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3月31日(土)Bulbophyllum
barbigerumおよびEpi. Eagle Valley ‘Orange King’開花、村上園芸、月間開花件数21件
Bulbophyllum
barbigerumおよびエピデンドラム・イーグルバレイ ‘オレンジキング’が開花した(今月20-21、今年51、新規19)。この開花により期待された月刊開花件数新記録の21件が蘭諸君の健闘によりめでたく達成された。ただ、この件数は温室持ちの上級者にとってはたいしたことはない数であって、世話人が勝手に喜んでいるだけである。世間では、「リビング、キッチン、寝室、階段、玄関、浴室、厠などどこにでも蘭のある素敵な暮らしが」などと夢想する向きもあるかもしれないが、よくない環境に蘭をおかないことにしているためそういう風に家中に蘭を飾ったりはせず、もっぱら窓辺に集中している。ただ、マンションなどはぬくいから家中蘭を置いても蘭もほとんど弱らずにいいかも、いいなーマンションなどと思った。しかしマンションでは夏場の日照が不足するという問題がありそうだ。なんにしても蘭をやっていれば花に不自由することはない。いや花で不自由することはあるか。
今年のバルボフィラム・バービゲラムはどうしたのかというくらい花茎が出てくる。どう見ても虫そっくりなリップで、ふりふり尻尾を振るように風に揺れるためハエたたきで殴られそうな株である。今年はその虫も大量発生という雰囲気だ。
虫といえばPhal. 'YellowGreenの花が虫に食われて穴が開いていた。その虫をみつけて、これは報告する価値ありと、これでもかと撮影しておいた。
曇りだったが蘭を出して水遣りをする。暖かければビニールをはがそうかと思ったがまだ肌寒いので1週間延期だ。
あまりにも蘭の数が多いので気は進まなかったがダイキ神戸北町店に明日までやっている村上園芸の蘭展を見に行った。
あまったとおっしゃってのこり1冊の東京ドーム蘭展のガイドブックを下さった。最後のページに資生堂の「ディレナティの香り」なる香水の宣伝があってその写真のPaph. delenatiiは村上園芸の花を資生堂の宣伝関係者が松山まで来て撮影したものだそうだ。香水も現物があって試しに手首につけてもらった。香水は6時間たった現在もまだ香っている。おかげで現場で花の香りを嗅ぐことが困難になった。かみさんはこの香水は好みではないらしい。ディレナティーというパフィオもしょっちゅうみかけるのだが、いままで香りを感じたことはないのが不運というかなんというか。
Lc. Trick or Treatのオレンジ色に煩悩していた。800円。しかしカトレアが増えすぎてこまったなあ、でもいい色だなあ、などと思っているとBlc.
Bryce Canyon ' Splendiferous 'とLc.
Trick or Treatの交配種を勧められた。花の形が整った美花であった。しかもばっちりオレンジ色である。Blcにしては株はミディで花はミニカトレアという妙な雰囲気である。香りも少しある。結局これに手を出した。最近ついカトレアを買ってしまう。オレンジ好きの上さんの受けもよかった。
Blc. Bryce Canyon ' Splendiferous ' AM/AOS × Lc.
Trick or Treat
ブラソレリオカトレア・ブライスキャニオン ‘スプレンディフェラス’×レリオカトレア・トリックオアトリート
2007年3月31日村上園芸
くしくもこのBlc. Bryce Canyon ' Splendiferous 'というカトレアは前の晩に写真のめっちゃきれいなよそのサイトで「これええなあ」と狙っていた品種であった。これに有名オレンジ色ミディカトレアを交配したらオレンジ色の強い花径40mmの花の小さいBlcが出来たという。
交配から7年かかったそうだ。ものすごい数の交配を手がけてきた村上社長が何をどう狙ってこの交配を行ったかインタビューしてくればよかったと今頃思ったが後の祭りだった。
3月29日(木)
Blc. Magic Meadowにつぼみが二つある。札を落としてひょっとして別の種とすり替わっているかもしれない。過去1度つぼみをしけらせている。いただいたときにすでに大きかったが、なかなか咲いてくれず、そんなに時間がたったかなあ、といぶかしく思うくらい月日が経ってしまった。間もなく3年というところで咲いてくれればありがたい。
C. maxima 'Yamadori' は、バルブ3本、シース3つ、つぼみ3個ずつぐらいでなにやら気合が入っている。
Bulbophyllum
barbigerumは花茎が3本になった。明日開花予定である。うちではかなり変な蘭の部類に入る。とにかく虫の擬態が真に迫っている。思わず殺虫剤をかけられそうな迫真の演技だ。
3月28日(水)Lc. Aloha
Case ‘#32’× C. intermedia var. delicate開花
Lc. Aloha Case ‘#32’× C. intermedia var. delicateが開花した(今月19、今年49、新規19)。初日から大きく咲いている。
この開花により、現在咲いている蘭の株数は33(32種)に達し過去最高となった。
Lc. Aloha Case ‘#32’× C. intermedia var. delicate:見事に満開の画像。レリオカトレア アロハケース×インターメディアvarデリカタ:年間5回咲くすばらしいカトレアである。花2つ。
Slc.
Rocket Burst ‘Deep Enamel’ HCC/AOS:ソフロレリオカトレア・ロケットバースト'ディープエナメル' 大変赤い深い色合いがすばらしい。花茎3本だったが1本しけて2本で6花。
Slc. Princess Pelu ‘Love’: ソフロレリオカトレア・プリンセスペルー ‘ラブ’ 黄色にリップが赤のミニカトレア。
Pleurothallis
grobyi :プレウロタリス・グロビィ ミニミニ鉢ながらかわいい花がたくさんついて見ごたえがある。丈夫で育てやすく長く咲いてくれる。過去最多の花茎数。
Schoenolchis
gemmata:スコエノルキス・ジェマタ 撮影困難なかわいい花をながーくつけている。今回2本目の花茎がでてきた。
Prosthechea
cochleata:プロステケア(エピデンドラム(エンシクリア)) コクレアタム 蛸ちっくな花もいいが徳利型のつややかなばるぶは見るものを幸せな気分にさせてくれる。
Pollardia
pterocarpa:ポラディア・プテロカルパ これも花もいいがバルブもすばらしい。
Phal. ‘Moss
Ball’:苔玉胡蝶蘭 100円シリーズ。かわいらしく、丈夫で大変気に入っている。
Phal. 'YellowGreen:胡蝶蘭黄緑 付き合いの長い愛着のある黄色い胡蝶蘭だ。
Paph. primulinum:パフィオ・プリムリナム 大変長く咲いてくれるパフィオ。硫黄色が美しい。
Paph.
gratrixianum(?):パフィオペディラム・グラトリクシアヌム? たまらない魅力のあるパフィオ
Onc.
obryzatum:オンシジウム オブリザタム 丈夫、育てやすい、咲きやすい、見ごたえがある、花が長いなど、美点の多い品種だ。
Lyc. Jim Riopelle:リカステ ジムリオペレ このクラスの大きな花を年間120日以上長期間見せてくれるので蘭の中では大変珍しいのではないだろうか。
Lhta.
oerstedii:ロックハーティア・エルステディイ ミニ蘭ながら存在感があり、しょっちゅう咲いてくれる。
Ionettia
Cherry Dance:イオネッティア・チェリーダンス まさにダンスだねえ。2鉢ある。可憐なピンクの花がたくさん咲いている。
Epic. Kyoguchi
×C. walkeriana var. alba:エピカトレア・キョウグチxカトレア・ワルケリアナ アルバ ちっこいなりにもかわいく面白い花だ。
Epi. ‘Nakazato’ :エピデンドラム‘仲里’ 意外に色の白いエピデンドラム。花茎3本。長く咲いてくれる。
Epi.? 'Hanakoujou':エピデンドラム「花工場」 たしかこれは最長開花記録500日間を持つ株ではなかったろうか。今回花茎6本。色はくっきりと赤い。
Epi.
