食店のレジなどで値段がレジに表示されてから財布を出して金を探すのだろうか。はなはだしい場合は、後ろポケットから20秒も財布を取り出そうとしてもがいた親父が居た。関西からきた人間には耐え難いほどの時間の無駄に思えるのだ。(「どついたろかほんまにぃ」とか「はよぉはらいんさいや」とかと思っている。なにか文句を言うとあとで追っかけてきて後ろから殴られるかもしれないので黙っている。現にそういう事件が多いなあ)関西ではある程度頭の中で金額を把握しており、それに近い金額をあらかじめ手に持って支払いに臨むものなのである(偏見だろうか)。また、定期券の指定区間以外で買った切符と定期券をいちいち精算機に通すというのも遅れたシステムだと思う。関西の自動改札機は切符と定期券を重ねて通せるのだ。

世間は世知辛いようだが、部屋の中は胡蝶蘭とカトレアが咲いてごきでんである。

 

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