蘭馬鹿日誌2002年10月および更新記録

ランのよしなしごとをつづる。下に行くほど昔 

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2002年

10月26日(土)

家族サービスで海遊館にいってきた。帰り道に大和農園が立ちふさがっているわけですよ。家族を和菓子屋に残して引き寄せられるようにちょっと見に行ってみた。もうこれ以上棚にランは入らん、という気分だったので欲望は低下しており、心安らかに閉店間際の展示室をみてまわっていたんですね。一回りしてみて、魅力的なランはたくさんあったのだけれど、今日は手ぶらで引き上げようと思っていたところに店員が一言。

「温室もご覧になりませんか?」

温室へのお誘い、さては顔を覚えられてしまっているか、常連と認識されているためだろうか。

温室の魅力にはあらがえず案内されるままに魅惑の殿堂に足を踏み入れた。温室の前に小部屋があり、そこには「大和農園洋ラン部ファンサイト」で写真を見たことがある大和農園の社長がおられた。この蘭店のオーナーともなれば、蘭好きには雲の上の人。なにしろ温室を見渡しても私の100倍どころではない膨大なランが並んでいる。これ全部持っているのね、という人だ。しかもそれで食っている。ははあっ、と恐れ入ってしまうわけです。

温室には、あわれこの道にはまった若いだんなが奥さんを小部屋に残してランを追いかけていた。私は夕暮れの温室を「どれも高そう」と落ち着かない気分でみてまわり、本でしか見たことがないような珍しいランや、美しいランをさっと眺めてまわっていた。我が家でつぼみが7つでているバンダ・サンサイブルーがあり、どれも花芽がでていた。ものすごいランの数で、カメラ持参でたっぷり時間があれば3時間は過ごせそうな素晴らしい温室で、花がなくても楽しめる私には蘭展に匹敵する内容かもしれない。そこへかの社長のご登場である。「ご尊顔を拝し恐悦至極に存じ奉り」状態になり、なにごとか話しかけられて、「いや、特には。素晴らしい温室ですね、じゃっ」とは言えず、この1年探していた「エピデンドラム・マリエはありますか」と聞いてしまった。それが広い温室のすみから20秒で出てきたのには驚く。

このランはかみさんの指名手配であった。緑色と白のエピデンドラムとしては大きな花が咲く。かつてはエンシクリア属で、エピデンドラム属にはいり、さらに最近Euchile mariaeとなった。この属はcitrinaとともに2種だけがメキシコ特産で、mariaeは丸いバルブの上に20cmの花茎がのびて晩春から夏にかけて7.5cm径の花を4ないし5個つける。冬の間よく乾燥させて育てるらしい。

苔むした2.5号鉢が並んでいる。高そうだなあ、まあこの機会だからと手に取り値段を聞いてぎょっとした。

2000円だった。以前わざわざ須和田農園まで出かけたとき、小さなバルボフィラムの鉢の値段を聞いて5000円といわれ、這々の態で逃げ帰ってきた時のことを思い出した。300円に慣れきった男にはつらい値段だった。しかしである。この日は家族サービスでジンベイザメのぬいぐるみ3000円(2週間にわたり幼稚園児にあの手この手で要求されたため)を購入していたので散財ついでとばかりに意を決した。2000円は確かに相場なのである。有名品種にもかかわらず、かなり探したが見当たらなかった。増えにくい種類かもしれない。

2000円を超えるランはこれで3鉢目になる。1鉢目は、まだ1鉢しかもっていなかったころ東京ドームで台湾の蘭屋から買ったもので、1ヶ月後に新芽がくさって取れてしまった。この鉢はバックバルブから小さなバルブを出させてリカバーし、4年かけて来年の開花をめざしている。2鉢目は花が三日しか持たないスタンホペアで、我が家最大であり大きすぎて難渋している。このように2000円以上はげんが悪い。このマリエちゃんはすでに鉢から斜めになってはみ出している。このバルブが来年花をつけるわけで、粗略にはできない。家に帰るや植え替えをしていた。ついでにこれもはみ出していたEpc.ElHatilloも植え替えた。根がよく動いているから大丈夫、という判断である。素人の思い込みかもしれない。

植え替えでバックバルブの根元が黒くなっているものがとれた。ただ捨てるのも芸がないので切ってみた。内部に筋だのたまねぎのような同心円といった構造らしいものがない。ただ均一な組織がある。ジャガイモやサツマイモだってまだ模様みたいなものがあるが、まったく均一な組織に見えた。汁がぬるぬるしてねばりがあった。