sophronitis var. Verithii:エピデンドラム フロニチス変種ベリシー エピデンにしては花が大きいあまりみかけない品種。この株も夏冬選ばず恐ろしく長く咲いてくれるため、いつでも花が見られる。
Epi. porpax
aureum:エピデンドラム・ポーパックス オーレアム 冬にもさいてくれたんだね。ありがとう。
Den.?‘B4’: デンドロビウム 「ビギバム4」 年々花も増えて株も大きくなるデンファレ。
Den.?‘WhitePurple’: デンドロビウム 「白紫」 真冬に咲き始めた。長く咲いてくれそうだ。
Den. ? 'Murakami':デンドロビウム 「村上園芸」 これも真冬に開花。ただのぴんくじゃないどこか玄妙な色がいいねえ。
Den. ? 'Hanakoujou':デンドロビウム ’花工場’ 大株の風格。花も大きなデンファレ
Den.
kingianum?:デンドロビウム キンギアナム? スペキンだと思う。香りがよく、花上がりがやたらとよい。アブラムシに好まれる。温度の変化につぼみが弱い。
Den. Pramort:デンドロビウム パラモルト 一輪の花としては最長の138日咲きというタイトルホルダーではなかったろうか。まだきりりと咲いている。
Den. Bizen ‘Akebono’: デンドロビウム・ビゼン’あけぼの’ いいよこのデンドロ。輝くような黄色だ。香りもよい。
Den. Arika:デンドロビウム アリカ 淡いピンクがなんともいえない花の大きなデンファレ。
Den.
kingianum:デンドロビウム・キンギアナム ちっこい花がぽこぽことたくさんついている。
Cirr.
picturatum:シルホペタラム・ピクチュラタム びしっと決まったシルホである。
C. skinneri :カトレア スキンネリ いいねえ、色が。花の形もきまっている。
Asctm.
ampullaceum ‘II’: アスコセントルム・アンプラケウム すごい色をしている。
現有株の12%が開花中ということになるだろうか。
3月26日(月)
つぼみ3種が開花まで秒読みに入った。月間開花株数新記録21までまもなくである。
3月25日(日)
Paph. gratrixianum(?)は、Paph.
villosum var anamense?(つづり違うらしい。nがだぶる)という名前であれこれ検索調査した結果、多くの議論がなされていて「白いドーサルに一本線と花弁上部のひだはスパイセリアナムPaph.
spicerianumの特徴で、Paph. villosumとの交配だよ」という意見がいくつも見られ(私も同感)、とどめは「交配種のPaph.
LXXX(失念)=Paph. spicerianum×Paph. villosumで登録されているよ。写真はこれ」という書き込みでのけぞるほどよく似た画像を見せ付けられてほぼかたがついたという気分である。プライマリ交配とかいって、原種同士の掛け合わせはそれぞれの原種の特徴がモロに出るから素人の私でも「ごっつうよう似てまあ」と思えるのである。でもまあ本当にそうかどうか証明するのは技術的には出来ると思う。しかしそんなことをしたいとは蘭愛好家は思わないだろう。私はまっぴらだ。
本日あまりにも花茎が寝ているため支柱をした。花が真上を向いてしまい具合が悪い。
ホームセンターで花の大きなパフィオが980円で出ていた。パフィオには心惹かれるものの何かが足りない。うちのPaph. gratrixianum(?)にはなにかしら惹きつけられるものがある。
村上園芸が3月28-4月1日ダイキ神戸北町店で蘭展を行うそうである。
今月あと3株咲いてこれまでの月間最多開花数記録20を更新しそうな勢いである。
大変すばらしい交配種がある。Lc. Aloha Case ‘#32’× C. intermedia var. delicateである。昨年の生育記録を整理していたところ驚くべきことがわかった。
「2006年2月18日つぼみをもったような膨れた新芽がある。これはしけたようだ。5月4日同じく膨れた新芽がある。7月31日開花(第15回)。2つぼみのバルブがでたがこれはバッタに食われてしけた。さらに別のバルブから1輪で9月16日開花Lc. Aloha Case ‘#32’× C. intermedia var. delicate(第16回)。この花が終わったら株分けだ。とおもったらつぼみがありそうなバルブが伸びていて、待つ。10月13日つぼみが2つ出てきた。11月5日開花(第17回)。2007年1月15日開花(第18回)年4回咲きというタイトルを得る。
2007年3月25日:この株はあと数日のうちに開花する(第19回)。このため年5回咲きのカトレアということになる。つぼみをしけらせずにくれば年7回咲きというタイトルもありえたかもしれない。現在新芽がほかに3本あり、それぞれ咲く様なことがあればさらに記録は伸びる。バルブの数は多くて把握できていない。鉢からはみだしまくっている大株となっている。旺盛に生育しているためちょっと手をつけにくい。」
このカトレアの例のように花期がある程度決まった原種では考えられないような頻度で香り高い花をたびたびつけてくれるすばらしい交配種があることも事実である。この花は香りはワルケににて、花も3週間咲いてくれる。大きさもワルケ並みである。こういう交配種を育てるのも蘭好きの幸せではないだろうか。
3月22日(木)Schoenolchis
gemmata開花
夜中に蘭を眺めて、Paph. gratrixianum(?)はやっぱりええなあ、とおもいつつ、Paph.
villosum var anamenseとはどこか違う、などと考えていた。どうもドーサルセパルの丸みが違う、と感じた。この丸い傘のような部分は秀逸だと思う。ところで神戸蘭友会蘭展でPaph.
villosum var anamense‘Takao’は、受賞席に飾られていた。花数は10で、うちの5倍である。居並ぶ競合パフィオを抑えて受賞しているということは、私がええなあ、と思ったように世間もこの花はいい、と認めているということらしい。
昨日I氏と一緒に見ているとBllra. 'Smile Eri'に花芽が出てきていた。2株とも出ている。
昨日言及しなかったのであるが、指名手配中のBlc.
Pamela Hetherington ‘Coronation’ FCC/AOSはBlcの最高峰と私が勝手に考えている株であった。なにしろ冬の蘭展といえばどーんとこの大株が受賞して目だっているというのがひところの定番だったのである。これが咲いたらBlcは卒業などと勝手に考えていた。株は2.5号鉢なのでまだまだ先は長い。神戸蘭友会では、私がへたくそだからだろうが、なにやら先が長いものばかりつかんでしまう。歴代振り返ってみるとえらく待たされてL. purprata var. roxo violetaとC. maxima が開花したのみである。
スコエノルキス・ジェマタが開花した(今月18、今年48、新規19)。
3月21日(水)神戸蘭友会蘭展
I氏のお誘いで神戸蘭友会蘭展に行ってきた。昨日風邪のような症状でへろへろだったが、本日はなんともなかった。
まずI氏の家まで送ってもらい、I氏の蘭をざっと眺め、I氏の犬に抱きつき、なでまわしてから(別にめちゃくちゃ犬が好きというわけではない)、I氏の車で須磨離宮公園を目指す。つくやいなや売店に飛び込み物色する。
I氏ははやばやとワルケ、ノビリオール、ロディゲシー、トリアネーというカトレア原種を抱え込んでいた。私はロディゲシーに少し煩悩したが、まあ撮影の後でいいかと写真をとりまくっていた。300枚以上撮影して今回は蘭友会の皆さんも異様に気合が入っているなと感じた。うちのパフィオそっくりのパフィオがあり、Paph.
villosum var anamense ‘Tokoo’とあった。あまりにもうちのPaph. gratrixianum(?)とそっくりである。これがグラトリキシアナムには見えないのでたぶんPaph.
villosum var anamenseなんだろう。しかしこれがPaph. villosumかというとちとまだ納得が行かない。ヒダヒダとドーサルの赤い一本線からみてどうもPaph. spicerianumが混ざっているように思える。まあ専門家ではないので深く追求するつもりはないが、将来DNA鑑定器なるものができて簡単に白黒がつくようになるかもしれない。(その後の調査で、関西で一件同じをPaph.
villosum var anamenseみかけたが、蘭図鑑サイトでは種名の表記も写真も異なっており別物に見えた。Paph.
villosum var anamenseは米国のサイトで交配種ではないかという議論をみかけた。私同様Paph. spicerianamが混ざっているとする議論がなされていた)。
蘭見物をしたあと、売店に戻って蘭友会のおじさんたちがたむろしてブロックされていた領域のトレイを点検していると指名手配中のBlc.
Pamela Hetherington ‘Coronation’ FCC/AOSを発見した。800円!、よーしっ!。
3.5号鉢でしょうしょうぐらついていたため、帰ってから2.5号鉢に植え替えた。なんとなく温室仕様の植え付けという感じであった。防虫網、発泡スチロール、質のよいミズゴケと支柱がついていた。バルブは4本。新芽がまだ見えない。新芽がでて大きくなればOKだ。売り手はT氏とおっしゃって、カラー写真入りのパソコンの打ち出しカードがついていた。
戦利品をI氏と自慢しあっていると、引きずり器に蘭を載せたおじさんが売り場にやってきた。会員らしくこれから蘭を売り出すものと見て注目していた。開花株が多い。値付けが微妙に安い。株の割りに花が大きな鉢に目が行った。変な名札がついている。「Slcy. Hue Chen ‘Selection’」。
800円と値札に書き込んでいた。一度は手放したものの、ちょうど小銭が800円あったため購入した。しかしこのSlcyという属名はなんぼなんでもおかしい。「Slc.
Yhue Chen ‘Selection’」の線で調べてみよう。
Slc.
Yeong-Huei Chen ソフロレリオカトレヤ ヨンへイ チェン= C. Moscombe x Slc. Anzac (1975)の線が濃厚。
あとは家にもどってI氏と蘭の鑑賞会であった。エンシクリアにえらく興味をお持ちとのことだ。
3月19日(月)Den. ?
'Murakami'開花
Den. ? 'Murakami'が開花した(今月17、今年47、新規19)。今月異様にハイペースに開花件数が増えているため、過去最高の月刊開花件数20件(2005年5月に記録した)を超える可能性がある。実は、わけ株の鉢が3株開花して、これをカウントすればすでに20件になっているようではある。一時30株にもなった開花株で花だらけの様相を呈していた。
21日から神戸蘭友会の蘭展が須磨離宮恩賜公園で開催されるとの情報を得た。I氏が朝駆けをなさるそうなのでつるんで参加したいと考えているのであった。
前回C.
lueddemanniana ‘Royal
Flash’ x coerulea ‘Sigui’なるものを500円で買っている。シースに花芽らしいものは見える。しかし、やたらバルブが小さいのだけれどこれはほんとにカトレア・ルデマニアナなのだろうか。
3月18日(日)
ありゃ、っというほど長い期間何も咲かない時期が続いたようで、更新も忘れ果てていた。このところ寒い気候が続いたので蘭の活動も下火になっている。
蘭の観賞は毎日たっぷりしている。30種近い蘭が咲いている。カトレア4種が目立っている。
3月13日(火)Den. Bizen ‘Akebono’開花
デンドロビウム・ビゼン’あけぼの’が開花した(今月16、今年46、新規19)。まだよくわからないが、ほとんど黄色という雰囲気のデンドロだろうか。
これだけ咲いてもまだつぼみがある。
3月12日(月)C. skinneri、Cirr.
picturatum及びSlc. Rocket Burst ‘Deep Enamel’ HCC/AOS開花
カトレア スキンネリ、シルホペタラム・ピクチュラタム及びSlc.
Rocket Burst ‘Deep Enamel’ HCC/AOSが開花した(今月13-15、今年43-45、新規17-18)。3鉢とももらい物である。
今月は日数よりも咲いた鉢数が多いという強烈な日々である。日付を上回る速度で鉢がつぎつぎ咲いてくれるため記録がおっつかない。
デンドロビウム・グリフィッシーアナムはしおれ始めた。見事だったが1週間という開花期間であった。
3月11日(日)Den. kingianum開花
撮影と画像整理をしていた。
夜になってデンドロビウム・キンギアナムが開花していることがわかった(今月12、今年42、新規16)。この株はものすごい勢いで増えている。Den.
kingianum?とは雰囲気が異なり、かなり小ぶりである。
3月10日(土)有馬高校蘭展
有馬高校の蘭展に行った。人がつめかけたらしく入場整理中で、外でしばらく待たされた。おばさん4人組がいろいろと蘭談義をしていた。蘭友達という雰囲気ではある。中に入ると例年通り多量の蘭が売られていた。風邪を引いて元気もないので淡々と撮影をして何もかわずに帰ってきた。
家で蘭を出して水遣りをした。特段これという動きはない。
神戸蘭友会の売店で500円で買ったカトレア・ルデマニアナのシースに花芽の陰らしいものがみえる。
購入時にすでにシースがあった。これは高い確率でつぼみが出るのではないかと思ったのである。ポイントとしては、鉢の縁にのっかったバルブがあったことだ。ただ、バルブが恐ろしく小さい。こういう小さいバルブにC.
lueddemanniana(資料画像)の花が咲いてくれるのだろうか。鉢が株の割りにやたらにでかいので春に株分けする予定。
枯れてしまった鉢を整理していた。デンドロビウム・クリソプテラムが枯れてしまった。
3月9日(金)Epi. ‘Nakazato’及びProsthechea
cochleata開花
Epi. ‘Nakazato’ 及びがProsthechea cochleata開花した(今月10-11、今年40-41、新規16)。
明日は有馬高校蘭展である。9時からやっているそうで、かみさんの用事のついでに9時に投げ込んでもらえることになった。
風邪だかインフルエンザだかしらないが、罹患している。こういうコンディションだと妙に仕事だの作業だのがさくさく片付くから不思議である。明日はもう少しへろへろかもしれないが、それでもランを見に行く。
夜な夜なパフィオをもって歓喜の踊りである。すげーパフィオだ。特徴はPaph. spicerianamである。あのてっぺんの傘といい、それに一本入った筋といい、花弁のひだひだといい酷似している。ただ、目玉と鼻の雰囲気がちょっとちがう。なんにしても大変すばらしい花が咲いたものだ。蘭をやっていてよかったと思うひと鉢であった。幅90mm、高さ95mmの花である。
3月8日(木)Epi.?
'Hanakoujou'及びDen.?‘WhitePurple’開花
Epi.? 'Hanakoujou'及びDen.?‘WhitePurple’が開花した(今月8-9、今年38-9、新規16)。
このサイトは容量不足で管理が手間である。もし容量無制限だったら一ヶ月では見切れないほどのすさまじい画像サイトになっていただろう。トップページに掲載した画像の大半はいつも使い捨てにしている。そういうのをべたべた貼り付けた蘭・自・慢のようなページがこれでもかというほどつくれるのだが、100MBではそうも行かない。どこまでもやりたいように作っているページだが、これでもかなり抑えているのであった。
3月7日(水)
Angcst. Paul Gripp × Lyc. aromaticaの鉢を落っことしてしまった。中身がぬけて転がってしまい、椰子ガラチップをカーペットに撒き散らしてしまった。あーあ。夜中になにやってんだか。バルブが巨大化して、プラ鉢で軽いものだからよく転がってくるのである。みれば花芽がぼこぼこでてきている。いい機会だから植え直しをする。まず小さいバックバルブを取ってしまう。ミズゴケを周辺から詰め込んでバルブを立たせる。これで花がたくさん出てきてもきれいに並んでくれるだろう。
すごいんですよ、今度のパフィオがね。アンバー系ってやつですかね。なんだかタンスみたいな色艶したのが咲いてるんですがね。どこもかしこもニス塗ったみたいにつやつや。白、茶色、ミドリ、こげ茶、赤紫のなんだか渋い配色でね。てっぺんの帽子みたいなガクが白くてきらきらしてて、なんだかカラーそっくりに反り返って面白いんですね。原種のグラトリキシアナムってことになってるらしいんですが、画像を見ながら似てるような似てないような。比較的大きな花が支柱もなしにきりりと咲いているのをみると惚れ惚れしちゃいますね。おかわりのつぼみも順調でね。実物は大変すばらしいのだけれど、画像がうまく撮れない。なんだかもっさいおっさんみたいに写ってしまう。これはパフィオにはまる人がいるのもよくわかりますねえ。
3月6日(火)
デンドロのつぼみが5種類ある。カトレアは3種類。まだまだいろいろ咲いてくれそうだ。
有馬高校蘭展は10日と高校のHPに出ていた。ここだけはついつい行ってしまう。歴代結構な株が多いためである。
「蘇る蘭」
22.