家の蘭を眺めると、胡蝶蘭から花芽がでたものが5鉢になった。花芽のついた鉢の合計は17鉢になった。ふとあの温室を思い出す。知らない人にはただの草がつまった掘っ立て小屋かもしれないが、私にとっては世界とも思える広さを感じた。一歩進むごとにそこにあるまでの複雑な経緯のすべてを情報としてもつ1鉢1鉢が見えてくる。そう、1鉢ごとに、これこれ属のこれこれの種で、名前の語源、花粉塊のかたち、花の大きさ、花茎の長さ、葉の長さ、幅などmm単位の情報、育て方はこれこれ、コンポストはこれ、肥料はこれ、温度は何度、水のやり方、誰がいついつどこで採取し、誰がいつこれこれと交配したり、いついつだれそれにより優れた個体が見出されたり、これこれの賞を受賞したり、という来歴のすべてがトレースできる。まったくあそこはワールドだった。

10月17日(木)

夜に鉢を取り込んでいたときトレイでデンファレの花芽をしばいてしまい、花芽が取れてしまった。花芽3本立ちの巨大デンファレで、多量の花が咲くのを楽しみにしていたので残念である。鉢の出し入れには気をつけたい。

デンファレは5種類開花して1ヶ月経ったが本番はまだまだこれからで、来年の3月頃までいろいろと咲いているだろう。温度と湿度さえ保てば真冬でも綺麗に咲いてくれる。

名札なしの見切り品を買ってきてリカステだと思っていたものがよくよく見るとどうもビフレナリアそっくりという鉢がある。葉、バルブなどの特徴が酷似している。このほど根元から芽が出てきた。花芽か葉芽かわからないが、花が咲けばさすがにわかるので花芽を期待している。

10月16日(水)

このところ胡蝶蘭類、バルボフィラム、パフィオ以外は日中野外で直射日光に当て、夜にデンドロ以外は取り込んでいる。涼しいと気持ちがいいのかどの株も活発に活動している。

10月12日(土)

知り合いに4鉢ランをもらってもらった(Den.’倉敷開花株1/3株、Onc.「旭」1/3株、Dor. pulcherrima(色は薄桃色)1/2株、Den. Yukidaruma ‘King’ AM/AOS.JOS。もらってもらえればというランを集めてみるとトレイ2つ分、20鉢にもなる。どれも株分けで増えたものだ。株分けは増やしたいと思ってしているのではなく、買ってきたときに寄せ植えを1株ずつ植えつけたものや、高芽が出たり鉢からあふれるような株に成長したもの、バックバルブから芽がでたりで増えたものだ。増えずに末永く息災でいてくれれば一番ありがたい。

この直後、今年も開花しなかったブラッシア4号鉢の植え付けがどうもおかしいと思って植え替えてみた。ミズゴケが内部ですかすかだった。自分では腕が上がっていると思っているので、昨年の植え方が許せないのである。株も込み合っていたので分けた。リード+3バルブ程度と考えて株をわけると3株になってしまった。3号鉢に硬めに植えつけた。古いバルブ3つが連なったものがのこったが、これは心を鬼にして捨てた。バルブ伏せにすれば芽が出るかもしれない。かわいそう、などと思ってしまうのである。相手は草ではないか。野菜には引っこ抜いたり葉をむしったり、ほりあげたりと悪行の限りをつくしているのに、古い茎を捨てたからといって何ほどのことがあろうか。しかしながら抵抗を感じる。実は、今年分けた株からまるで新しいバルブが出ない鉢があったのである。根しかでなかった。こういう場所ふさぎは始末するしかないのだ。しかし、よくよく手をつくせば3年後ぐらいには開花するかもしれない。何しろ2000円出して買ったポチナラの苗の新芽がくさり、バックバルブ1本から3年で3つのバルブを出して来年は開花と思われるところまで持ち直している鉢がある。しかし株分けしてよく咲く本家のほかに2鉢もある。必要な鉢ではないし、人にあげられるような鉢でもない。そろそろ吹っ切らなければならないのである。不必要な部分を切り取れるようになれば、必要な部分に注力できるからだ。