特殊部隊PENを迎えにやってきたステルスヘリに同乗し、桂、小島、田中教授、田端警部、伊藤は一路イージス艦「あたご」を目指した。
「うわ、これがPENか。Penta Emergency Non-humanoid robots、第五世代緊急用非人間型ロボットとかごろあわせとしか思えないような適当な名前つけられてますよねえ。すごいなあ。ねえ、さわっていい」と伊藤。
「おう、てめえ、気安く触るんじゃねえぞ」のびる手をぺんとはらいのけながらPENリーダーが言った。
「すごい人気だよね。遊園地のアトラクションなんかに出てるよね。『5PENじゃー』とかいって。口に悪いところがたまらなくいいよね。ジャズもうまいんでしょ、PEN JAZZ Quintetのニューアルバムはいつ出るの。それにしても、かわいいなあ」といって伊藤は強引にPEN4を抱っこしてほおずりしていた。テロリストから悪魔と恐れられている高性能戦略攻撃ロボットたちだが、日本国内では防衛省のマスコットだと思われていた。市中にこんなぶっそうなものがいるためテロリストはうかつに手が出せないのである。
「俺が寝てる間にみんな終わっちまってた。なにがなんだったのやら。なんだかほとんど思い出せない」と田畑がいった。
「いやー、いいところでしたよ。お姉さん達は気立てが良くて、きれいだったし、ゴハンは最高にうまかったし、言うことない採取旅行でしたね。中国はいいなあ」と「洗脳」カプセルでよほど教育されたのか、ほとんど覚えていない伊藤が言った。
「・・・・」これを聞いて小島が複雑そうな顔をしていた。「田端さんのおかげで我々のチームは大成功でしたよ」と小島「これで国内の麻薬と人身売買組織は壊滅するでしょう。ただ、私と田中教授、それに田畑さんと伊藤君は朱氏のカプセルに入れられて一服盛られたうえ変な教育を受けているからあとで妙な副作用がでるかもしれません」
田中教授が言った。「朱さんという人は、世直しをするために大きな策をめぐらすうちに、非合法なあまりよろしくない方法に手を染めてしまいったため、防衛省が介入し、隣の国ということもあって超法規的な政治決着を見た、というところなのでしょうか、要約すると」
「まあそんなところです」とあえて突っ込まない桂がしめくくった。
「それはそうと小島さんどうして吉田さんが朱さんの子供を身ごもっていることがわかったんですか」と田中教授。
「勘ですよ。勘。どことなくおなかでてませんでしたか、彼女。それに二人の雰囲気がなんとなくデキてるって感じじゃなかったですか」
「そうですねえ。彼女は朱氏の秘書役でしたからね。女性を使って中国のエライさんを篭絡しようとしていた朱氏が、実は女性に篭絡されてしまっていたんですね。ミイラ取りがミイラというか。なんのかんのいってやはり日本女性はえらいですね」
「それはそうと教授、珍しいパフィオの葉を手に入れたので培養してみていただけませんか」そういって小島はポケットの中からビニール袋に入った葉を取り出した。
「なるほど変わった模様ですね。こんなのは初めて見ました。なんというかまだらが波打っているような。これも絶滅したパフィオに違いないですね。それにしてもお供えのパフィオが地底湖のはずれのプールに堆積したものだったとは恐れ入りましたね。なんにしても、どんなパフィオになるか楽しみです」と田中教授は目を輝かせていた。
「先生、ワシントン条約とやらはいいんですか?」と伊藤。
「枯れた葉っぱはOKってことに改正されているから大丈夫。昔は標本を送ってもらうと偉い先生までが空港まで呼び出されて大変だったそうだけどね。象牙やサイの角と枯れ葉を一緒するというのがおかしい話だったんだよ」
以上が、パフィオ史上最大の発見といわれる純白の大輪Paph. kojimanum Tanaka 2018 Subgen Parvisepalum Karasawa & Saito 1982の発見秘話なのであった。
おわり
総集編はこちら。
やっと終わった。日誌の容量がやたら大きい。思えばむちゃくちゃな企画であった。パフィオのことをさっぱり知らないくせによくもまあこれだけかきなぐったなあと呆れる。変則的な日誌であった。22日間にわたりサボることが出来なかった。これからは咲いたときだけ書こう。いやにつぼみが多いので頻繁に咲いてくれそうではある。
3月5日(月)Den.
griffithianum及びEpic. Kyoguchi ×C. walkeriana var. alba開花
デンドロビウム・グリフィッシーアナムおよびエピカトレア・キョウグチxカトレア・ワルケリアナ アルバが開花した(今月6-7、今年36-7、新規14-15)。クリフィッシーアナムは株の姿のすばらしさに惹かれて購入したもので、まさかこれほど花つきがよいとは予想外だった。
暖冬の影響でこれでもかというほど咲いてくれる。しかも新規開花の率が異様に高い。
本日バンダ2つ他を庭に置き忘れていたことに気がついた。陽気に気をよくして外に出していたのがまずかった。比較的暖かい一日だったが悪いことをした。霜でもあったら一発でアウトだった。
「蘇る蘭」
21.
ステルス性に優れたイージス艦「あたご」は日暮れ時静かに魚雷を打ち出した。魚雷は長距離を航行して中国近海に近づくと翼をのばし、控えめな噴射をして低空飛行をはじめた。数時間山をぬうように飛行を続け、目標近くの山中に着地した。
扉を開けて内部から5体のロボットがすばやく現れた。姿はペンギンのぬいぐるみのようななりをしている。それは日本が世界に誇る二足歩行ロボット技術と小型コンピュータ技術、ソフトウェア技術の結晶だった。
「ヤロウども。今度のヤマはちとてこずるかもしれねえが、俺たちにかかればどうってこたあねえ、とっととかたづけてしまおうぜ」という内容の通信をして森に散開した。
森の各地でまばゆいばかりのレーザーが発射され、警戒中の戦力はたちまち沈黙させられた。
捕まった兵士が身長35cmの1体のロボットに中国語ですごまれていた。
「やいてめえ、俺様のレーザーでちりちりパーマになった気分はどうだ」鏡をかかげてペンギン型ロボットは言った。
「ひどい・・・パーマにモヒカンだなんて」兵士はうめいた。
「なかなかいかすじゃねえか。俺様はさしずめカリスマ美容師てなもんよ。この上痛い目に遭いたくなかったらてめえの親玉に泣く子も黙るPEN様が来たから武器を捨てて地面に這いつくばって待ってろって伝えな。ちいせえからって俺をなめるんじゃねえぜ。
ぐずぐずしてやがるとてめえの汚ねえケツをこんがりローストして当分座ってウンチできなくしてやるぜ、くくくく」
特殊部隊PENが周辺の解析と、武装解除、朱の館にやってくると桂と小島が出迎えた。
PENリーダーは敬礼し報告した「大佐、近隣の制圧を完了しました」
「ごくろう。早かったね」と桂大佐は応じた。「敵の首領と我々は講和会議を持つ。諸君は爆発物の撤去と武器の無力化をたのむ」
「了解」
桂と小島が館に入ると朱が待っていた。
朱がいった「これで私が築いてきたものはみんな無くなってしまった。私はどうなるのでしょうか」
桂は言った「そのことなんですが、我々は貴方を拘束して裁きにかけることは必ずしも得策ではないと考えているのです。また、現在日中両国の関係は冷え切っていて、この国の問題を取り上げるのは我が国には荷が重い。それに、現在の中国における貴方の影響力が大きすぎるのです。このままでは貴方の仕掛けた策により本当に中国は崩壊しかねない。それは世界に破壊的なダメージをもたらすでしょう。そのため、我が国はなんとしても貴方のたくらみを阻止したかったのです。
そこで相談といっては変ですが、田中教授の考えておられたように、貴方は貴方の祖国である中国を良い方向にもってゆくことが可能ではありませんか」
この提案に朱はまた目を瞠った。そして上気した顔を伏せておごそかに言った。
「こういって信じてもらえるかわかりませんが、生まれてくる子供のためにも是非罪滅ぼしをさせて欲しいのです。私はまちがっていました。吉田とパフィオのおかげで私はかわりました。かつてのように組織を大きくすることや人を支配することに興味を持てなくなってきたのです。私の望みは、吉田と私の子供、それにこれらすばらしいパフィオと安寧に暮らすことなのです。そのささやかな願いがかなうなら何でもします。
どうかお願いです。私に機会を与えてください。我々が安寧に暮らすために、私はこの国がいまよりももっとよい国になる道を知っています。をもう人を薬で操るようなことはしません。日本からつれてきた女性の方々には順次帰国してもらうようにはからいます」
小島があの美しい赤いパフィオを指差していった。
「朱さん。この花は田中教授が分けた子株を貴方が自分の手で世話して咲かせたすばらしい花です。この花はうそをつきません。そして貴方が吉田さんから引き出した素晴らしい美質にあなた自身が感化されてきたのです。私は貴方が必ずよいことを成し遂げてくれると信じています」と小島が言った。朱は一部なにを言われたのか内心理解できなかったのだが、涙を流しながらしきりにうなずいていた。
つづく
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やっと次回で終了だ。かんがえんでもいいのに続編のことを考えてしまうのである。
3月4日(日)
本日は陽気に誘われて庭で水遣りをしていた。予想外につぼみや花芽がぞろぞろでてきているようである。Prosthechea cochleataはもう咲きそうなつぼみがある。エピデンドラムのEpi.? 'Hanakoujou'とEpi. ‘Nakazato’
につぼみが出ていた。Lc. Aloha Case ‘#32’× C. intermedia var. delicateは年間5回の開花を目指してつぼみを持っていそうなバルブが太ってきている。
水遣りの合間撮影をしていた。本日はかみさんが使っている別のカメラを借りて(カシオのエクスリムとかいうやつ)撮影をした。解像度を高く設定してあるとかで、ファイルが1.5MBにもなる。ファイルを整理するとかなり多くの画像が没にならずに残った。結構気に入った画像が多かった。トップページはMax.
porphyrosteleのオンパレードになってしまった。最近は腕がどうのこうのというよりカメラできまっているようなところがあるなあ、などと思わないではない。貼り付けると容量がでかいのか結構重い。いじっている間に容量は下がったが画像がぎざぎざになってしまった。
このMax. porphyrosteleはこうしてみるとなかなか立派である。
昼からぷらぷらと家族で行楽に出かけた。明幸園に寄るとMax.
porphyrosteleの大株があった。しかし、体積で30倍はあろうという大株なんだけれど、花数はうちの2倍程度しかなかった。この種は実は込み合ってくると咲かなくなる性質があるようで、大きくなってから花数がさっぱり増えなかったという記憶がある。今回のようにアップで見ると見ごたえがあるという状態にするためには、新芽を2本ずつ出すバルブを2つ、つまりバルブ2つにして2号鉢に植えるという状態がもっともよろしいと私は思うのだけれどいかがでしょうか。
明幸園では特段出物はなく、今頃ゆりの球根を買ってかえってきた。これら球根5種は即日庭に植えた。
「蘇る蘭」
20.
くぼ地で落ち葉に埋もれて仮死状態を作り出して隠れていた桂が覚醒した。
「忍法葉隠れの術・・・なんてね」
パッドに周囲の状況を探査させ、安全を確認してから起き上がった。まる1日間葉っぱの中に隠れていたことになる。谷の周辺を固める兵士は逃亡者の捜索範囲を広げ、谷から比較的はなれたあたりを捜索していた。
暗視ゴーグルで谷を見るとところどころ熱源が見えた。近代的な動力は極端に抑えられ、ありふれた山間の村を偽装しているようだ。谷の近くの森の中と、そのちかくの急斜面の上にかすかな熱源が見える。
「あれがくさい・・・」そういって全身黒ずくめの桂が立ち上がった。
トラップや警戒装置をかわしつつ熱源に近づいてみるとどうやらダクトとしてつかわれているらしい洞窟があった。パッドにカニのような足をつけて内部に放ち、内部の情報とセキュリティの解析を行わせた。カニパッドは赤外線レーザーの対侵入者センサーやら、いくつかのトラップをかいくぐり内部のコンピュータシステムに侵入し、あらかた情報を抜き出し、打ち合わせどおり動力遮断のプログラムを仕掛けてきたと桂に報告した。
桂は上空を通過する日本の情報衛星を折りたたみ式望遠鏡でみつけ、情報をレーザーに乗せて照射した。衛星はレーザーの瞬きで情報の受領を知らせてきた。
「さて、そろそろ暴れましょうかね。じゃあ、弾薬庫まで案内してください」とパットに命じて桂は指示される方向へ歩き出した。
地下研究所を一回りして戻ってきた小島はふたたび朱氏にまみえた。
「いかがでしたかな?。我々の活動の趣旨を理解してくださいましたか」
「大体わかりました。すこし確認をさせてください。あなたはあの文化大革命の時期にどこに居られましたか」
「桂林近郊の農村部におりました。昆明で教師をしていた両親とともに強制的に移住させられ、日々農作業をさせられていたのです。そして父は腰痛をおして鍬を振るい懸命に働いたにもかかわらず、無理な労働がたたって寝付いてしまったのです。村の共産党党員はそんな父を知識人のずるいサボタージュだと罵り、人々を扇動してとうとう銃殺してしまいました。それは許しがたいむごい仕打ちでした。母は私を守って懸命に働いたのですが病に倒れそのまま私を残して亡くなってしまいました。あの時代私たち家族がなめた辛酸を多くの人々が味わっていたのです。そして当時の為政者側の人間の多くが今もこの国の権力の座にいるのです」