話は変わるが、鉢を家に取り込むと、緑色にずるずるとしたコケがべっとりと鉢にまとわりついていてそのきちゃならしさにおぞけをふるう人もいるのではないだろうか。ラン数寄はこの点で家族の理解を得られず肩身の狭い思いをしている場合もあるだろう。家の中にコケでずるずるしたものを入れるのである。きれい好きのかみさんに嫌がられないはずはない。それでこの鉢を取り込む季節に鉢を磨くしんどい作業に向き合うことになる。聞いた話では「出張先のホテルの歯ブラシを持って帰り、これで鉢をこする」という。指でこすって落とそうとしたことはあるが結構な手間だ。いまや100鉢以上あるのだ。大変な労力になるだろう。

朗報である。手軽でこの作業が面白いほどはかどり、楽しくなる方法を編み出したのだ。耐水研磨紙を使うのである。紙やすりの黒いやつだ。100円ショップで5枚組で売られている。120番(荒さを表す数字。数字が大きいほど単位面積あたりの研磨剤の粒が多く、細かい)がよかった。5cm角の一枚で30鉢は磨いた。洗面所などでずるずる鉢の表面に水を流しながらこの研磨紙でこすると面白いほどコケが取れる。研磨紙は鉢の表面までこそぎ落としてくれる。これで目詰まりした素焼きの微細な孔を開く効果があると期待している。通気性の向上は根の健康のために必要なのだ。冬場は鉢の乾きのよさが根腐れを防ぐだろう。この作業で鉢の表面はぐっと手触りがよくなるという効果もある。蘭屋さんが売る鉢などもけっこうずるずるだが、これを売る前に磨けば売り上げも上がるのではなかろうかと思う。古本屋では手垢で汚れた部分に紙やすりをかけている。商品に磨きをかければ見た目がよくなり、女性客も増えるのではないだろうか。「花は好きだけれど、鉢の中にどんな虫がいるかわからないので、鉢を見ないようにして水をやっている」という女性もいるのだ。虫は、かならずいる。鉢の中でいろいろお仕事をしているのではないだろうか。だが、そいう作業者が表に出てくる必要はない。表面はきれいな鉢にして、知らぬが仏とだましてあげるのが思いやりというものではないだろうか。

10月10日(木)

ランの活動が活発化している。特に根の動きが著しく、多くのランできれいな色の根が鉢から出てきている。結構寒くなってきているのだけれど、今時分の気候がランにとって一番適しているのかもしれない。

花芽も実に多く出てきている。バンダ、デンファレ6株、カトレア4株、レリオカトニア、胡蝶蘭、シンビジウム、ゴメサ、オンシジウムなど。他にも花芽を出すと思われるものが多くあり、夏の間妙に静かだったランが大騒ぎをしているように感じられる。夜な夜な仕事から帰ると鉢を点検して2時間ほど変化を楽しんでいる。つややかによく太ったバルブや葉、葉芽、花芽、根などを眺めるのである。ランの楽しみの多くはこんなところにあるのではないだろうか。

10月3日(木)

カトレアは化ける。

私の感想である。よく日光に当て、かぜを当て、適切な時期に肥料をやり、水もたっぷりやり、いろいろ手をつくしてきた。これにこたえて思わぬ巨大なバルブが出る株があったり、年1回の開花だと思っていた株が3回目のつぼみを出し、1月につぼみを落とした株は、今年4回目のつぼみを出してきた。この株は、開花日数を数えると100日を超える可能性がある。株が分岐してバルブが3つ出ており、それぞれつぼみを出したとすればまたまた開花日数はのびる。この調子でどんどん大株にすると毎月開花、いや、究極的には一年中花がついている鉢になる可能性がある。そういう鉢の話は聞かないのだけれど、ランの世界には必ずそういうすごい鉢があるのではないかと思う。

不思議なのは、これほど美しく、香りのよい花をほいほいつける植物をなぜ多くの人が知らないのか、ということである。よく世話をすれば、年4回咲くという記述は、英文で一度みただけである。この記述は園芸日めくりカレンダーのポチナラについての記述だった。何度も読み返したほど衝撃的な記述だった。そんなすごい花があるのか、とあこがれ、そういう株が欲しいとおもいつつ世話をしてきたのである。その望みが達成されつつある。

世話が簡単で(1000円以下と安く)年4回咲く美しいカトレアを花好きが知ったら放っておかないとおもうのだ。ラン業界の皆様はそういう株をつくって、よく宣伝をして、出来ればマニュアルをつけて売れば儲かると思うのだけれどいかがだろうか。ランにマニュアルをつける、というのはいいと思うのだけれどねえ。

 

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