「あなたは村にいた蘭赤秀という若者と連れだって村を抜け出して上海にやってきましたね。そこで蘭氏と別れ、日本の貨物船に密航したんでしたね」
「よくご存知ですね。私は蘭氏から私が持つ両親の形見がまぎれもなく蘭王国の正当な後継者であるという言い伝えがあることを知らされたのです。それがこの指輪です。見た目は冴えない色をしていますが、古代の貴金属精錬技術によるもので、微量の希土類元素を含んだ金と銀の合金でした。このほか、ここへ至るまでの秘密の地図をこめた青銅器があります」朱氏は手にしていた指輪を見せてくれた。
日本での私は必死に日本社会に溶け込み、港湾の仕事をよく覚え、次第に頭角をあらわし、貿易会社を起こし、さらに懸命に働き続けることで巨万の富を築きました。しかし世の中は次第に悪くなる一方です。私になにかできることはないかと考え、私を慕う仲間があつまってこのような研究を行う組織を作り上げたのです。今日では田中教授も加わってくださり、飛躍的に研究を進めることができるようになったのです」
「龍堂会をご存知ですね」
「ええ、かつて取引のあった会社ですが、実は暴力団組織で、裏で麻薬や売春、はては人身売買までおこなっていた大変な組織でした。この龍堂会や一連の組織の内情を知っている我々は自らの組織を暴力団にも対向できるものに強化し、食い物にされ、ぼろぼろになった女性たちを助け出してきたのです」
「ばーかやろう」小島がうつむきがちにつぶやいた。
「?」
「おためごかしのごたくもここまできれいにならべられりゃあてえしたもんだ、このくされエロじじいいめ、極悪人とはてめえのことだ」
朱氏はじめ田中教授と吉田という女性は一瞬何をいわれたのかわからずきょとんとしていた。
「ほんとうの蘭王国の後継者だった蘭赤秀はてめえが上海で身ぐるみはいで路頭に蹴り出し、指輪と青銅器を我が物にしたんだろうが。なにが蘭王国の後継者だ、笑わせんなぼけぇ。だいたい、てめえは生粋の漢民族じゃねえか。
ちったあ知恵の回るてめえは半信半疑ながらこの谷にやっとの思い出たどりつき、蘭王国の金塊をうまうまとてにいれ、それを元手に手広く商売をはじめただろう、この汚ねえ盗人のはげねずみめ。
度胸と頭の良さで日本でのし上がったのはいい。だが、全うな商売なんかこれっぽっちもせずに、もっぱら暴力団を斬り従えて影の大ボスにのし上がった。これからはサイエンスだとかぬかしやがって組織と資金力をバックに新型麻薬の開発に邁進した挙句、偶然みつけた人を意のままに操る薬や、飛躍的に学習能力の高くなる精神薬を開発、合成しやがった。てめえらやくざが街中でひろってきたさみしい女や家出娘をシャブ漬けでぼろぼろにしておいて、ここへ運び込んで、持ち前の悪徳形成外科の技術と最先端の細胞技術を極限まで高めた手法でまるっきり本物の色白おめめぱっちり乳バビーンな最高のねえちゃんに仕立てる技術ときたら、すげえ、たまげた、まいりましたときたもんよ。そういう姉ちゃんたちの素晴らしい能力を引き出して何をしているかといえば、セックス人形にして政治家や有力者を誑しこんでめろんめろんにして操ったあげくこの国をめためたにしようとしてるだろう。てめえの個人的な恨みでどんだけの人間がひでえめにあうか考えてみろこのタコ。
てめえは中国国内の不満分子に金を渡して、大使館に石は投げさせるわ、観光客は襲うわ、売春は斡旋するわ、宇宙空間で衛星ぶっ壊して無茶はするわでこの国を傍若無人な国家にしたてあげ、国際的な孤立に導き、国を内部からがたがたにしやがった。中国五輪までめためたにした張本人はおまえだ、この蛆虫野郎。
しまいにゃ政府高官連中とおめえが送り込んだねえちゃんたちとのあられもないご乱交画像をネットでばら撒いて民衆に暴動を起こさせ、政府を転覆した挙句てめえが中国の支配者になろうって腹づもりだろうが。いいや違いますとは言わせねえぜ。こちとらぜんぶねたはあがってるんだ。
もう一度言うがそれでどんだけの人間がくたばるのか考えたことがあんのかこのインキンいぼ痔の腰痛持ちめ。そのだれもが誰かの子供や孫や父や母じいちゃんばあちゃんなんだぜ。てめえのような糞虫野郎を天が許すか!」と息もつかせず小島は一気に啖呵で押し切った。
田中教授は絶句していた。吉田という女性も目を見開いてかたまっていた。
朱は急にふてぶてしい表情になり、間を置いて言った。
「ふふふふ、おもしろいお話ですね」
「笑っていられるのもいまのうちだ。さっきのようにこの俺が貴様の陣に打たれた一手だとしたら、もう落ち着いていられまい。」
朱の脳裏に先ほど味わった衝撃的な屈辱が甦ってきた「う・・・あなた一人に何が出来るというのか」
ちょうどそのとき部屋の電気が消え、遠くで連鎖的な爆発音が聞こえてきた。つづいて、外から声高な呼び交わす声が聞こえてきた。やにわに屈強な男が一人戸口に現れると朱に駆け寄り耳打ちしている。
「桂が動力源を遮断したのだ。おまえらの気をそらす爆発をしかけたあとで、まもなく弾薬庫も吹っ飛ぶ!」
そのとき大きなゆれと遅れて大音響が響き渡った。連続的な大爆発に館が揺さぶられ続けた。
「もうここの座標と多くの情報は桂の衛星通信で通報されている。東シナ海海上に配置したイージス艦『あたご』からまもなくトマホークがこちらにむけて打ち出されるだろう」
「そんなことをすれば小島さんあなたも無事ではすまない。それに中国政府がだまっていないでしょう」
「中国の軍事力は、お偉いあんたが、がたがたに弱体化してくださったじゃねえか。もはや探知能力も防空能力もきわめて低い状態だ。てえしたもんだよまったく。おかげでトマホークでPENを送り込むのはお茶のこさいさいだぜ」
「!」朱は目を瞠り顔をこわばらせた。
「PENの怖さを知ってるな、てめえ。わかってんならとっとと投降しろ」
朱は肩を落とした。
「・・・あなたには薬やあの学習カプセルが効かなかったらしいが、なぜか教えてもらえませんか」
「あの薬は構造や作用がとっくの昔に我々のチームで解明されていたのだ。放射光X線回折や中性子回折でなめるように調べつくして、原子の1つ1つまできっちりどこについてますかってぐらい構造が決定されている。睡眠学習とセットで潜在的にあんたの言うことをよく聞くようになるというあの薬が作用する神経細胞の受容体も特定されている。その受容体をブロックする無害な薬をあんたらの薬の構造にならって俺たちは合成した。俺はそのブロック薬剤を分泌するインプラントを起動して薬が作用するのを防いでいるのよ。どうだまいったかこのトウヘンボク。しかしちょっとだけ副作用で言葉遣いが悪くなっちまったようだ。だが、てめえの頭のよくなる薬はいいできだ。よく効いたぜ。おかげで本因坊秀策の棋譜を全部思い出しちまったぜ」
「そうでしたか・・・」とうとう朱はがっくりとうなだれてしまった。
「ところでそこにいる別嬪の吉田のねえちゃんはあんたの初めて子供を身篭ってるぜ。いい歳してこのドスケベめ。どうするんだてめえ」
はっとして朱氏は顔を上げ、女をみた。女は瞳に涙をうかべていた。その瞳に真実をみた朱氏が少しだけ、そして初めて人間らしい喜びをかすかにほほにのぼらせていた。
つづく
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3月3日(土)Sl. Orpettii開花
ソフロレリア オルペッティが開花した(今月5、今年35、新規13)。この間咲いたばっかりではあるが、1ヶ月経過して別バルブからの開花なのでカウントする。今回は前回よりもしっかりした開花になりそうである。濃い赤色のカトレアである。
Slc.
Rocket Burst ‘Deep Enamel’ HCC/AOSから3バルブ9個のつぼみが上がってきている。
なんだかよく把握していないカトレアから2つつぼみが出てきた。
カトレア スキンネリのシースから2つつぼみが出てきた。
謎のエンシクリアらしい蘭エンシクリア 手柄山(わからないため不審に思い購入したという経緯がある)から花芽が出てきた。
パフィオペディラム・グラトリクシアヌムは花が大きい。たいそう立派なパフィオだ。そのスリッパ部分を見て思ったのだが、これは風呂掃除のときに履く、プラスチック製の靴そっくりなのである。まあどうでもいいのですが。
Paph. primulinumはきりりと咲いている。原種パフィオが咲くとなんだかランをやっているなあ、という気がしてくる。
カトレア・シュロデレーは本日終了である。見事なカトレアだった。毎年楽しみになるカトレアである。
「蘇る蘭」
19.
洞窟の内部に入ると照明が自動点灯した。照明の近くに監視カメラとも武器ともつかないものが配置されている。どういう認証システムがあるのかはしらないがセキュリティは万全のようだ。
洞窟は鍾乳石が多く、美しい場所だったが、ところどころ破壊されたあとがあった。
「この洞窟はかつて蘭王国がこの地にあったころ神聖な場所として大切にされていたのですが、後漢の軍が攻め込んできたときに破壊され、その跡が痛々しく残っている場所でもあります」
「なぜ洞窟を破壊したのですか」
「蘭王が多量の金を献上したため、欲に駆られた後漢の皇帝により攻め込まれ、徹底的な捜索がなされたのです。確かにこの奥にいくばくかの金があったそうです。後漢の武将はそれに飽き足らず王国の民を皆殺しにしようとし、皇帝を怒らせたあの赤い花のパフィオを根絶やしにしようとさえしました。人々の多くは洞窟に篭り、抗戦しましたが長期にわたり攻め続けられ、多くが王国を逃げ出すか地底湖に身を投げたのです」
「そうでしたか」
かなり歩いてたどり着いた洞窟の最奥には、人工のトンネルがあった。教授による認証ののちに二人は中に入った。明るく近代的な研究のための施設で、多くの部屋があり、相当人数の人間が働いていた。どうも女性が多いように思えた。大学や企業の研究所顔負けの設備が並んでいる。電子顕微鏡や、各種のバイオ機材、クリーンルームなど、いったいどうやってこのようなところまで運び込んだのであろうか。小島は細胞を作り変える最先端の装置のいくつかを見ることが出来た。
「ここでは、人間をよりよい方向に改造するための研究開発を行っているのです」
「細胞強化・修正ということですか」
「そのとおりです。病気の原因になる遺伝子を改変することはもちろんですが、種々よくない遺伝子を持っていたとしても、それをカバーするための細胞技術を培ってきました。先ほどの女性を覚えていますか」
「ええ」
「なかなか素敵な人だったでしょう。我々は吉田さんと呼んでいます。けれどあの方は日本でやくざに薬漬けにされとことん使い尽くされたあとで東京湾に沈められるか、外国に売られるかという運命だったのです。それを朱氏の組織が助けだし、ここにつれてこられたときは、ほとんど廃人同様だったそうです。朱氏が開発してきた細胞技術は、成長細胞を取り出し、ミトコンドリアなど細胞器官を優れたものと交換したり、いくつかの細胞器官の遺伝子を改変したりして細胞のチェーンナップを図ることで人間そのものを大きく変えることが出来るということを明らかにしてきました。朱氏の技術で彼女は甦ったのです。そしてまた朱氏の組織が開発した知能を高める薬と優れた教育プログラムにより、かつてのどん底まで落ちた人間から現在の聡明で有能な人材へと生まれ変わったのです。あそこにカプセルが並んでいるでしょう」
女性が横たわるカプセルのようなものが多く並んでいるのが見えた。
「あれは日本で救い出された女性達です。麻薬で侵された体を癒し、強化された細胞を骨髄や成長組織に移植されるとともに、あの中で、学習能力を飛躍的に高める薬を投与し、学習プログラムにしたがって高度な知識を得ているのです」
「・・・・」
「我々は人類を変えることで人類を救うことが出来ると考えています」
「どういうことでしょうか」
「ご存知のように現在地球規模の気候の悪化が進行しています。地球温暖化によりすでにバングラディシュやベネチア、オランダは水没し、東京をはじめ多くの海浜の大都市が波に洗われる状況になっています。一方で大陸内陸部では猛烈な勢いで砂漠化が進行中です。これらの原因である、化石燃料の過度の消費はやまず、資源の枯渇と環境の悪化に拍車をかけています。これらはなにが根本原因なのでしょうか」
「人間ですか」
「そのとおりです。我々は種々弱い面をもっています。欲望に弱く、怠惰で、小心で、猜疑心に満ちた存在です。遠くの人を助けるよりまず自分の充足を図りたいと思うのが人間のありようです。そして残念ながら枢要な地位にある人々もまたしかりなのです。このままでは我々は資源を使い果たし、わずかな資源を奪い合って戦い、共倒れするほかありません。我々人間こそが我々にとってもっとも危険な存在なのです。もはや一刻の猶予も許されず直ちに有効な手を打たなければならないところまで来てしまいました。ことにここ中国ではこの20年間の急激な経済成長に伴って国土の荒廃が極端に進行してしまいました。中国は人類が破滅に向かって突っ走る牽引機関車のような有様になってしまったのです。これを食い止める必要があるのです」
「急成長中であり政情不安定な国家が地球の安定を脅かしていることは事実でしょう。しかし教授。我々日本とアメリカとドイツのわずか5億人で70億人の住む世界の富の50%を抱え込んでしまっているではありませんか。彼らが我々と同等に豊かになりたいと思うことを妨げるのは傲慢というものではありませんか。それに今日までの環境破壊をもたらした責任の大半は先に先進国になった日本も含めた国々が使った石油によるものではありませんか。彼らを人類の脅威とみなすのは中国が外交的に孤立している今日では大変危険なことです」
「おっしゃるとおりです。しかし先進国の多くは自身の非を悟り今日環境保全に力を尽くそうとしているのです。あのアメリカですらハリケーンと竜巻で多くの大都市が徹底的に破壊されたためとはいえ、自らの非を悟り環境の保全に注力しているのです。このような世界的な流れの中にあって、中国の有様はそれに逆行するものです。そしてそれらは政治の貧困にあると我々は考えているのです」
「そうですか」
「そこで我々は、人間の強化に乗り出したのです。意志が強く、聡明で、我慢強く、人格の安定した、欲望を抑え、他者のために尽くすことのできる人間です。先ほども述べた、細胞強化と教育プログラムによりそれを成し遂げることが出来るのです」
「しかし現在指導的地位にある人々にそのような改造を施すことは困難ではありませんか」
「その通りです。そのためにここにいる吉田さんのような方々が必要なのです。お聞き及びでしょうが、日本には彼女たちのような不幸な目に遭った女性がたくさんいます。彼女たちに生きる希望を与え、明日の未来のために働いてもらうために我々の活動があるのです。ここを巣立っていった彼女たちは、しかるべき筋を通じて枢要な人物の側に影のブレインとして送りこまれています。やがて彼女たちが枢要な人物を感化し、正しい方向に導き、人類を我々の目指す方向に導いてくれるよう朱氏の組織は活動しており、私も微力ながら助力を注いでいるというわけなのです」
「・・・そうですか。よくわかりました。ところで、あの化学プラントのようなものは何ですか」
奥のほうに複雑なパイプが縦横に伸び、加圧器や種々のガスの制御装置、圧力容器、分離器などが見える。
「特殊な医薬品の合成装置だとうかがっています。私は化学担当ではないのでよくわからないのですよ」
「そうですか」小島はその付近に覚えのある物質のにおいを嗅ぎ取っていた。
つづく
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3月2日(金)Asctm.
ampullaceum ‘II’及びSlc. Princess Pelu ‘Love’開花
アスコセントルム・アンプラケウムおよびソフロレリオカトレア・プリンセスペルー
‘ラブ’が開花した(今月3-4、今年34、新規12-13)。どちらも同じ日2006年5月20日にどちらも100円で購入した見切り株であった。この同日購入100円株は6種あり、苔玉胡蝶蘭やアスコセントラム・ミニアタムおよびすでにイオネッティア・チェリーダンスが開花している。咲く率8割のすごい買い物だった。
一方、残念なことにアングレクム レオニスから肉厚の元気そうな葉がぼろぼろ落ちてくるのであった。根からなにか変なものでも吸い上げたのか、枯れてしまっている。結構大きくなっていただけに惜しい。鉢からひっこぬいてバスケットに入れて水をかけている。
例によって怪文章の掲載のため一日早く日誌をおこしている。昨日は、新規開花2件があり、ますます蘭の棚はにぎやかだ。
「蘇る蘭」
18.
田中教授は部屋の妙な雰囲気に困惑していた。朱氏の様子がおかしい。
「朱さん、どうかなさったんですか」
「ええ、小島さんが大変に強くて大層負けてしまいました」と朱氏は声をつまらせながらやっとの思いで言った。
「なんですって」、碁盤が目に入ったので対局していたのはわかったが、田中教授はあからさまに驚いてしまった。教授は以前朱氏と対局してそのあまりの強さに感服していたのだ。プライドが高く碁が自慢の田中教授は打ちのめされた苦い思い出を回想するとともに、自分よりプライドが高そうな朱氏が何を感じているか考えて身震いした。盤面を見るまい、とおもっても目が吸い寄せられてゆく、その視線に強い羞恥を感じて朱氏は身が縮む思いを味わった。
(どういう流れなのかさっぱりわからない。あの中央の白の飛び石はなんなのだろう。いや、これをみていてはいけない。話題を変えたほうがよさそうだ)
「学生の伊藤君の意識が戻ったので報告とお礼に参ったのですよ」
「そうですか、それはよかった」と朱氏はほっとしたように言った。
「もう一人の方はまだ意識がもどらないようですけどね」
「そうですか」と小島。
「どうだろう、田中先生。折角来てくださった小島さんに我々の研究を見ていただいては」と朱氏は言った。
「そうですね。では小島さんいかがですか」
「みせていただきましょう」
二人は連れだって部屋を出て行った。
「小島さん、驚かれたでしょう」と歩きながら田中教授が言った。
「ええ、ちょっとめんくらっています」
二人は山の方に向かう渡り通路を歩き始めた。板の間の渡り廊下の上を屋根が渡してある。清流に沿うように通路があり、時折流れをまたぐ橋がかかっている。暗いような原生林の林床にはパフィオがびっしりと生えているところがあった。しっとりと落ち着いて、絵のように美しい場所だ。
「ベラチュラムですね。あそこにはコンカラーの群落がみえます。ここはパフィオの宝庫ですね」と小島は辺りを見回していた。
「多くは植えたものですが、自生していたものもかなりあります。私のようなパフィオ好きには堪えられないのですよ。ここへ初めてきたときは桃源郷ではないかと思いました。朱氏が仙人に見えましたよ」うれしそうに田中教授は言った。
涼しい風が流れてきた。清流の先に石灰岩の絶壁が現れた。予想通り洞窟の入り口が現れた。この入り口の周辺にもディレナティ、マリポンセ、アルメニアクム、バルバツム、チャールズワーシーなどこの土地に適したパフィオが植えられていた。適度な日光と適度な湿度があるパフィオの栽培には理想的な環境だろう。
「さきほどの素晴らしいパフィオは教授が蘇えらせたのですか」
「ええ、そうです。最初に咲かせたのは朱氏ですが。伝説のパフィオは実在したんですよ。本当にすばらしいパフィオでしょう。あの花の存在が知れ渡れば世界中がおどろくことでしょう。我々が目指す平和な世界にふさわしい花です」
「・・・・」
「我々の研究はこの洞窟の奥です。すべてお見せしましょう」
通路はそのまま洞窟の内部に続いていた。二人は洞窟の中に入っていった。
つづく
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3月1日(木)Den.
aggregatum及びPaph. gratrixianum開花
Den.
aggregatum及びPaph. gratrixianumが開花した(今月1-2、今年32、新規10-11)。前者はよくつぼみがしける。今回も結構な数がしけてやっと開花にこぎつけたのであった。
1-2月蘭は好調だったようで、意識はしていなかったが2日に1鉢というペースで咲いてくれている。中でもC.
schroederae 'Carlos Arango×Popayan'は1ヶ月きりりと咲ききった。花の姿はよく、香りもすばらしいのにはなもちがよいというカトレアの鑑のような蘭である。今見てもおおすごい、というきりりとした咲きっぷりだ。原種カトレアとはかくもすごいものかと思う。
交配種は花の持ちが今ひとつのような気がするのだが気のせいだろうか。なにか「足の速い」種が混ざっているらしい。歴代交配種の大輪をみるに1ないし2週間というところである。もともと2週間と何かで読んでいた。だが、原種カトレアは2ないし1ヶ月、ラビアタも2週間は超えていた。マキシマも結構もっていたような。交配種カトレアには私が体得していない何らかの技が必要とおもえる。なんのかんので原種カトレアの比率が増加してきている。
大量の蘭が競りに出る某蘭友会で交配種カトレアは売れなくなってきているという。「大輪のカトレア3鉢千円!」という暴落をみてショックを受けた覚えがある。かつての憧れはないなあ、というのが正直なところである。
交配種がもはや好きではないというわけではなく、大輪でないものになにやら素晴らしいものが結構あるなあ、という感想もある。昨年育てていたBc. Maikai ‘Mayumi’はきっちり2ヶ月見事に咲ききった。あれはすばらしかった。ものすごく長い期間つぎつぎと咲いてくれるLctna. Peggy San ‘Tomomi’ という優れた品種もあった。
といいつつ交配種カトレアのつぼみは3つ、原種1つというカトレアラッシュがありそうだ。パフィオにデンドロと3月もにぎやかに咲いてくれそうである。
「蘇る蘭」
17.
二人は、終始無言で手談をつづけた。互いにしっかりした定石で序盤を打ち合い、そろそろ攻めにはいろうという頃合だった。男が考えて手を止めている間小島はずっとパフィオを見ていた。女はテーブルの側に座り静かに盤面を見ていた。
男は思った。
(苦労して一代で財を成してここまでのし上がった私は常に勝って来た。日本でもそうだった。私は碁でさえ負けたことはない。だれもが私の人格になびき、私を慕い、私に従ってきたのだ。私は情けがあり、敵であろうと味方に付けてきた。この男も私のために働いてくれることだろう。
若くみえるくせになかなかどうしてしっかりとした打ち方をする。実に楽しい。だが、一手一手に厳しさが足りないようだ。すこし強くなってもらおうとしよう)
「・・・・」
(驚いているな。だが、苦しまぎれに変なところに打ってきたのは残念だ。あれは明らかな失着だった。ここからたたみかけてやろう。
ほう、隅を守るか。ならばやんわりと囲ってやろう。だが地合には大差がついているのだ。
まだ手厚く打っているな。中央に出ようとしてももう手遅れだぞ。この一手でしびれてもらおうか)
「・・・・」
男の陣は小島を周辺に追いやっているように見えた。男はおのれのみごとな打ちまわしに勝利を確信して笑みがこぼれる。久しぶりに手ごたえのある相手に当たって楽しかったよ、という挨拶のつもりだったのだろう。小島は顔をあげ、視線をパフィオに向けるとかすかに微笑んだ。そして盤面の中央付近に石を置いた。
男の顔に慍色が浮かんだ(ばかな、また苦しまぎれにそんなところに打ってきたか。勝負を投げるとは見損なったぞ。せっかくの楽しみを台無しにされた気分だ)。男は小島に視線をめぐらせた。凛とした視線が男の目を捉えた。
(?・・・・。なんだあの目は。手があるのか。私にあんな手抜きをしておいて)。男は盤面をもう一度仔細に見つめた。
「ばっ、ばかな・・・」
側で静かに見ていた女は目を瞠った。それは女が初めてみる所長とよぶ男の狼狽だった。男の顔が見る見る上気して、耳たぶが赤く染まっていた。
(さっきの妙な手と、こんどの中央の一手でやつが中央で活きてしまう。なんという手だ、私の陣の外側の三箇所から同時に攻め込んできて、どうあっても活きてしまう。
このままでは模様をあらされ散々なことになってしまう。だが、まだ負けはせんぞ。この一手で貴様の本拠地を脅かす)
「・・・・」
(なんということだ、軽くかわされたばかりか、逆に攻められている)
「・・・・」
(ああ、連絡を絶たれてしまった。右辺はもう活きがない)
男ががっくりと手をついて投了を宣言する「ありません」を言う直前に、部屋の外から訪いの声がかかった。女が扉を開けると男が立っていた。
「朱さん、こんにちは。あれれ、小島さんではありませんか。もうお体はよろしいんですか。なんにせよ無事でよかったです」
「田中教授。お元気そうで何よりです」
つづく
総集編はこちら。
このシリーズちと漢字が多いような。ルビを振るのは面倒である。「投了」(とうりょう)碁で負けを宣言すること。「失着」(しっちゃく)失敗した手、「慍色」(うんしょく)むっとした表情、「瞠った」(みはった)。
総集編はA4で60pに達した。
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